上 下
4 / 94
第一章 ヘブンズ・ゲート

03 堕天使

しおりを挟む
 ☆ Virtual ☆

ログアウトも出来ない。
緑川も見つからない。
涼にも合流できない。
もう詰んでないか? これ。

 途方に暮れベンチに座り込んでる銀次郎の頭の上にAIナビのエンジェルが突然映し出された。
「皆さーん! ここで突然ですが、管理者グリーン様からの有難いお言葉がありまーす!  エヘン、わたしが代わって読まさせていただきまーす」
 緊張感のない間延びした口調のエンジェルが急に真面目に話し出す。
「ヘブンズゲートを現在ご利用のプレイヤーの皆さんへ、日本国内でのご利用の千人の皆様、皆様は現在『グリーンホライズン計画』の人質となっています。政府が我々の要求を飲む限り、皆様の安全は確保されておりますので、今しばらくはヘブンズゲートをお楽しみください。管理者グリーン」
 真面目に管理者の言葉を代読したエンジェルはまた、コロリと口調を戻して楽し気に叫んだ。
「と言うことで、人質の皆さん! もうしばらくはエンジョイ! ヘブンズゲート!」

 何と言うか……ここまで重たい内容を軽いノリで言われると現実味がないと言うか、周りの連中も理解が追いついていないという感じのようだ。

 とんだ「堕天使」だな……銀次郎は一人つぶやいた。

 ◇ Real world ◇

 涼は課長に報告を入れたが、会社側ではセキュリティが強くてロック解除はなかなか進んでいない様だ。どうやら通常仕様に加えて新たなセキュリティが追加されているようで、担当の人間も頭を抱えているらしい。

 現在、涼たちは中央道を仁の運転するミニパトに乗って、緑川の別れた奥さんの住む日野万願寺のマンションに向かっている。涼は別方向からのアプローチを試みていたのだ。
「今日はどうしてここに? なぜ二人で?」
 赤羽は道すがら二人に素朴な疑問をぶつけてみた。
「そりゃおめぇ。夜中にコソコソやってきて、今朝も早くから親父さんを連れ出すんじゃ、恵も心配になって、俺に相談に来たんだよ」
(なるほど……すいません、自分が原因でした。涼は何も言い返す言葉が無かった)
 恵は高校三年生、仁は交通総務課で小学校を回ってるらしい。 高校生ミニパト乗ってていいのか? 元鬼教官だぞ、仁さんは! 小学生泣き出さないか? 楽しそうな仁の説明に涼は曖昧な返事をした。
 
 ☆ Virtual ☆ 

 堕天使のめちゃくちゃな発言に対してフリーズしかかっていた連中に銀次郎は激を飛ばす。
「お前ら! このままやられっぱなしでいいのか? ゲーマーだろう! 立てよコラ、情けねえ奴らだな○○ついてるんだろう?」
 強い口調で発破をかけ、強引に再起動させ、リーダーらしき連中を集めた。ゲームは全くわからないが対策を練って人を配置する、組へのガサ入れと大して変わりゃしない。銀次郎はまだまだ俺はここでやれると感じた。

 リーダー連中はかなり情報を把握していた。横のつながりってヤツかキャッスル内ではモンスターがいて、どうやらコイツらにやられた連中は戻って来てないようだ。死んだのかリアルに戻ったのかこればっかりはわからない、考えても仕方ないことだ切り替える。
 そこで黒岩はこいつらにこのゲームのキーパーソンになる緑川を探してもらうことにした。ローラー作戦だ! やっぱりデカは足で稼がないと……銀次郎自身も動き出す。聞き込み開始だ!

 ◇ Real world ◇

 車で移動中の間に、涼は出来るタスクを可能な限りこなしていく。まず、所轄に連絡して二人の安否を確認するが、一週間前から連絡が取れず安否不明。先にマンションには向かってもらった。
 次に子供の小学校に連絡、担任の先生に話が聞けることになったので、自分たちはまず最初に小学校に向かうことにする。

「旧姓に戻って川村すみれ二十八歳、子供はヒナちゃん六歳だね。三年前に離婚しているからお父さんの顔なんか覚えてないんじゃない?」
 優秀な? アシスタントの恵はスマホでサクサクと検索してくれた。
「いないってことは連れ去られたってことじゃねえのか? 人質にとられて、緑川は犯行に及んだとかな」
 仁さんの人質説である。
「やばいから隠れてろーとか、逃げたとかさ! むしろ、もう会いに来ないでー! とか言われて自暴自棄とかは? 」
 恵は自暴自棄説である。
「でさぁ、でさぁ。涼さんはさぁ、どう推理するの?」
 楽しげに恵は涼に聞いてくる。

「俺は推理をしない! 現場を冷静に見るだけだ」

 そう言った涼を運転席の仁さんは横目で見てからニヤリと笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】都合のいい妻ですから

キムラましゅろう
恋愛
私の夫は魔術師だ。 夫はものぐさで魔術と魔術機械人形(オートマタ)以外はどうでもいいと、できることなら自分の代わりに呼吸をして自分の代わりに二本の足を交互に動かして歩いてほしいとまで思っている。 そんな夫が唯一足繁く通うもう一つの家。 夫名義のその家には美しい庭があり、美しい女性が住んでいた。 そして平凡な庭の一応は本宅であるらしいこの家には、都合のいい妻である私が住んでいる。 本宅と別宅を行き来する夫を世話するだけの毎日を送る私、マユラの物語。 ⚠️\_(・ω・`)ココ重要! イライラ必至のストーリーですが、作者は元サヤ主義です。 この旦那との元サヤハピエンなんてないわ〜( ・᷄ὢ・᷅)となる可能性が大ですので、無理だと思われた方は速やかにご退場を願います。 でも、世界はヒロシ。 元サヤハピエンを願う読者様も存在する事をご承知おきください。 その上でどうか言葉を選んで感想をお書きくださいませ。 (*・ω・)*_ _))ペコリン 小説家になろうにも時差投稿します。 基本、アルファポリスが先行投稿です。

友よ、お前は何故死んだのか?

河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」 幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。 だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。 それは洋壱の死の報せであった。 朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。 悲しみの最中、朝倉から提案をされる。 ──それは、捜査協力の要請。 ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。 ──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?

ファクト ~真実~

華ノ月
ミステリー
 主人公、水無月 奏(みなづき かなで)はひょんな事件から警察の特殊捜査官に任命される。  そして、同じ特殊捜査班である、透(とおる)、紅蓮(ぐれん)、槙(しん)、そして、室長の冴子(さえこ)と共に、事件の「真実」を暴き出す。  その事件がなぜ起こったのか?  本当の「悪」は誰なのか?  そして、その事件と別で最終章に繋がるある真実……。  こちらは全部で第七章で構成されています。第七章が最終章となりますので、どうぞ、最後までお読みいただけると嬉しいです!  よろしくお願いいたしますm(__)m

失踪した悪役令嬢の奇妙な置き土産

柚木崎 史乃
ミステリー
『探偵侯爵』の二つ名を持つギルフォードは、その優れた推理力で数々の難事件を解決してきた。 そんなギルフォードのもとに、従姉の伯爵令嬢・エルシーが失踪したという知らせが舞い込んでくる。 エルシーは、一度は婚約者に婚約を破棄されたものの、諸事情で呼び戻され復縁・結婚したという特殊な経歴を持つ女性だ。 そして、後日。彼女の夫から失踪事件についての調査依頼を受けたギルフォードは、邸の庭で謎の人形を複数発見する。 怪訝に思いつつも調査を進めた結果、ギルフォードはある『真相』にたどり着くが──。 悪役令嬢の従弟である若き侯爵ギルフォードが謎解きに奮闘する、ゴシックファンタジーミステリー。

朱の緊縛

女装きつね
ミステリー
 ミステリー小説大賞2位作品 〜トマトジュースを飲んだら女体化して、メカケとその姉にイジられるのだが嫌じゃないっ!〜  『怖いのなら私の血と淫水で貴方の記憶を呼び覚ましてあげる。千秋の昔から愛しているよ』――扉の向こうに行けば君が居た。「さあ、私達の愛を思い出して」と変わらぬ君の笑顔が大好きだった。  同僚に誘われ入ったBARから始まる神秘的本格ミステリー。群像劇、個性際立つ魅力的な女性達。現実か幻想か、時系列が前後する中で次第に結ばれていく必然に翻弄される主人公、そして全てが終わった時、また針が動き出す。たどり着いた主人公が耳にした言葉は。  アルファポリス第4回ホラー・ミステリー小説大賞900作品/2位作品

ファイブダラーズ~もう一つの楽園 囚われの少女と伝説の秘宝 夏への招待状シリーズ①

二廻歩
ミステリー
南の楽園グリーズ島マウントシー地区。過去のトラウマから逃れるため外との交流を絶った少女たちはマウントシーの洋館で穏やかな生活を送っていた。祭りが二週間後に迫ったある日一人の男が島を訪れる。男の出現によって今まで隠されていた真実が明らかになっていく。男の目的は一体何なのか? 約六人の男女の出会いと再生を描いたあまりにも危険な十四日間。 物語が進むにつれ謎が解明されていく。終盤にかけて怒涛の展開が待っている。 ヒロイン紹介 岬アリア。美波ブリリアント。島内シンディー。防人ドルチェ。深海エレン。 *表紙画像 藍屋えん 様より(フリーイラスト) ヒロイン詳細    岬アリア  五人の中で唯一感情が失われていない。          積極的に関わるあまり大河と対立することも。          今年来たばかりでまだ関係は浅い。       美波ブリリアント 過去のトラウマから感情を失っている。          ただ大河を気にかけてる素振り。          そう言う意味では感情は完全には失われていない。          ブリリアント編では一体何が? 島内シンディー  ぼくが怖いのは人ではない。銃だ!          シンディー編ではマウントシーの悪夢が……          オオカミが少女を襲う。 防人ドルチェ   大河との秘密の関係。家が貧しい。          ドルチェ編は名前ほど可愛くも甘くもない。 深海エレン    秘祭・月祭りの犠牲者。          エレン編始まる前に物語が……

かれん

青木ぬかり
ミステリー
 「これ……いったい何が目的なの?」  18歳の女の子が大学の危機に立ち向かう物語です。 ※とても長いため、本編とは別に前半のあらすじ「忙しい人のためのかれん」を公開してますので、ぜひ。

ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作
ミステリー
本作品は縁仁【ENZIN】―捜査一課 対異常犯罪交渉係―の続編にあたります。本作からでもお楽しみいただけますが、前作を先にお読みいただいたほうがなおお楽しみいただけるかと思います。 ※現在、色々と多忙につき不定期連載 週に3から4日は更新します。 平成。 今や過ぎ去りし過去となる時代。 累計で99人を殺害したとされる男。 名は坂田仁(さかたじん)。 これは、彼の若かりし時代に起きた、とある事件の話。 縁仁【ENZIN】―捜査一課 対異常犯罪交渉係―より10年以上の時を経て、ようやく続編開始。 【第一話 コレクター】《連載中》 全ての始まりは、彼が若き頃につるんでいた不良グループのメンバーが、変死体で見つかるという事件が起きたことだった。 特に殺害されたメンバーの第一発見者となった坂田は、その普段からの素行のせいで、警察や仲間内から犯人ではないかと疑いをかけられ、確証もないままに仲間内から制裁を受けることになってしまう。 そこに身を挺して助けに入ったのが、以前よりの悪友である楠野鐘(くすのしょう)だった。 坂田と楠野は、かつての仲間達をかわしつつ、坂田の身の潔白を証明するために犯人を探し始める。

処理中です...