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† † †
時おり強さを増す雨脚をものともせず、一美は悲し気に微笑んだ。
「……礼香、一緒に死のう……もうダメなの、だからお願い……」
わたしは驚き半歩後ろへ下がった。
「一美、冷静になって、そんな事言ったらダメだよ!」
真剣なその眼差しを受け、わたしはそれ以上言葉が出なかった。
雨脚は強さを増し、二人の姿をかき消す。
一瞬、強い風が二人の間を通り抜け、一美が目をつぶったその瞬間、わたしは思い切り彼女を突き飛ばしていた。
一美は防波堤からスローモーションのように波間に落ちていく。
わたしの赤いスカーフを握りしめながら……。
† † †
「一美、あなたの事を決して忘れないから……。ここへ来れば、何時でも会えるよね……」
「もうこれで安心ね……誰にも取られない……」
「わたしだけの『か・ず・み』……」
了
時おり強さを増す雨脚をものともせず、一美は悲し気に微笑んだ。
「……礼香、一緒に死のう……もうダメなの、だからお願い……」
わたしは驚き半歩後ろへ下がった。
「一美、冷静になって、そんな事言ったらダメだよ!」
真剣なその眼差しを受け、わたしはそれ以上言葉が出なかった。
雨脚は強さを増し、二人の姿をかき消す。
一瞬、強い風が二人の間を通り抜け、一美が目をつぶったその瞬間、わたしは思い切り彼女を突き飛ばしていた。
一美は防波堤からスローモーションのように波間に落ちていく。
わたしの赤いスカーフを握りしめながら……。
† † †
「一美、あなたの事を決して忘れないから……。ここへ来れば、何時でも会えるよね……」
「もうこれで安心ね……誰にも取られない……」
「わたしだけの『か・ず・み』……」
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