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第一夜・肝試し
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肝試し残り一組戻らない スマホの音が井戸から響く
降羽 優:歌集「呪い歌」から
「だから、やめようって言ったんだよ!」
吐き捨てるようなケンジの言葉に、わたしたちは誰一人答えることが出来なかった……。
この日、わたしたち大学のオカルト研究会の面々は、夏合宿と称し来年にはダムの底になると言う廃村へと向かっていた。
「部長、本当に大丈夫なんでしょうね?」
運転をするホクトが部長のシンゴに心配げな顔で聞く。
「問題なしだから。電気、水道はないけどアウトドア専門のケンジがいるから問題なし」
「シンゴ。俺に全部振りやがって、全く……」
「頼りにしてますからね。ケンジさん!」
わたしも期待を込めてケンジに微笑む。
「仕方ない。俺のキャンプは厳しいぞ!」
「ボス、よろしくお願いします!」
みんなの笑い声、楽しい合宿になりそうだ。
後続のもう1台もすぐに追いつき。オカ研、総勢6人の廃村夏合宿となった。
村の広場にテントを張り、周辺を探索する。さすが、アウトドア慣れしているケンジは手際が良い。
「わたし虫が苦手なんですけど……」
心配げにハルナが聞く。
「大丈夫だ。女性陣は車の中で寝れば良い」
「そうか、さすがアウトドア王。都会ではダメダメだけどね」
楽しそうにカスミがケンジにちょっかいを出す。
こうやって楽しい夏合宿は始まったのだが、その夜、事件が起こってしまう……。
「おい、シンゴ。ホントにやるのか?」
テントに戻って来た部長にケンジはしかめっ面で聞き返した。
「さっき、確認してきたよ。村の高台に祠があるから。そこまで交替で行ってみようよ」
シンゴはちゃめっ気たっぷりにみんなに向かってこう宣言する。
「夏合宿、恒例肝試し大会だよ!」
「おっ、出ましたね!」
喜んでいるのはカスミぐらいだった。
くじ引きで最初に部長とハルナ、次にホクトとカスミ。最後がわたしとケンジの順番に決まる。部長たちはすぐ戻り、次に元気よくカスミがホクトを引っ張って行く。
なかなか戻って来ないのでケンジがしびれを切らしてわたしに言った。
「ナツ、探しに行こう。俺たちが行けば、どこかで会うさ」
そう言う、ケンジにうなずいて二人で同じ道を歩いて行く。
「どこかで隠れてて、俺たちを驚かそうなんてないか?」
「そうね、カスミなら考えそう!」
そんな会話をしながら、わたしたちはまだこの時はそんな事を考えていた。
「おい、どうだった?」
所定の祠まで行ったわたしたちは誰にも会わずに戻る。待っていた部長とハルナは青い顔で首を横に振った。
「だから、やめようって言ったんだよ!」
吐き捨てるようなケンジの言葉に、誰一人答えることが出来なかった……。
「そうだ、スマホは?」
「ダメ、出てくれないよ……」
ハルナはしゃがみ込んで震えだした。
「とにかく、呼び出し続けろ。俺とシンゴで辺りを探すから。お前らは動くなよ!」
ケンジはシンゴと二人、周辺を手分けして探す。
「!」
今、村の外れから、かすかに音が聞こえた気がした。
どこだ。ケンジは辺りを見回す。
視線の先には、古い井戸があった……。
恐る恐る近づく、
井戸の中からカスミの着信音が響いていた。
井戸の中で、二人は折り重なるように亡くなっていた……。
ケンジは部長と二人、周辺の村で色々と話を聞かされたらしい。わたしはとても聞く気にはなれなかった……。
警察によると、スマホはロックがかかっていてしばらくは解除できないそうだ。
もしかすると、何かが映っているかも知れない……。
そう、何かが……。
降羽 優:歌集「呪い歌」から
「だから、やめようって言ったんだよ!」
吐き捨てるようなケンジの言葉に、わたしたちは誰一人答えることが出来なかった……。
この日、わたしたち大学のオカルト研究会の面々は、夏合宿と称し来年にはダムの底になると言う廃村へと向かっていた。
「部長、本当に大丈夫なんでしょうね?」
運転をするホクトが部長のシンゴに心配げな顔で聞く。
「問題なしだから。電気、水道はないけどアウトドア専門のケンジがいるから問題なし」
「シンゴ。俺に全部振りやがって、全く……」
「頼りにしてますからね。ケンジさん!」
わたしも期待を込めてケンジに微笑む。
「仕方ない。俺のキャンプは厳しいぞ!」
「ボス、よろしくお願いします!」
みんなの笑い声、楽しい合宿になりそうだ。
後続のもう1台もすぐに追いつき。オカ研、総勢6人の廃村夏合宿となった。
村の広場にテントを張り、周辺を探索する。さすが、アウトドア慣れしているケンジは手際が良い。
「わたし虫が苦手なんですけど……」
心配げにハルナが聞く。
「大丈夫だ。女性陣は車の中で寝れば良い」
「そうか、さすがアウトドア王。都会ではダメダメだけどね」
楽しそうにカスミがケンジにちょっかいを出す。
こうやって楽しい夏合宿は始まったのだが、その夜、事件が起こってしまう……。
「おい、シンゴ。ホントにやるのか?」
テントに戻って来た部長にケンジはしかめっ面で聞き返した。
「さっき、確認してきたよ。村の高台に祠があるから。そこまで交替で行ってみようよ」
シンゴはちゃめっ気たっぷりにみんなに向かってこう宣言する。
「夏合宿、恒例肝試し大会だよ!」
「おっ、出ましたね!」
喜んでいるのはカスミぐらいだった。
くじ引きで最初に部長とハルナ、次にホクトとカスミ。最後がわたしとケンジの順番に決まる。部長たちはすぐ戻り、次に元気よくカスミがホクトを引っ張って行く。
なかなか戻って来ないのでケンジがしびれを切らしてわたしに言った。
「ナツ、探しに行こう。俺たちが行けば、どこかで会うさ」
そう言う、ケンジにうなずいて二人で同じ道を歩いて行く。
「どこかで隠れてて、俺たちを驚かそうなんてないか?」
「そうね、カスミなら考えそう!」
そんな会話をしながら、わたしたちはまだこの時はそんな事を考えていた。
「おい、どうだった?」
所定の祠まで行ったわたしたちは誰にも会わずに戻る。待っていた部長とハルナは青い顔で首を横に振った。
「だから、やめようって言ったんだよ!」
吐き捨てるようなケンジの言葉に、誰一人答えることが出来なかった……。
「そうだ、スマホは?」
「ダメ、出てくれないよ……」
ハルナはしゃがみ込んで震えだした。
「とにかく、呼び出し続けろ。俺とシンゴで辺りを探すから。お前らは動くなよ!」
ケンジはシンゴと二人、周辺を手分けして探す。
「!」
今、村の外れから、かすかに音が聞こえた気がした。
どこだ。ケンジは辺りを見回す。
視線の先には、古い井戸があった……。
恐る恐る近づく、
井戸の中からカスミの着信音が響いていた。
井戸の中で、二人は折り重なるように亡くなっていた……。
ケンジは部長と二人、周辺の村で色々と話を聞かされたらしい。わたしはとても聞く気にはなれなかった……。
警察によると、スマホはロックがかかっていてしばらくは解除できないそうだ。
もしかすると、何かが映っているかも知れない……。
そう、何かが……。
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