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冬 二歌
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【クリスマス 届く写真とメッセージ】
十二月は駆け足で訪れて、そして駆け足で去っていく。
「ふぅ、急に冷えてきたな」
アパートの窓を開けると朝の冷たい空気が入り込む。俺は慌てて閉めようとする。
「冬はつとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでも」
「冬は早朝が素敵なんだよ。雪の朝はもちろん、霜柱で白くなっているのも良いでしょ」
そう言って、高子は俺の胸元から毛布にくるまりながら外を覗く。
「こら、そんな暖かいモノにくるまっているヤツが言う台詞か?」
俺は猫のように毛布にくるまった高子に迫る。
「ちょっと、定くん、エッチ」
「ばか、着てない方が悪いんだぞ」
「だれ、脱がした人は……ダメ、ダメ」
最近は高子のアパートに入り浸ってしまっている。三日夜餅の件以来、高子は俺から離れたがらなかった。
先日、俺の両親に高子を紹介した。たいそう喜ばれ、クリスマスには四人で夕食を食べることになっている。
高子の両親にも正月には挨拶に行くつもりだ。何も予定の無かった去年と比べ、今年の師走は足早に通り過ぎそうだった。
「この辺りでは雪は降らないんでしょう」
群馬県民は寒さには強いんだなどと、言いながら毛布にくるまっている、高子はホワイトクリスマスを期待しているようだ。
「まあ、年に数回だね。逆に積もったりしたらパニックだから」
実際、昨年五センチ積もって電車が止まった時には驚いた。
「高崎は? 積もるんじゃないの」
「ううん、寒いだけ。からっ風が吹くの」
「ああ、『かかあ天下とからっ風』だっけ」
「……定くん、そんなに尻にひかれたいんだ」
「いや、いや。君のお尻はちょっと強力すぎるよ」
「もう、それセクハラだからね!」
訳もなく二人じゃれつく日々、クリスマス間近の天気予報には雪のマークが見え隠れしている。
俺は電車が止まってしまっても、高子の望むホワイトクリスマスも良いかも知れないと少し思った。
イブは二人で、クリスマスは俺の両親と一緒に連夜の会食になる。終始、緊張気味だった高子は部屋に戻って大きく息をはいた。
「ご苦労さんだったね。大丈夫、親父たちも喜んでいたよ」
そう言って、俺は高子を抱きしめる。
「本当に? わたしちゃんと彼女してたかな……」
高子は不安げに俺の顔色をうかがう。
「ああ、素敵な彼女だったよ。俺の自慢の彼女だ! 」
そう言って、俺は大きくうなずいた。
「あ、絵はがきだ……」
郵便受けをのぞいた高子が一枚の絵はがきを見つけた。
「これ、忍だね。見て、オーロラの写真ね。メリークリスマスですって」
嬉しそうに俺に見せる。
「ホントだ、アイツ……他に何にも書いて無いじゃんかよ!」
「ふぅ、あの子らしいね……」
「……確かに」
たくさんの嬉しいことに囲まれたクリスマスだった。
その頃、俺のアパートの郵便受けにも忍からのクリスマスカードが届いていることなど、俺には知る由もなかった。
【クリスマス 届く写真とメッセージ 雪の予報に心踊らす】
十二月は駆け足で訪れて、そして駆け足で去っていく。
「ふぅ、急に冷えてきたな」
アパートの窓を開けると朝の冷たい空気が入り込む。俺は慌てて閉めようとする。
「冬はつとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでも」
「冬は早朝が素敵なんだよ。雪の朝はもちろん、霜柱で白くなっているのも良いでしょ」
そう言って、高子は俺の胸元から毛布にくるまりながら外を覗く。
「こら、そんな暖かいモノにくるまっているヤツが言う台詞か?」
俺は猫のように毛布にくるまった高子に迫る。
「ちょっと、定くん、エッチ」
「ばか、着てない方が悪いんだぞ」
「だれ、脱がした人は……ダメ、ダメ」
最近は高子のアパートに入り浸ってしまっている。三日夜餅の件以来、高子は俺から離れたがらなかった。
先日、俺の両親に高子を紹介した。たいそう喜ばれ、クリスマスには四人で夕食を食べることになっている。
高子の両親にも正月には挨拶に行くつもりだ。何も予定の無かった去年と比べ、今年の師走は足早に通り過ぎそうだった。
「この辺りでは雪は降らないんでしょう」
群馬県民は寒さには強いんだなどと、言いながら毛布にくるまっている、高子はホワイトクリスマスを期待しているようだ。
「まあ、年に数回だね。逆に積もったりしたらパニックだから」
実際、昨年五センチ積もって電車が止まった時には驚いた。
「高崎は? 積もるんじゃないの」
「ううん、寒いだけ。からっ風が吹くの」
「ああ、『かかあ天下とからっ風』だっけ」
「……定くん、そんなに尻にひかれたいんだ」
「いや、いや。君のお尻はちょっと強力すぎるよ」
「もう、それセクハラだからね!」
訳もなく二人じゃれつく日々、クリスマス間近の天気予報には雪のマークが見え隠れしている。
俺は電車が止まってしまっても、高子の望むホワイトクリスマスも良いかも知れないと少し思った。
イブは二人で、クリスマスは俺の両親と一緒に連夜の会食になる。終始、緊張気味だった高子は部屋に戻って大きく息をはいた。
「ご苦労さんだったね。大丈夫、親父たちも喜んでいたよ」
そう言って、俺は高子を抱きしめる。
「本当に? わたしちゃんと彼女してたかな……」
高子は不安げに俺の顔色をうかがう。
「ああ、素敵な彼女だったよ。俺の自慢の彼女だ! 」
そう言って、俺は大きくうなずいた。
「あ、絵はがきだ……」
郵便受けをのぞいた高子が一枚の絵はがきを見つけた。
「これ、忍だね。見て、オーロラの写真ね。メリークリスマスですって」
嬉しそうに俺に見せる。
「ホントだ、アイツ……他に何にも書いて無いじゃんかよ!」
「ふぅ、あの子らしいね……」
「……確かに」
たくさんの嬉しいことに囲まれたクリスマスだった。
その頃、俺のアパートの郵便受けにも忍からのクリスマスカードが届いていることなど、俺には知る由もなかった。
【クリスマス 届く写真とメッセージ 雪の予報に心踊らす】
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