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秋 四歌
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【伸びてゆく 飛行機雲が秋の空】
昨日、忍の顔を見れたので、安心して俺は学業に専念していた。実験も目途がついて、ほっと一息ついていた時。スマホが鳴る。表示を見て驚く、何で今頃? とにかく俺はロビーに移動しながらスマホをとった。
「出るの遅い!」
「実験中なんだから仕方ないだろう」
遠慮の無い言葉に、俺もついつい強い口調になってしまう。
「定家くん、わたしこれから留学します。今、成田空港なんだけど、北欧のフィンランドに一年間行ってきます」
「フィンランド?」
「そう、ムーミンの国だよ」
驚いた俺はロビーに響くような大きな声になってしまう。慌てて小声で聞く。
「お前、そんな事、全然言ってなかったじゃないか。何で急に」
「高子には、ちゃんと話してあるよ。定家くんには口止めしておいたんだ。どう、驚いたでしょう?」
ドッキリが成功したかのように笑う忍の顔が見に映った。
「定家くん、わたしがいなくても泣いちゃダメだよ」
「あほか!」
「あと、高子のことは、よろしくね」
「分かってる。そこは安心しろ」
「まだ、学生なんだから。ちゃんと避妊するんだよ」
「電話切るぞ! こらぁ」
「……それから……」
「何だ?」
「……定家くんのこと、ちょっとは好きだったよ、ちょっとだよ、ほんのちょっと」
「ありがとな。でも、三回もちょっとをつけなくても良いんじゃないか?」
「まあ、そんなもんだよ。人生そう甘くないってことだね」
「ばか、その言葉、そっくりそのままお前に返してやるよ」
「あ、搭乗手続き始まったから、切るね」
「分かった。頑張れよ」
「うん、頑張るから……」
意外と長話になってしまい、終わると隣に業が立っていた。
「どうした、誰から?」
心配げに聞いてくる業に、俺はオーバーアクションで答える。
「忍だ。なんと、フィンランドへこれから留学だそうだ」
「……あの子は俺たちの想像を軽く超えて行くな……」
「同感だ!」
軽く二人して笑いあった。
今頃は、もう空か……俺は秋の高い空を見上げた。
【伸びてゆく 飛行機雲が秋の空 旅立つ思い 決断の時】
昨日、忍の顔を見れたので、安心して俺は学業に専念していた。実験も目途がついて、ほっと一息ついていた時。スマホが鳴る。表示を見て驚く、何で今頃? とにかく俺はロビーに移動しながらスマホをとった。
「出るの遅い!」
「実験中なんだから仕方ないだろう」
遠慮の無い言葉に、俺もついつい強い口調になってしまう。
「定家くん、わたしこれから留学します。今、成田空港なんだけど、北欧のフィンランドに一年間行ってきます」
「フィンランド?」
「そう、ムーミンの国だよ」
驚いた俺はロビーに響くような大きな声になってしまう。慌てて小声で聞く。
「お前、そんな事、全然言ってなかったじゃないか。何で急に」
「高子には、ちゃんと話してあるよ。定家くんには口止めしておいたんだ。どう、驚いたでしょう?」
ドッキリが成功したかのように笑う忍の顔が見に映った。
「定家くん、わたしがいなくても泣いちゃダメだよ」
「あほか!」
「あと、高子のことは、よろしくね」
「分かってる。そこは安心しろ」
「まだ、学生なんだから。ちゃんと避妊するんだよ」
「電話切るぞ! こらぁ」
「……それから……」
「何だ?」
「……定家くんのこと、ちょっとは好きだったよ、ちょっとだよ、ほんのちょっと」
「ありがとな。でも、三回もちょっとをつけなくても良いんじゃないか?」
「まあ、そんなもんだよ。人生そう甘くないってことだね」
「ばか、その言葉、そっくりそのままお前に返してやるよ」
「あ、搭乗手続き始まったから、切るね」
「分かった。頑張れよ」
「うん、頑張るから……」
意外と長話になってしまい、終わると隣に業が立っていた。
「どうした、誰から?」
心配げに聞いてくる業に、俺はオーバーアクションで答える。
「忍だ。なんと、フィンランドへこれから留学だそうだ」
「……あの子は俺たちの想像を軽く超えて行くな……」
「同感だ!」
軽く二人して笑いあった。
今頃は、もう空か……俺は秋の高い空を見上げた。
【伸びてゆく 飛行機雲が秋の空 旅立つ思い 決断の時】
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