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プロローグ
〜 契約 〜(1)sideメリッサ
しおりを挟むメリッサのお話です
*******
私の名前はメリッサ・ランバーテイン
クラウン公爵家に仕えるメイドであると同時に、長子であるウィリアム・レア・クラウン様専属の世話係でございます。
何故私がウィリアム様専属の世話係に任命されたかと言いますと端的に言って屋敷のメイドで私が1番若く現在17歳だからです。
17歳と言うと本来ならば王立学園に通っている筈の年齢なのですが、とある事情により私は学園を退学して懇意であるクラウン公爵家にメイドとして雇っていただきました。
さて、皆さまは専属メイドと言うと多忙なイメージを浮かべると思いますが、ことウィリアム様に関しましてはそれほど忙しくはございません。と言うのも、赤子の頃からウィリアム様は夜泣きはもちろんの事、殆ど泣くこともなく世の赤子達が見本にして欲しいくらい手の掛からない赤子でしたが、私は逆にそれが不気味でした。
だって普通、産まれて間もない子供がハイハイしようとしますか?しませんよね!
その瞬間を目撃した私はウィリアム様に対して恐怖を覚えました。
そんな事を思いながらウィリアム様の世話係になってから1年が過ぎた頃、偶然にも私はウィリアム様が魔力を解放しているところを目撃してしまいました。
––––––––––––
あの日、私は毎朝交換しているシーツの交換を忘れてしまい、いつもより早い時間にウィリアム様の部屋へと向かいました。
コンコンコン!
「失礼しますウィリアム様」
私が部屋に入るとウィリアム様は慌てた様子で声をあげました。
「ちょっ!?嘘でしょ?なんでメリッサがこの時間に!」
「申し訳ございません、今朝シーツの取り替えを忘れてしまい––––ッ!?魔力が漏れて……一体どうなさったのですかウィリアム様?!」
ウィリアム様を見ると、なんと魔力を解放していたのです!
それも私よりも圧倒的な量をたった1歳の子供が……
私が動揺しているとウィリアム様は手を頭に乗せながら困った表情で
「あ~あ、見つかっちゃたかぁ~…。まぁメリッサならしょうがないよなぁ……」
と言いながら私の側に近づいて来ます。
「あぁ……うそ……」
私はその場で尻餅をつきながらウィリアム様の事を見上げて泣いていました。
こう見えて私は王立学園で上位10人に入るくらいの実力がありましたが、目の前にいるウィリアム様の魔力は10人全員が束にかかっても相手にならないと思える程に次元が違い過ぎました。
(ど、どうしよう……私、殺されるのかなぁ?)
私がそう思っていると、ウィリアム様は笑みを浮かべながら予想外の事を言ってきました。
「ねぇメリッサ。俺と契約しない?」
「………はい?」
私は思わず素っ頓狂な声を出してしまいました。
(契約?契約って何を?)
私が考え込んでいると、ウィリアム様は更に話を続けます。
「契約の内容は、メリッサに俺の協力者になって欲しいんだよ。その代わりに俺はメリッサの目的を果たす為の手伝いをしてあげるから」
「?!」
「あれ?そんなに驚いてどうしたの?」
「わ、私の目的がなんなのかウィリアム様はご存知なのですか?」
「えっ?うん知ってるよ。メリッサが元伯爵令嬢だって事も、両親が何者かに殺された事も、メリッサの目的が両親の復讐だって事も」
「どうして知ってるんですか?この事を知っているのは旦那様と執事長のお二人だけなのに……」
私が質問するとウィリアム様は何処からか手帳の様なものを取り出してページを開くと内容を声に出して読んでいく。
「『メリッサ・ランバーテイン』元伯爵令嬢で16歳の時に両親を殺され、その後ランバーテイン家は取り潰しになり、かねてから交友があったクラウン公爵家のメイドとして働きながら情報を集めるが全く情報を得る事が出来ず、復讐を果たせず終わるか………で、どうする?俺と契約すればメリッサの復讐に手を貸すけど?」
「失礼ながらご質問があります」
「何?」
「もし私がウィリアム様のことを旦那様や奥様に話したらどうなるのでしょうか?」
「そうだねぇ……取り敢えず記憶を消すか、出来なければ一生眠って貰おうかな」
引くも地獄。進むも地獄。
そんな2択に対して私は
「…………分かりました。ウィリアム様と契約いたします」
「おお!ありがとうメリッサ。お陰で君を殺さずにすみそうだよ」
さらっと恐ろしいことを言うウィリアム様に対して苦笑いをしながら私は
「よろしくお願いします」
と、ウィリアム様の提案を受け入れました。
「よろしくねメリッサ」
こうして私とウィリアム様は契約を結びました。
しかし翌日、私はウィリアム様と契約した事を後悔することになります。
だって………
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