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入学式
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エドウィン殿下の新入生歓迎の言葉から始まった入学式。
始まってしばらく経った頃。
来賓者からの祝辞を頂いている最中、一人の女子生徒が教員に先導されてこっそりと着席した。
あのパステルピンクは!
え?
なぜ今頃になって入って来たの?
セドリックに急かされてギリギリ始まる前に滑り込みセーフで間に合うはずのパナピーアが、どうして今になって入って来たのか……アデリアーナにはまったく状況が分からなかった。
いけないとは承知で、思わず保護者席をこっそり確認する。
両親とセドリックはちゃんと席に居て、アデリアーナは無意識に詰めていた息をそっと吐き出した。
予知夢では子猫の世話のため遅れて入って来たのはセドリックだったはずなので、夢とは違う事が起きているらしい。
彼らの出会いは阻止できた可能性が高いのかもと思うと嬉しくなる。
もうこれだけで今のアデリアーナがホッとするには充分だった。
入学式は順調に進んでいた。
そして再び生徒会長としてエドウィンが壇上に進み出る。
この王太子殿下、普段は取り澄ました笑顔しか見せない。
なのに今、見渡した先に婚約者の姿を見付けて無意識に微笑んだものだから、場内の──特に女生徒たちが騒めいた。
微笑ではあっても本心で笑うなど、公の場ではまず見られない貴重なものだった。
大陸中に知れ渡るくらい美丈夫な王子の心からの微笑みは相当な破壊力で、これはパナピーアにも驚きを与えていた。
全てを神の視点で見ている者がいるのなら。
あーあ。あの王子、完全にロックオンされちゃったよ……と思った事だろう。
アデリアーナもエドウィンの心からの笑顔には驚いていた。
それは婚約者に選ばれて既に四年の間、ついぞ見せてもらえなかった表情なのだ。
あの予知夢を見る前のアデリアーナは完全に片思いだった。
以前のエドウィンは単に政略結婚の相手としか認識していなかったのだから、彼女と同じ思いを返してくれないのは仕方ないのかもしれない。
けれど婚約者になってから、アデリアーナはエドウィンに認めてもらえるように、お妃教育や社交、公務や慈善事業と、できる事は頑張ってやって来たし、エドウィンとの距離を埋めるように色々気遣ったり、彼のためにできる事を探したりしたのだ。
そして一年ほど前、エドウィンたちが学園に入学してからは、会える回数が大幅に減るので心配していたものの、ようやくこれまでの成果が出たのか? 殿下のほうからも歩み寄ってくれていると……本当にやっと穏やかに笑ってくれるようになって来たところだった。
でも、こんな素敵な笑顔は……まだ私に向けてくれた事は無かったのに……。
ずっと見たかったエドウィンの最高の笑顔が向けられた先が自分だけでは無いことに、アデリアーナはショックを受けていた。
まるで自分は特別ではなくその他大勢に過ぎないんだと……ハッキリ言われているような気がして悲しかったのだ。
入学式そのものに予知夢の出来事は関係しない。
それでなのか現実も、殿下の微笑み以外は何事もなく終了した。
始まってしばらく経った頃。
来賓者からの祝辞を頂いている最中、一人の女子生徒が教員に先導されてこっそりと着席した。
あのパステルピンクは!
え?
なぜ今頃になって入って来たの?
セドリックに急かされてギリギリ始まる前に滑り込みセーフで間に合うはずのパナピーアが、どうして今になって入って来たのか……アデリアーナにはまったく状況が分からなかった。
いけないとは承知で、思わず保護者席をこっそり確認する。
両親とセドリックはちゃんと席に居て、アデリアーナは無意識に詰めていた息をそっと吐き出した。
予知夢では子猫の世話のため遅れて入って来たのはセドリックだったはずなので、夢とは違う事が起きているらしい。
彼らの出会いは阻止できた可能性が高いのかもと思うと嬉しくなる。
もうこれだけで今のアデリアーナがホッとするには充分だった。
入学式は順調に進んでいた。
そして再び生徒会長としてエドウィンが壇上に進み出る。
この王太子殿下、普段は取り澄ました笑顔しか見せない。
なのに今、見渡した先に婚約者の姿を見付けて無意識に微笑んだものだから、場内の──特に女生徒たちが騒めいた。
微笑ではあっても本心で笑うなど、公の場ではまず見られない貴重なものだった。
大陸中に知れ渡るくらい美丈夫な王子の心からの微笑みは相当な破壊力で、これはパナピーアにも驚きを与えていた。
全てを神の視点で見ている者がいるのなら。
あーあ。あの王子、完全にロックオンされちゃったよ……と思った事だろう。
アデリアーナもエドウィンの心からの笑顔には驚いていた。
それは婚約者に選ばれて既に四年の間、ついぞ見せてもらえなかった表情なのだ。
あの予知夢を見る前のアデリアーナは完全に片思いだった。
以前のエドウィンは単に政略結婚の相手としか認識していなかったのだから、彼女と同じ思いを返してくれないのは仕方ないのかもしれない。
けれど婚約者になってから、アデリアーナはエドウィンに認めてもらえるように、お妃教育や社交、公務や慈善事業と、できる事は頑張ってやって来たし、エドウィンとの距離を埋めるように色々気遣ったり、彼のためにできる事を探したりしたのだ。
そして一年ほど前、エドウィンたちが学園に入学してからは、会える回数が大幅に減るので心配していたものの、ようやくこれまでの成果が出たのか? 殿下のほうからも歩み寄ってくれていると……本当にやっと穏やかに笑ってくれるようになって来たところだった。
でも、こんな素敵な笑顔は……まだ私に向けてくれた事は無かったのに……。
ずっと見たかったエドウィンの最高の笑顔が向けられた先が自分だけでは無いことに、アデリアーナはショックを受けていた。
まるで自分は特別ではなくその他大勢に過ぎないんだと……ハッキリ言われているような気がして悲しかったのだ。
入学式そのものに予知夢の出来事は関係しない。
それでなのか現実も、殿下の微笑み以外は何事もなく終了した。
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