6 / 25
医務室
しおりを挟む
パナピーアが近くの角を右に曲がったのを見て、アンセムは彼女が言いつけ通りに医務室へ向かったのが分かって頷いている。
そしてちょっと屈むと「失礼……」と言ってアデリアーナを抱き上げた。
「ア、アンセム様?」
「事前に防げず申し訳ありませんでした。どこをお怪我なさったのか僕が確認なんてできませんので……申し訳ありませんが医務室で女性医師に診ていただきます」
「あの、でもそんな、医務室に行くほどでは……」
「いえ、あとから何かあれば大変な事になります。きちんと診察を受けて、何も無かったとしても記録として残しませんと……」
「それでは殿下をお待たせしてしまいますわ」
「大丈夫です。診察を受けている間に僕が知らせに行きますから」
何を言っても無駄で、結局アデリアーナはアンセムに運ばれていった。
医務室では王太子の婚約者という事で、大変丁寧な診察をされ居た堪れない。
アデリアーナは大した怪我では無いからと、この事は伏せてもらうように必死で頼んだ。
なにしろ相手はパナピーアだ。
今回のことを悪用して断罪に強引に持ち込まれても困る。
でも穏便に済ませておけば、もしかしたら断罪はかわいそうとか思ってもらえたりしないだろうか?
アデリアーナはホンのちょびっとの打算と共に、優しい淑女の仮面を念入りに被ったのだった。
アデリアーナのヒザは結構大きなアザができていた。
「あらあら、綺麗な白い足が台無しだわ」
そう言って丁寧に湿布を貼って包帯を巻いてくれた女性医師。
「あの、さっきの女生徒さんのケガは……?」
「え? あぁ、パナピーアさんとか言ったかしら? 彼女、何ともなかったわよ?」
「何とも⁉︎ でも勢いよく転んでましたけど? あれで大丈夫だったのですか?」
「まぁ、彼女最近男爵家に引き取られたって言っていたから、きっと子供の頃は町中を走り回って遊んできたクチなんじゃないかしら?」
庶民の子供ってどうしてあんなに元気で丈夫なのかしらねぇ……なんて微笑ましそうに笑ってる。
「何でも無ければ良いのですが……」
「結構そういう子居るのよ。運動神経は良いみたいだし、受け身──って分からないか、えーと、ケガしにくい方法を知っているのよ」
アデリアーナは女性医師と話してある程度安心したらしい。
アンセムは医師の診断を聞いて、エドウィンへ報告しに行ってしまった。
アデリアーナは女性医師が送ってくれたので、それに従って会場入りする事となる。
ここでアデリアーナは考える。
あの予知夢とはまったく違う形でアンセムとパナピーアは出会ってしまった。
完全に回避できるなら良かったが中途半端になってしまって、この先の予想が難しくなったりしないだろうか?
それがとても心配だった。
そしてちょっと屈むと「失礼……」と言ってアデリアーナを抱き上げた。
「ア、アンセム様?」
「事前に防げず申し訳ありませんでした。どこをお怪我なさったのか僕が確認なんてできませんので……申し訳ありませんが医務室で女性医師に診ていただきます」
「あの、でもそんな、医務室に行くほどでは……」
「いえ、あとから何かあれば大変な事になります。きちんと診察を受けて、何も無かったとしても記録として残しませんと……」
「それでは殿下をお待たせしてしまいますわ」
「大丈夫です。診察を受けている間に僕が知らせに行きますから」
何を言っても無駄で、結局アデリアーナはアンセムに運ばれていった。
医務室では王太子の婚約者という事で、大変丁寧な診察をされ居た堪れない。
アデリアーナは大した怪我では無いからと、この事は伏せてもらうように必死で頼んだ。
なにしろ相手はパナピーアだ。
今回のことを悪用して断罪に強引に持ち込まれても困る。
でも穏便に済ませておけば、もしかしたら断罪はかわいそうとか思ってもらえたりしないだろうか?
アデリアーナはホンのちょびっとの打算と共に、優しい淑女の仮面を念入りに被ったのだった。
アデリアーナのヒザは結構大きなアザができていた。
「あらあら、綺麗な白い足が台無しだわ」
そう言って丁寧に湿布を貼って包帯を巻いてくれた女性医師。
「あの、さっきの女生徒さんのケガは……?」
「え? あぁ、パナピーアさんとか言ったかしら? 彼女、何ともなかったわよ?」
「何とも⁉︎ でも勢いよく転んでましたけど? あれで大丈夫だったのですか?」
「まぁ、彼女最近男爵家に引き取られたって言っていたから、きっと子供の頃は町中を走り回って遊んできたクチなんじゃないかしら?」
庶民の子供ってどうしてあんなに元気で丈夫なのかしらねぇ……なんて微笑ましそうに笑ってる。
「何でも無ければ良いのですが……」
「結構そういう子居るのよ。運動神経は良いみたいだし、受け身──って分からないか、えーと、ケガしにくい方法を知っているのよ」
アデリアーナは女性医師と話してある程度安心したらしい。
アンセムは医師の診断を聞いて、エドウィンへ報告しに行ってしまった。
アデリアーナは女性医師が送ってくれたので、それに従って会場入りする事となる。
ここでアデリアーナは考える。
あの予知夢とはまったく違う形でアンセムとパナピーアは出会ってしまった。
完全に回避できるなら良かったが中途半端になってしまって、この先の予想が難しくなったりしないだろうか?
それがとても心配だった。
24
お気に入りに追加
3,416
あなたにおすすめの小説
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
虐げられるのは嫌なので、モブ令嬢を目指します!
八代奏多
恋愛
伯爵令嬢の私、リリアーナ・クライシスはその過酷さに言葉を失った。
社交界がこんなに酷いものとは思わなかったのだから。
あんな痛々しい姿になるなんて、きっと耐えられない。
だから、虐められないために誰の目にも止まらないようにしようと思う。
ーー誰の目にも止まらなければ虐められないはずだから!
……そう思っていたのに、いつの間にかお友達が増えて、ヒロインみたいになっていた。
こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなったのーー!?
※小説家になろう様・カクヨム様にも投稿しています。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
私の幼馴染の方がすごいんですが…。〜虐められた私を溺愛する3人の復讐劇〜
めろめろす
恋愛
片田舎から村を救うために都会の学校にやってきたエールカ・モキュル。国のエリートたちが集う学校で、エールカは学校のエリートたちに目を付けられる。見た目が整っている王子たちに自分達の美貌や魔法の腕を自慢されるもの
「いや、私の幼馴染の方がすごいので…。」
と本音をポロリ。
その日から片田舎にそんな人たちがいるものかと馬鹿にされ嘘つきよばわりされいじめが始まってしまう。
その後、問題を起こし退学処分となったエールカを迎えにきたのは、とんでもない美形の男で…。
「俺たちの幼馴染がお世話になったようで?」
幼馴染たちの復讐が始まる。
カクヨムにも掲載中。
HOTランキング10位ありがとうございます(9/10)
「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される
沙寺絃
恋愛
女子高生のエリカは異世界に召喚された。聖女と呼ばれるエリカだが、王子の本命は一緒に召喚されたもう一人の女の子だった。「 聖女は二人もいらない」と城を追放され、魔族に命を狙われたエリカを助けたのは、銀髪のイケメン騎士フレイ。 圧倒的な強さで魔王の手下を倒したフレイは言う。
「あなたこそが聖女です」
「あなたは俺の領地で保護します」
「身柄を預かるにあたり、俺の婚約者ということにしましょう」
こうしてエリカの偽装結婚異世界ライフが始まった。
やがてエリカはイケメン騎士に溺愛されながら、秘められていた聖女の力を開花させていく。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす
みん
恋愛
【モブ】シリーズ③(本編完結済み)
R4.9.25☆お礼の気持ちを込めて、子達の話を投稿しています。4話程になると思います。良ければ、覗いてみて下さい。
“巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について”
“モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語”
に続く続編となります。
色々あって、無事にエディオルと結婚して幸せな日々をに送っていたハル。しかし、トラブル体質?なハルは健在だったようで──。
ハルだけではなく、パルヴァンや某国も絡んだトラブルに巻き込まれていく。
そして、そこで知った真実とは?
やっぱり、書き切れなかった話が書きたくてウズウズしたので、続編始めました。すみません。
相変わらずのゆるふわ設定なので、また、温かい目で見ていただけたら幸いです。
宜しくお願いします。
婚約破棄された真の聖女は隠しキャラのオッドアイ竜大王の運命の番でした!~ヒロイン様、あなたは王子様とお幸せに!~
白樫アオニ(卯月ミント)
恋愛
「私、竜の運命の番だったみたいなのでこのまま去ります! あなたは私に構わず聖女の物語を始めてください!」
……聖女候補として長年修行してきたティターニアは王子に婚約破棄された。
しかしティターニアにとっては願ったり叶ったり。
何故なら王子が新しく婚約したのは、『乙女ゲームの世界に異世界転移したヒロインの私』を自称する異世界から来た少女ユリカだったから……。
少女ユリカが語るキラキラした物語――異世界から来た少女が聖女に選ばれてイケメン貴公子たちと絆を育みつつ魔王を倒す――(乙女ゲーム)そんな物語のファンになっていたティターニア。
つまりは異世界から来たユリカが聖女になることこそ至高! そのためには喜んで婚約破棄されるし追放もされます! わーい!!
しかし選定の儀式で選ばれたのはユリカではなくティターニアだった。
これじゃあ素敵な物語が始まらない! 焦る彼女の前に、青赤瞳のオッドアイ白竜が現れる。
運命の番としてティターニアを迎えに来たという竜。
これは……使える!
だが実はこの竜、ユリカが真に狙っていた隠しキャラの竜大王で……
・完結しました。これから先は、エピソードを足したり、続きのエピソードをいくつか更新していこうと思っています。
・お気に入り登録、ありがとうございます!
・もし面白いと思っていただけましたら、やる気が超絶跳ね上がりますので、是非お気に入り登録お願いします!
・hotランキング10位!!!本当にありがとうございます!!!
・hotランキング、2位!?!?!?これは…とんでもないことです、ありがとうございます!!!
・お気に入り数が1700超え!物凄いことが起こってます。読者様のおかげです。ありがとうございます!
・お気に入り数が3000超えました!凄いとしかいえない。ほんとに、読者様のおかげです。ありがとうございます!!!
・感想も何かございましたらお気軽にどうぞ。感想いただけますと、やる気が宇宙クラスになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる