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舞台裏
73.暴走〈第三者side〉
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〈第三者side〉
次の日。
正義感に燃えたメイシーは、いつもならグイドと二人で過ごすお茶の時間でも険しい表情を緩めてはいなかった。
「メイシー? どうしたんだ?」
かわいい婚約者と楽しい時間が過ごせると期待していたグイドは困惑気味に話しかける。
「シンシアと話し合ったんだけど、絶対にアイツと例の女を再会させた誰かがいると思うの!」
「え゙……」
「だって、スミス伯爵子息も、ジョンソン子爵子息も、茶髪では無いでしょ?」
「は?」
「だから。学園内で例の女に再会した最初の青年は、茶髪に栗色の目をした人なのよ」
グイドは辛うじて驚きを隠し、自分の婚約者を見詰める。
背中をツーっと冷や汗が伝った。
待てまて、なんでそんな事知ってるんだよ!?
ブリトニーへの接触には相当気を使ったはずなのに……なぜ?
メイシーは一体どっからそんな情報仕入れて来たんだ!?
「えーと、その茶髪の青年に怒ってるのか? それでそいつを見つけようとか?」
「え? あぁ、そうじゃ無いわ。もうそれは良くなったの」
安堵の息が漏れそうになって必死で堪えるグイド。
そんなことはまったく知らないメイシーは「そんなことより」とグイドに向き直る。
背筋を伸ばしたグイドは、真剣な面持ちでメイシーの言葉を待った。
「もうこの際、アイツは例の女と仲良くしたままで良いんじゃ無いかと思って!」
「うん」
「だから、ステファニーに教えてしまおうと思ってるの。それで……」
「それで?」
ここまで来るとメイシーの思考がどこへ向かうのか、グイドにも分からない。
メイシーと出会った時からずっと、彼女の突飛な行動に驚かされて来た思い出が脳裏を駆け抜けドキドキが止まらない。
「ステファニーはアイツと婚約なんでさせない!」
「え!? 何するつもりだい?」
「この秋、一族が集まる時に正式なお披露目があるみたいで、それまでに二人の関係を終わらせて、新たにステファニーにお似合いの素敵な婚約者を迎えられるようにするのよ!」
「あぁ。なんだ……」
グイドは心底安心し遠い目で宙空を眺めた。
「『なんだ』って?」
「いや、何でもないよ。うん。俺もそれにはぜひ協力したいと思ってね」
「わぁ。グイドも手伝ってくれるなら安心ね。とにかくステファニーを早くフリーにしなくっちゃ!」
メイシーはとてもご機嫌だ。
そのご機嫌ついでにポロッと口を滑らせる。
「ステファニーがフリーになったらきっと大変よ?」
「大変?」
「そうよ。武門の家に婿入り候補は居ないか打診が行くはずだもの。きっとおじい様が国中から選りすぐりでお相手を集めるんじゃないかしら?」
「……グランデ辺境伯が? ステファニー嬢じゃなくて?」
「そうよ。もちろん彼女の意見は優先だけど、候補者を選ぶのはおじい様でしょうね」
「……なるほど」
「ステファニーを大事にしてくれて、何でもできる感じの、カッコいい人が見つかると良いのだけど……?」
「……それはスゴイ争奪戦になりそうだね」
楽しそうなメイシーとは裏腹にグイドは頬を引き攣らせる。
絶対変なヤツが選ばれないようにしないと……。
変に領地に引き篭もるような奴ではメイシーが頻繁に遊びに行きたがるかもしれない。
それにあんまり社交的過ぎても、一緒に出かけて変な男に目を付けられかねん。
と言うか、ここはブラッドリーに頑張ってもらうしか無いだろう。
とりあえず、ローマン一族の代表は死守してくれると良いが……。
メイシーとのお茶会で、ゆっくりしていられないとソワソワするなんて……。
グイドにとって人生初の珍事となった。
次の日。
正義感に燃えたメイシーは、いつもならグイドと二人で過ごすお茶の時間でも険しい表情を緩めてはいなかった。
「メイシー? どうしたんだ?」
かわいい婚約者と楽しい時間が過ごせると期待していたグイドは困惑気味に話しかける。
「シンシアと話し合ったんだけど、絶対にアイツと例の女を再会させた誰かがいると思うの!」
「え゙……」
「だって、スミス伯爵子息も、ジョンソン子爵子息も、茶髪では無いでしょ?」
「は?」
「だから。学園内で例の女に再会した最初の青年は、茶髪に栗色の目をした人なのよ」
グイドは辛うじて驚きを隠し、自分の婚約者を見詰める。
背中をツーっと冷や汗が伝った。
待てまて、なんでそんな事知ってるんだよ!?
ブリトニーへの接触には相当気を使ったはずなのに……なぜ?
メイシーは一体どっからそんな情報仕入れて来たんだ!?
「えーと、その茶髪の青年に怒ってるのか? それでそいつを見つけようとか?」
「え? あぁ、そうじゃ無いわ。もうそれは良くなったの」
安堵の息が漏れそうになって必死で堪えるグイド。
そんなことはまったく知らないメイシーは「そんなことより」とグイドに向き直る。
背筋を伸ばしたグイドは、真剣な面持ちでメイシーの言葉を待った。
「もうこの際、アイツは例の女と仲良くしたままで良いんじゃ無いかと思って!」
「うん」
「だから、ステファニーに教えてしまおうと思ってるの。それで……」
「それで?」
ここまで来るとメイシーの思考がどこへ向かうのか、グイドにも分からない。
メイシーと出会った時からずっと、彼女の突飛な行動に驚かされて来た思い出が脳裏を駆け抜けドキドキが止まらない。
「ステファニーはアイツと婚約なんでさせない!」
「え!? 何するつもりだい?」
「この秋、一族が集まる時に正式なお披露目があるみたいで、それまでに二人の関係を終わらせて、新たにステファニーにお似合いの素敵な婚約者を迎えられるようにするのよ!」
「あぁ。なんだ……」
グイドは心底安心し遠い目で宙空を眺めた。
「『なんだ』って?」
「いや、何でもないよ。うん。俺もそれにはぜひ協力したいと思ってね」
「わぁ。グイドも手伝ってくれるなら安心ね。とにかくステファニーを早くフリーにしなくっちゃ!」
メイシーはとてもご機嫌だ。
そのご機嫌ついでにポロッと口を滑らせる。
「ステファニーがフリーになったらきっと大変よ?」
「大変?」
「そうよ。武門の家に婿入り候補は居ないか打診が行くはずだもの。きっとおじい様が国中から選りすぐりでお相手を集めるんじゃないかしら?」
「……グランデ辺境伯が? ステファニー嬢じゃなくて?」
「そうよ。もちろん彼女の意見は優先だけど、候補者を選ぶのはおじい様でしょうね」
「……なるほど」
「ステファニーを大事にしてくれて、何でもできる感じの、カッコいい人が見つかると良いのだけど……?」
「……それはスゴイ争奪戦になりそうだね」
楽しそうなメイシーとは裏腹にグイドは頬を引き攣らせる。
絶対変なヤツが選ばれないようにしないと……。
変に領地に引き篭もるような奴ではメイシーが頻繁に遊びに行きたがるかもしれない。
それにあんまり社交的過ぎても、一緒に出かけて変な男に目を付けられかねん。
と言うか、ここはブラッドリーに頑張ってもらうしか無いだろう。
とりあえず、ローマン一族の代表は死守してくれると良いが……。
メイシーとのお茶会で、ゆっくりしていられないとソワソワするなんて……。
グイドにとって人生初の珍事となった。
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