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舞台裏
72.絡まった糸〈第三者side〉
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〈第三者side〉
今まで学園内の誰もが静観していた問題が、水面下で動き始めた。
グイドから仕入れた情報でメイシーとシンシアが手を打つ速さは尋常ではない。
特にシンシアは侯爵家のコネを最大限に利用して、瞬く間にブリトニーの悪行を集めてきた。
そこにメイシーがグイドからせしめてきたデニスの資料と付き合わせ、二人を黒だと断定。
「前から知り合いだったとか、気が合ったとか仰っても、やはりあの二人の距離感は頂けませんわ」
「それに、これ見ると……どう考えてもあの子がヤツを唆してる」
メイシーが鼻息荒く、デニスとブリトニーの出逢いとされる調査書をテーブルに叩きつけた。
シンシアはメイシーを刺激しないようにそっと手に取り目を通す。
これによれば、以前デニスがお忍びで街に出た時に初めて二人は顔を合わせたとされていて、ご丁寧にその時同行していた者の証言まで取ってあった。
「一緒にいたのはスミス伯爵の長男と、ジョンソン子爵の長男……ですか」
「学園ではヤツより先にそのどっちかと偶然再会してるのよね? えーと、茶髪に栗色の目? どっちかしら?」
「どっちって……髪色はともかく、二人とも瞳はブルー系……ですわよ?」
「え?」
二人はキョトンと顔を見合わせた。
髪色は変える方法は沢山あるだろうが、瞳の色を変えられるなどとは聞いた事がない。
「と言う事は? デニスはワザと『運命の再会』を仕組まれた?」
「でも、なぜそんな事を……?」
「可能性? ……でしょうか? あの方が居なければ『自分が辺境伯に選ばれるかも?』という……」
「まさか……でも、あり得なくもないか……」
しばし二人は考え込み、手がかりとなる人物が気になった。
「それなら……その人は誰かしら? 仕掛け人自らっていうのは考え難いけど、繋がりを辿れば……」
「茶髪と栗色の瞳……ですか? 多過ぎて誰だか分かりませんんわね」
「やっぱりそうよねぇ。だってそんなありふれた色じゃ……グイドの侍従だって当てはまっちゃうわ」
二人は肩をすくめてため息を吐く。
「ですわね。それにしても……あんなに分かり易いハニートラップ。普通は引っかかりませんでしょう?」
「……そうね。あれじゃあ、例え今回はステファニーが許したとしても、絶対次もあるわよ」
「否定できませんわね……」
「そのたびに毎回大変な思いをするなんて許せない。ステファニーがかわいそう過ぎる!」
「他家のことに口を挟むのは、はしたない事と思いますが……あの方に辺境伯は重荷ではありませんの?」
シンシアの沈痛な面持ちを前にメイシーが深く頷く。
そして心配そうにしながらも、疑問を投げかけた。
「ステファニーはアイツの事、好きって感じでは無かったわよね? 本当のところはどうなのかしら?」
「以前、あの方の事は夫と言うより、弟というか……家族だと思っていると聞いたことがあります」
「それなら、これがハニートラップでも、真実の愛でも関係ないわね。私ステファニーにはもっと素敵な旦那様が良いって思っていたの。いつまでも長引かせるより、もうハッキリ教えても良いんじゃないかしら?」
「……そうですわねぇ。何か陰謀めいたものが感じられるのが心配ですけど、噂好きのカレン辺りから伝わるより良いかもしれませんわね」
「それなら私、グイドにその『陰謀?』それに何か思い当たる事がないか聞いておくわ。
「でしたら、それが分かってから……それからステファニーに伝えましょう」
二人はまったく知らない。
その陰謀は様々な人々が関わっているが、そのうちの半分以上が自分の知り合いだとは……。
そしてその一端を担う者に、今から直接問い正そうとしているとは……。
今まで学園内の誰もが静観していた問題が、水面下で動き始めた。
グイドから仕入れた情報でメイシーとシンシアが手を打つ速さは尋常ではない。
特にシンシアは侯爵家のコネを最大限に利用して、瞬く間にブリトニーの悪行を集めてきた。
そこにメイシーがグイドからせしめてきたデニスの資料と付き合わせ、二人を黒だと断定。
「前から知り合いだったとか、気が合ったとか仰っても、やはりあの二人の距離感は頂けませんわ」
「それに、これ見ると……どう考えてもあの子がヤツを唆してる」
メイシーが鼻息荒く、デニスとブリトニーの出逢いとされる調査書をテーブルに叩きつけた。
シンシアはメイシーを刺激しないようにそっと手に取り目を通す。
これによれば、以前デニスがお忍びで街に出た時に初めて二人は顔を合わせたとされていて、ご丁寧にその時同行していた者の証言まで取ってあった。
「一緒にいたのはスミス伯爵の長男と、ジョンソン子爵の長男……ですか」
「学園ではヤツより先にそのどっちかと偶然再会してるのよね? えーと、茶髪に栗色の目? どっちかしら?」
「どっちって……髪色はともかく、二人とも瞳はブルー系……ですわよ?」
「え?」
二人はキョトンと顔を見合わせた。
髪色は変える方法は沢山あるだろうが、瞳の色を変えられるなどとは聞いた事がない。
「と言う事は? デニスはワザと『運命の再会』を仕組まれた?」
「でも、なぜそんな事を……?」
「可能性? ……でしょうか? あの方が居なければ『自分が辺境伯に選ばれるかも?』という……」
「まさか……でも、あり得なくもないか……」
しばし二人は考え込み、手がかりとなる人物が気になった。
「それなら……その人は誰かしら? 仕掛け人自らっていうのは考え難いけど、繋がりを辿れば……」
「茶髪と栗色の瞳……ですか? 多過ぎて誰だか分かりませんんわね」
「やっぱりそうよねぇ。だってそんなありふれた色じゃ……グイドの侍従だって当てはまっちゃうわ」
二人は肩をすくめてため息を吐く。
「ですわね。それにしても……あんなに分かり易いハニートラップ。普通は引っかかりませんでしょう?」
「……そうね。あれじゃあ、例え今回はステファニーが許したとしても、絶対次もあるわよ」
「否定できませんわね……」
「そのたびに毎回大変な思いをするなんて許せない。ステファニーがかわいそう過ぎる!」
「他家のことに口を挟むのは、はしたない事と思いますが……あの方に辺境伯は重荷ではありませんの?」
シンシアの沈痛な面持ちを前にメイシーが深く頷く。
そして心配そうにしながらも、疑問を投げかけた。
「ステファニーはアイツの事、好きって感じでは無かったわよね? 本当のところはどうなのかしら?」
「以前、あの方の事は夫と言うより、弟というか……家族だと思っていると聞いたことがあります」
「それなら、これがハニートラップでも、真実の愛でも関係ないわね。私ステファニーにはもっと素敵な旦那様が良いって思っていたの。いつまでも長引かせるより、もうハッキリ教えても良いんじゃないかしら?」
「……そうですわねぇ。何か陰謀めいたものが感じられるのが心配ですけど、噂好きのカレン辺りから伝わるより良いかもしれませんわね」
「それなら私、グイドにその『陰謀?』それに何か思い当たる事がないか聞いておくわ。
「でしたら、それが分かってから……それからステファニーに伝えましょう」
二人はまったく知らない。
その陰謀は様々な人々が関わっているが、そのうちの半分以上が自分の知り合いだとは……。
そしてその一端を担う者に、今から直接問い正そうとしているとは……。
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