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舞台裏
59.進み行く道①〈ブラッドリーside〉
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〈ブラッドリーside〉
そのあと俺がどうしたのかというと。
特に何かしようとはしなかった。
騎士科と家政科は隣の建物だし『普通に友だちとして話せたら良いな』くらいにしか思ってなかった俺は『グイドの友だち』と『メルシー嬢の友だち』なんだから、そのうち会って話す機会もあるだろうと、呑気に構えていたのだ。
しかしその予想は裏切られる。
入学したてでも騎士科の訓練は厳しく、演習で学外の荒地や森に入る合宿が度々行われていた。
だから中々ほかの科と交流できず、疲れてるから休みの日に遊びに行くのも億劫で、グイドですらまともにメイシー嬢と逢えてない。
それがやっと落ち着いてきたのは、入学して半年くらい経った頃だった。
「なぁグイド。メイシー嬢の友だちで、子爵の五男でも良いって言ってくれる子、いない?」
サミュエルの言葉にグイドが顔を顰めた。
顔にデカデカと『こいつ何言ってやがる』って書いてある気がして、俺もさすがにサミュエルを憐れんだ。
「サミュエル。お前、ここの家政科って何習っている所か知ってて言ってるんだろうな?」
「家政……うーん。よく分かんないけど、屋敷の管理とかそういうのができるように成るんだろ?」
「ほう。話は変わるが……サミュエルは将来どうなるつもりなんだ?」
「えーと、どっかの騎士団に入って……そのうち騎士伯でも貰えたらラッキーな感じか?」
何を聞かれているか分からないサミュエルが、それでもボソボソと答える。
それを意に介さず、グイドは俺にも視線を寄越した。
これは俺も答えろって事か?
「俺は……そうだな。一番良いのは近衛に入って手柄を立てる事だろうけど、それは難しいだろ?」
「手柄を立てるのが難しいのか? ブラッドリーでも?」
サミュエルが不思議そうに聞いてきた。
そのあと俺がどうしたのかというと。
特に何かしようとはしなかった。
騎士科と家政科は隣の建物だし『普通に友だちとして話せたら良いな』くらいにしか思ってなかった俺は『グイドの友だち』と『メルシー嬢の友だち』なんだから、そのうち会って話す機会もあるだろうと、呑気に構えていたのだ。
しかしその予想は裏切られる。
入学したてでも騎士科の訓練は厳しく、演習で学外の荒地や森に入る合宿が度々行われていた。
だから中々ほかの科と交流できず、疲れてるから休みの日に遊びに行くのも億劫で、グイドですらまともにメイシー嬢と逢えてない。
それがやっと落ち着いてきたのは、入学して半年くらい経った頃だった。
「なぁグイド。メイシー嬢の友だちで、子爵の五男でも良いって言ってくれる子、いない?」
サミュエルの言葉にグイドが顔を顰めた。
顔にデカデカと『こいつ何言ってやがる』って書いてある気がして、俺もさすがにサミュエルを憐れんだ。
「サミュエル。お前、ここの家政科って何習っている所か知ってて言ってるんだろうな?」
「家政……うーん。よく分かんないけど、屋敷の管理とかそういうのができるように成るんだろ?」
「ほう。話は変わるが……サミュエルは将来どうなるつもりなんだ?」
「えーと、どっかの騎士団に入って……そのうち騎士伯でも貰えたらラッキーな感じか?」
何を聞かれているか分からないサミュエルが、それでもボソボソと答える。
それを意に介さず、グイドは俺にも視線を寄越した。
これは俺も答えろって事か?
「俺は……そうだな。一番良いのは近衛に入って手柄を立てる事だろうけど、それは難しいだろ?」
「手柄を立てるのが難しいのか? ブラッドリーでも?」
サミュエルが不思議そうに聞いてきた。
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