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舞台裏

58.出逢い③〈ブラッドリーside〉

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〈ブラッドリーside〉



「おいおい、サミュエル。いくらブラッドリーだって、そろそろキレるぞ」



 頭を抱える俺を横目に、見ねたグイドがサミュエルを止めた。



「よく考えろよ。彼女はデニスの婚約者同然の令嬢なんだぞ?」

「それは知ってるよ?」

「だったら……もし彼女がブラッドリーと親しく話してたって噂が立って、それが元で喧嘩ケンカになったらどうなると思う?」

「え、喧嘩ケンカ? デニスとその子が?」

「「はぁ?」」



 同時ににらんだらサミュエルが「ん?」って言って考えた。



「おぉ! デニスがブラッドリーに喧嘩ケンカ吹っ掛けて来るってことか!?」



 なぜか一気に喜び出したサミュエルに、嫌な予感がする。

 隣を見ればグイドも渋い顔だ。



「しちゃえば良いだろ? 喧嘩ケンカ。俺たちが加勢すれば──あっちのヤツらで強いのデニスだけだぜ? 勝てる勝てる。絶対勝つ!」



 はぁ。

 グイドと一緒に天を仰いだ。



「そんなことしたら、メイシーが俺に口きいてくれなくなる」

「……その前に彼女だって嫌な思いをする」

「そうか? 彼女とも仲良くできるし、デニスも黙らせられるし、良い考えだと思ったんだけどなぁ」

「お前バカだろ?」



 グイドが言い切った。



 確かに騎士科で一番強い──ということは学園全体で一番と同義だが、そのデニスを負かしたとなれば一目置かれる存在にはなれるだろう。

 だからと言って、喧嘩ケンカの理由が『女の子の取り合い』とかで噂を広められたら……。



 デニスは良いよ、婚約者を守っただけだから。

 それより彼女にいわれの無い瑕疵かしが付いたら、どうやって償えば良いか分からない。

 それから俺は……。

 それだけで今までの評価は吹き飛び、評判は地に堕ちるだろうな。

 ……いや、奈落ならくの底に穴掘るかも。


 
 どうでもいいが、楽しそうに話すサミュエルが羨ましい。



 いや、あの調子で動いたら、後悔する未来しか見えないが……。

 でも、何も考えず思い通りに好き放題やってしまえたら、さぞかし気分が良いだろうとは思う。

 やらないけど……。



 そしてまったく説明する気の無い俺に代わって、グイドが一から話す事にしたらしい。



「お前は勝つって言ってるけど、負けたらどうする?」

「え゙……」



 サミュエルの目が泳ぐ。

 それに満足したグイドが鷹揚おうよううなずき話を続けた。



「彼女がデニスの事、どう思ってるかは知らないが、少なくとも家族として扱ってると、俺は思うよ」

「それで?」

「普通に考えて、自分の兄弟ボコられたのに『ブラッドリーは私の友達よ。だからこれからも仲良くしましょう!』とか。……なるか?」

「あ~。それは……無いな」

「……だよな」



 やっと分かってくれたとグイドは胸を撫で下ろした。

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