【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵

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舞台裏

56.出逢い①〈ブラッドリーside〉

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〈ブラッドリーside〉



 父上に褒められて何となく心が温かくなったが、それでも俺は手放して喜べない。

 それは俺に後ろめたい所があるからだ。



 * * * * *



 十五歳で学園に入学してしばらくの間、俺にはグイドとサミュエルくらいしか親しい友人がいなかった。

 だから必然的にアイツらと一緒に行動していて……。



「あ、メイシーだ。ちょっと待っててくれ」



 グイドがそう言って走って行った先に、彼女は居た。

 グイドと話す婚約者の斜め後ろで控えめにたたずんでいる女の子。

 なぜそのに目が行ったのかは分からない。

 例えるなら、まるでモノクロの世界の中で、そこだけ鮮やかに色付いているかのような……。

 俺にとってはそのくらい衝撃的な出逢いだった。



「グイドの婚約者ってあの子か。伯爵令嬢なんだろう?」

「……あぁ」



 俺の様子に気が付いていないサミュエルが、メイシー嬢の事を真剣に観察している。

 グイドはメイシー嬢を前に親しげに話していて、今しがた紹介された彼女の事など気にしてはいなさそうだ。



 グイドの婚約者の友だちって事は、彼女も伯爵家とかだろうか?

 アイツが名前を覚えて来てくれたら良いのにな。



 その時の俺の頭の中は、シャンパンゴールドに似た色素の薄い金髪に、紫水晶アメジストのような輝きの瞳を持つ美少女の事で埋め尽くされていた。



 * * * * *



 あの衝撃の出逢いがあって──あっちはまだ俺のことなんか知らないけど……。

 俺にとってはあれが出逢いだ。間違ってない。

 とにかく俺は彼女のことをグイドから聞き出した。



 名前は、ステファニー・グランデ嬢。



 彼女は家政科の一年。

 この国の南を守る辺境伯の令嬢だった。

 そう。



 グランデ辺境伯の直系の孫娘。



 しかも後継者は彼女で、すでに遠縁のアンバー子爵三男デニスが許婚いいなずけだったのだ。
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