【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵

文字の大きさ
上 下
44 / 79
本編

44.ブリトニーは?②〈第三者side〉

しおりを挟む
〈第三者side〉



 カレンの語った内容は……。



 この国で一番の富豪と言われる準男爵の奥方が決まったという話だった。

 その準男爵は御歳おんとし五十五才、最近息子に商売を任せ隠居を始めたらしく、若い後妻を探していたそうだ。

 しかしこの男、あまり評判がよろしくない。

 今までに四人の妻がいたそうで、そのいずれもが、三十路みそじを前に離縁か死別している。

 若い女が好きらしく、妻がいないと気まぐれでメイドに手を付けるため、親族が常に若い妻を用意しているらしいという噂がまことしやかに流布るふされている。



 どうやら妻をひもで縛り。

 手やムチで尻を打ち。

 時にはローソクを垂らしたりするらしい。



 ここまで聞いた人の中には、そっと顔をらしたり、目を泳がせたり、明後日あさってのほうを向く令嬢もいたのだけど……。

 これについて意見や感想を述べるものは皆無かいむだった。

 しかしここに、顔を強張こわばらせ固まっている者が、若干じゃっかん一名存在する。



「それ、本当なの?」

「いや、噂よ。あくまでも噂」

「それって普通!?」

「え? いやいや、普通じゃないでしょ!?」



 慌ててカレンが否定するが、幼いころに両親を相次あいついで亡くしているステファニーには、普通の夫婦とはどのように家で過ごすのかが分からない。

 

「何だか私、結婚が怖くなってきたわ……」

「そんなのしないわよ? 異常なの! だから今こんなに騒がれて、噂が流れてるんでしょ? ねぇ?」



 カレンは慌てて否定して、今度は周囲にも助けを求めた。



「ステファニー、大丈夫よ。そんな事、ブラッドリーはしないわよ。……たぶん」

「ブラッドリーはステファニー優しいでしょう? ……きっと」



 二人の脳裏にはチラッと、黒いオーラが立ち昇るブラッドリーの姿がぎったが、アレをステファニーが見る事は無いはずだと思い直す。



「そうよ。私の婚約者はブラッドだもの。彼は優しいから大丈夫よね?」

「うん」

「そうそう」

「そうですわ」



 ようやく落ち着いたステファニーに一同が安堵あんどの息をらす。

 次からが本題だ。
しおりを挟む
script?guid=on
感想 36

あなたにおすすめの小説

『親友』との時間を優先する婚約者に別れを告げたら

黒木メイ
恋愛
筆頭聖女の私にはルカという婚約者がいる。教会に入る際、ルカとは聖女の契りを交わした。会えない間、互いの不貞を疑う必要がないようにと。 最初は順調だった。燃えるような恋ではなかったけれど、少しずつ心の距離を縮めていけたように思う。 けれど、ルカは高等部に上がり、変わってしまった。その背景には二人の男女がいた。マルコとジュリア。ルカにとって初めてできた『親友』だ。身分も性別も超えた仲。『親友』が教えてくれる全てのものがルカには新鮮に映った。広がる世界。まるで生まれ変わった気分だった。けれど、同時に終わりがあることも理解していた。だからこそ、ルカは学生の間だけでも『親友』との時間を優先したいとステファニアに願い出た。馬鹿正直に。 そんなルカの願いに対して私はダメだとは言えなかった。ルカの気持ちもわかるような気がしたし、自分が心の狭い人間だとは思いたくなかったから。一ヶ月に一度あった逢瀬は数ヶ月に一度に減り、半年に一度になり、とうとう一年に一度まで減った。ようやく会えたとしてもルカの話題は『親友』のことばかり。さすがに堪えた。ルカにとって自分がどういう存在なのか痛いくらいにわかったから。 極めつけはルカと親友カップルの歪な三角関係についての噂。信じたくはないが、間違っているとも思えなかった。もう、半ば受け入れていた。ルカの心はもう自分にはないと。 それでも婚約解消に至らなかったのは、聖女の契りが継続していたから。 辛うじて繋がっていた絆。その絆は聖女の任期終了まで後数ヶ月というところで切れた。婚約はルカの有責で破棄。もう関わることはないだろう。そう思っていたのに、何故かルカは今更になって執着してくる。いったいどういうつもりなの? 戸惑いつつも情を捨てきれないステファニア。プライドは捨てて追い縋ろうとするルカ。さて、二人の未来はどうなる? ※曖昧設定。 ※別サイトにも掲載。

もうあなた様の事は選びませんので

新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト男爵はエリクシアに対して思いを告げ、二人は婚約関係となった。しかし、ロベルトはその後幼馴染であるルアラの事ばかりを気にかけるようになり、エリクシアの事を放っておいてしまう。その後ルアラにたぶらかされる形でロベルトはエリクシアに婚約破棄を告げ、そのまま追放してしまう。…しかしそれから間もなくして、ロベルトはエリクシアに対して一通の手紙を送る。そこには、頼むから自分と復縁してほしい旨の言葉が記載されており…。

あんな妹とそんなに結婚したいなら、どうぞご自由に。

法華
恋愛
貴族クインシーは、政略結婚で婚約させられた婚約者サラ・エースワットを冤罪まで被せて婚約破棄し、サラの妹ミシェルと婚約した。 だが、そこまでして手に入れたミシェルはどうしようもなく問題のある女だった。 クインシーはサラを取り戻そうとするが、サラは既に他の貴族と結婚してしまっていた。 ※三話完結

【完結】真実の愛を見出した人と幸せになってください

紫崎 藍華
恋愛
婚約者の態度は最初からおかしかった。 それは婚約を疎ましく思う女性の悪意によって捻じ曲げられた好意の形。 何が真実の愛の形なのか、理解したときには全てが手遅れだった。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です

渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。 愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。 そんな生活に耐えかねたマーガレットは… 結末は見方によって色々系だと思います。 なろうにも同じものを掲載しています。

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

処理中です...