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本編
33 .専属治癒士①
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あの決闘のことは、やっぱり噂になった。
と言ってもグランデ辺境伯家の中のことで、外部には一切漏れていない。
それでもあの事がブラッドの評判を上げ、彼が私の婚約者になる事に反対する人がいなくなったのは驚きである。
ただ困った事に、ブラッドの人気が一部で予想以上に上がってしまった。
具体的に言うと、ご令嬢に……。
せっかくブリトニーが居なくなったと思ったのに、今度は身内の年若い女性からロックオンされているのだ。
「ブラッドリー殿のような若い男性なら、専属の治癒士が必要ではなくて?」
「そうね。まさかステファニー様が戦場や狩場に付き従う訳には参りませんものねぇ」
治癒士というのは治癒魔法が使える女性の事だ。
高位の辺境騎士であれば、希望によって専属の治癒士を持つことも可能なのだけど……。
専属というのは、戦いの場で昂った体を癒す事も含んでいる。
明け透けに言うなら、愛妾を連れて行くのと同義である。
代々治癒の能力がある女性を積極的に嫁に取って来た我が辺境伯一族には、当然その能力がある年頃の令嬢は大勢いる。
そんな彼女たちの関心は今『誰がブラッドの専属治癒士になるか』に集まっていた。
不愉快極まりないが、それは仕方ないことでもあって、私もハッキリと断る事ができず困っている。
今もサロンに向かった私はその入り口の手前で足が止まってしまった。
「ブラッドリー殿はどんな女性がお好みかしら?」
「ステファニー様とは真逆な女性が良いのではない?」
「それとも似た様な方のほうが良いのではなくて?」
「やっぱり、ステファニー様と気の合う方のほうが、あとあとトラブルにならなくて良いわよ」
「世継ぎはステファニー様が産んだ御子なのだから、ブラッドリー殿は我慢なさらなくても、好きにして良いのじゃない?」
「そうね。先々代の女辺境伯の時は、お婿さんが元気過ぎて、当主自ら選んだ女性を幾人も充てがったって聞きましたし……」
そんな話が部屋の中から漏れ聞こえてくる。
まだ婚約したばかりの婚約者を値踏みされていると知り、ブラッドの攻略方法を話し合っている場に踏み込む事はさすがにできなかった。
と言ってもグランデ辺境伯家の中のことで、外部には一切漏れていない。
それでもあの事がブラッドの評判を上げ、彼が私の婚約者になる事に反対する人がいなくなったのは驚きである。
ただ困った事に、ブラッドの人気が一部で予想以上に上がってしまった。
具体的に言うと、ご令嬢に……。
せっかくブリトニーが居なくなったと思ったのに、今度は身内の年若い女性からロックオンされているのだ。
「ブラッドリー殿のような若い男性なら、専属の治癒士が必要ではなくて?」
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治癒士というのは治癒魔法が使える女性の事だ。
高位の辺境騎士であれば、希望によって専属の治癒士を持つことも可能なのだけど……。
専属というのは、戦いの場で昂った体を癒す事も含んでいる。
明け透けに言うなら、愛妾を連れて行くのと同義である。
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「世継ぎはステファニー様が産んだ御子なのだから、ブラッドリー殿は我慢なさらなくても、好きにして良いのじゃない?」
「そうね。先々代の女辺境伯の時は、お婿さんが元気過ぎて、当主自ら選んだ女性を幾人も充てがったって聞きましたし……」
そんな話が部屋の中から漏れ聞こえてくる。
まだ婚約したばかりの婚約者を値踏みされていると知り、ブラッドの攻略方法を話し合っている場に踏み込む事はさすがにできなかった。
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