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本編

20.喧嘩上等!②

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 ただ、ブラッドの暴言はお二人さんにもバッチリ聞こえていたようだ。



「ローマン様、デニスだってやればできます! ずーっとステファニーさんの婚約者だったんです。それが、たった一回の失敗で、今までのことが全部無しだなんて、そんなの公平じゃないでしょう? だから、彼にチャンスをあげてもらえませんか? お願いします」



 私がダメだったからって、ブラッドに言っても無理だと思うの。

 それにしてもあれだけ負のオーラ撒き散らしていたのに、よくブラッドに話しかける気になれたわね。

 そーか、分からないのか!

 空気読めないって、ある意味最強だったのね……。



「いいよ」

「ブラッド?」

「本当?」

「ヨシ!」



 私は唖然とし、ブリトニーは歓喜して、デニスはガッツポーズを決めた。

 そんな私たちにブラッドは完璧な微笑ほほえみをたたえてゆっくりと口を開く。



「デニスは口で言って聞かせても分からないみたいだしな」

「なに!?」



 この嫌味はデニスでも分かったらしい。

 それをブリトニーが「剣術で決着できるんだから」と言って宥めたのだが、ブラッドがまだ微笑んだままなのを見てまた怒りを振り返した。


「ニヤニヤ笑ってんじゃねぇ」

「失礼だな。元からこの顔だよ」

「そんな訳ねぇだろ? 学園ではずっと仏頂面してんだろ?」

「授業中や実習中にヘラヘラしてたら、それこそバカだよ」

「くっそー! 屁理屈へりくつばっか抜かしやがって!」

「キミは仮にも貴族の子弟だろ? その言葉遣いはどうかと思うけどな」

「うるせー! お前だって学園で口悪いだろーが」

「いや、俺だって学園外ではわきまえるよ」



 もうここまでくると、ただの口喧嘩だ。

 確かに学園の騎士科は平民も多く、貴族の口調で話すほうが揶揄からかわれることもあると聞く。

 だからって家に帰って来たら普通はもとに戻すものだ。

 ましてやデニスは辺境伯になりたいらしいのだから、もっと気を付けなければいけないと思うのだけど……。

 私がそんなことを考えているうちに、話は良く無い方向に転がっていた。

 それまでブラッドにやり込められ、黙り込んでいたデニスが叫ぶ。



「何だよ。ステファニーとずっと一緒にいたのは俺だろ!? お前になんか渡さない!」

「ふーん。自分は浮気しといて良く言うな。こっちこそステフィーは渡さない!」



 いったいどんな流れなのか理解できないけど、これは不味そう。

 見たことないほど怒っているブラッドを私は何とかして止めようとした。

 だけど声をかけようとして、一瞬だけ躊躇ためらってしまう。

 その一瞬の隙が取り返し不可能となるだなんて思いもせず……。



「もう頭きた!」



 デニスが何か白い物を握りしめ、それをブラッドに投げつけた。

 それはブラッドの首元に当たり足元に落ちる。



「白い手袋……」



 それを相手に投げ付ける意味は……。



決闘デュエルだ!」

「上等だ。受けて立つ」



 私はブラッドの袖を強く掴み、何も言えずに立ち尽した。
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