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本編
18.本音を言っても良いかしら?②
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私は長年に渡り心の中に留めていた気持ちを解放することにした。
「聞こえなかった? デニスのお守りはものすごく大変だったって言ったの」
「ななな、何を言ってるんだ!」
「だから、結婚の約束がなくなって、私の役目をブリトニーさんが代わってくれるって聞いて、本当に嬉しかったのよ?」
「ステファニーさん。それ、どういう意味!?」
「う、嘘だ! だってステファニー、お前はいつだって『デニスはしょうがないわね』って、笑って俺の世話を焼いてくれてただろ?」
「そりゃあ、笑うわよ。せっかく私が想定内なら何とかなるようにって、こっそりお膳立てしてるのに、その予想の斜め上を行く失敗や問題を起こすんだもの。もう笑うしかないでしょう?」
信じられないと、こぼれ落ちそうなほど目を見開く彼らを前に、私が肩をすくめてブラッドに大変さをアピールすれば、頭を撫でて慰めてくれた。
それは『キミは悪くないよ。よくがんばったね。良い子いい子』って言ってくれてるみたいで……。
その優しさが直に伝わってきて心地良い。
そうだ。
私にはこういう癒しが必要だったんだ。
がんばった私を褒めて、癒して、そして甘えさせてくれる。
私……そんな人と結婚したかったんだわ。
こんな時だけど、ブラッドの素晴らしさを実感できるなんて……。
デニスもたまには役に立つのね。
「お、俺をバカにしやがって!」
あら、こんな時ばっかり勘が良いわね。
変なところで感心していると……。
「そうよ、ステファニーさん。それは言い過ぎでしょう」
激しく怒るデニスに抱き付き、彼を宥めながらブリトニーが口を出してきた。
「ステファニーさん! 本当に良いんですか? 幼なじみの婚約者で、ずーっと一緒だったんだから、欠点も知っていて当然だけど。良い所もたくさんあったでしょう? だからそれを思い出して?」
「デニスの良いところ?」
私は思わず考え込んでしまった。
本当に、咄嗟に何も出てこないなんて、そんなわけないわよね?
ダメダメ、現実逃避しても意味ないわよ。
何か一つくらい……。
「うーん……」
「何か言えよ。俺の良い所なんていっぱいあるだろう!」
「そうねぇ。多分あるはずなのよねぇ……」
デニスは怒りで震え出し、ブラッドは何かに堪えて肩を震わせた。
何にも出てこない私と怒り心頭のデニスに焦りを覚えたのか、ブリトニーは慌てて胸の前で手を組み潤んだ瞳で訴えてきた。
「デニスが私を好きになったことが許せないの? だったらそれは私が謝るわ。私が好きだって言わなかったら……そうしたらデニスだって……」
「いえいえ。そうじゃないわ。それにもう、私にはブラッドっていう素敵な婚約者が居るのだし、むしろ感謝しているくらいなんだから」
「そんなの……そんな強がりは言わなくても良いのよ? 私、デニスの一番はあなたにお返しするわ。大丈夫。今からだって間に合うわ」
グイグイ来るブリトニーに私は気圧されていた。
「聞こえなかった? デニスのお守りはものすごく大変だったって言ったの」
「ななな、何を言ってるんだ!」
「だから、結婚の約束がなくなって、私の役目をブリトニーさんが代わってくれるって聞いて、本当に嬉しかったのよ?」
「ステファニーさん。それ、どういう意味!?」
「う、嘘だ! だってステファニー、お前はいつだって『デニスはしょうがないわね』って、笑って俺の世話を焼いてくれてただろ?」
「そりゃあ、笑うわよ。せっかく私が想定内なら何とかなるようにって、こっそりお膳立てしてるのに、その予想の斜め上を行く失敗や問題を起こすんだもの。もう笑うしかないでしょう?」
信じられないと、こぼれ落ちそうなほど目を見開く彼らを前に、私が肩をすくめてブラッドに大変さをアピールすれば、頭を撫でて慰めてくれた。
それは『キミは悪くないよ。よくがんばったね。良い子いい子』って言ってくれてるみたいで……。
その優しさが直に伝わってきて心地良い。
そうだ。
私にはこういう癒しが必要だったんだ。
がんばった私を褒めて、癒して、そして甘えさせてくれる。
私……そんな人と結婚したかったんだわ。
こんな時だけど、ブラッドの素晴らしさを実感できるなんて……。
デニスもたまには役に立つのね。
「お、俺をバカにしやがって!」
あら、こんな時ばっかり勘が良いわね。
変なところで感心していると……。
「そうよ、ステファニーさん。それは言い過ぎでしょう」
激しく怒るデニスに抱き付き、彼を宥めながらブリトニーが口を出してきた。
「ステファニーさん! 本当に良いんですか? 幼なじみの婚約者で、ずーっと一緒だったんだから、欠点も知っていて当然だけど。良い所もたくさんあったでしょう? だからそれを思い出して?」
「デニスの良いところ?」
私は思わず考え込んでしまった。
本当に、咄嗟に何も出てこないなんて、そんなわけないわよね?
ダメダメ、現実逃避しても意味ないわよ。
何か一つくらい……。
「うーん……」
「何か言えよ。俺の良い所なんていっぱいあるだろう!」
「そうねぇ。多分あるはずなのよねぇ……」
デニスは怒りで震え出し、ブラッドは何かに堪えて肩を震わせた。
何にも出てこない私と怒り心頭のデニスに焦りを覚えたのか、ブリトニーは慌てて胸の前で手を組み潤んだ瞳で訴えてきた。
「デニスが私を好きになったことが許せないの? だったらそれは私が謝るわ。私が好きだって言わなかったら……そうしたらデニスだって……」
「いえいえ。そうじゃないわ。それにもう、私にはブラッドっていう素敵な婚約者が居るのだし、むしろ感謝しているくらいなんだから」
「そんなの……そんな強がりは言わなくても良いのよ? 私、デニスの一番はあなたにお返しするわ。大丈夫。今からだって間に合うわ」
グイグイ来るブリトニーに私は気圧されていた。
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