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本編

14.辺境伯はだれが継ぐ?②

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 私はデニスが話に付いて来られているか、様子を見つつ進めて行く。



「それで、お父様の子どもは私だけだったの。でも私は女の子だわ」

「あぁ、だから一族の男子から俺が選ばれたんだろう?」

「うーん。結果だけ言うとそうわね」



 なぜかデニスが自信満々で、偉そうに踏ん反り返っている。

 私の腰に回されたブラッドの腕に力が入ったので、そっとでてなだめたが、その表情は険しくなる一方だ。



「だったら、やっぱり俺がこの部屋ってのは間違いだろう?」



 今度はブリトニーから勝ち誇った微笑ほほえみをもらってしまった。

 意味が分からない……。



「なんでそうなるの……」

「はぁ? だって次期辺境伯なんだから、東棟の部屋以外あり得ないよ」



 はぁー。



 今度は堪え切れずに思いっきりため息が出た。

 どうしたらこの国の貴族の継承順位をその頭に叩き込むことができるのかしら?

 ホント、この人どうなってるの?

 その頭一回かち割って中身を確かめてみたい……。

 私はこめかみを揉みつつ、詳しく解説を試みる。



「よく聞いて? 辺境伯のおじい様に私という孫がいるの。だけど女子だから直接継ぐ訳にはいかないでしょう?」

「だから俺が継ぐんだろ?」

「いいえ違うわ」

「違う? 何が違うんだよ?」



 うんざりして否定すると、初めてデニスが不思議そうな顔をして首を傾げた。

 金色の髪が揺れ、藍玉アクアマリンの瞳が困ったように曇る。

 あら、ブリトニーがうっとりして、見惚みとれてるわ。

 なるほど、彼女はまだ耐性がないのね……。

 このデニスってヤツは、無駄に見目良い容姿を受け継いでるから、こういう仕草をされるととても絵になる。

 今までこの容姿で何回誤魔化されて来ただろう?

 でも婚約者じゃなくなった今、『可愛いからまあ良いか』だなんて、私はもうほだされたりしないわよ?



「辺境伯を継ぐのは、私が将来産む息子の父親よ? それも子供が成人するまでの限定措置なの」

「ん? だから、結局は俺が継ぐんだろ?」



 ミシッ……。

 椅子の肘掛けをブラッドが思い切り握ったらしい。

 怖くて見れないけど、冷気で背筋がゾクゾクする。



「なぜ? デニスは私とは結婚しないんでしょう? そしたら私の子供の父親になんてなれないじゃない」

「ん? あ、そうか……」



 のほほんと答えるデニスを見て私は脱力する。

 ブラッドも馬鹿ばかしく思ったのか、大きく鼻から息を吐き出した。
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