【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵

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本編

9.新しい婚約者②

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従兄弟いとこ含め五人の中から選ぶって聞いたから、ほかの四人は訓練の時にこっぴどく負かしてきた」

「えっ……大丈夫なの? その人たち……」



 サミュエルとグイドからの情報によれば、ブラッドは剣術も体術も相当に強いらしい。

 その彼が『こっぴどく』と言うのだから穏やかではないだろう。




「大丈夫じゃないか?」

「あんまり無茶はしないでね」

「ステフィーが手に入るなら、少しくらい無茶もするさ」

「もう……」

「本当だよ。ステフィーは?」

「え?」

「俺の奥さんになるのは嫌?」



 真剣な目で見詰められてジワジワと頬が火照っていく。



「そんなことない……」

「俺は、ステフィーと結婚したい。家同士の繋がりが必要なのは確かだけど、でもそれより何より、俺はキミが好きだ」
 
「……私は……」

「良いよ。今はまだ。でも、俺はステフィーが好きだから結婚したい。それは忘れないで?」

「あの……気になってるの。ブラッドが……」

「え?」

「だから……ブラッドのこと、ステキだなって思ってるから……だから……」



 その先の言葉は言えなかった。

 ブラッドに抱きしめられたから。



「……嬉しい。今はそれで十分だ」



 そう言って、ブラッドは頬にキスした。

 ただの婚約者同士のキスにしては吐息が熱くて、背中までゾクゾクするようなキスで。

 彼の言った事が本当だと信じないわけにはいかないと思った。



「ちょっと……びっくりしてるの」

「あ、ごめん……」

「そうじゃなくて。ブラッドが私を……だなんて、思ってなくて……なんだかまだ実感が湧かなくて。だから……ゆっくり仲良くなりたいって思ってる」

「……分かった。でも、少しづつなら良い?」

「……うん」



 ブラッドが私の顔色をうかがいつつ、抱きしめ直して……こめかみやおでこにキスを落とす。



「あ、え? これ……ゆっくり……?」

「うん。……練習」

「れ、練習!?」

「政略結婚だなんて、絶対思われたくないんだ」



 そう言われると止めにくい。

 両家の間では結婚の条件とか取り決めとかがされているから、ほとんどの人に政略結婚だと認識されるだろう。

 それをくつがえして恋愛関係があると示すには、本人たちがよっぽど仲良く見せる以外方法がない。



「……お手柔らかに」



 私は最大限の譲歩をするのだった。

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