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帰国
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数日ぶりに帰ってきたレディーナ王国は、国全体がざわついているように思えた。街を往来する人々の表情も、陰りを帯びている。
まさか、国を揺るがすほどの事態が発生しているのでは。アニュエラとシェイルは王宮へと急いだ。
宮内にはどういうわけか、近隣諸国の要人たちの姿があった。その中には二人と旧知の間柄の者もいるが、共通しているのは、皆深刻そうな顔付きをしているということだ。
「何があったのかしら……」
まるで蜂の巣をつついたような喧噪の中で、立ち尽くす二人。そんな彼らへ一人の男が歩み寄る。
「ああ、帰ってきたかお前たち」
「お兄様!」
見知った人物との再会に、アニュエラは安堵で表情を緩ませた。
「無事に帰って来てくれてよかったよ。帝国の奴らのことだ。お前たちを人質にして、理不尽な要求をふっかけてくる可能性もあったからな」
ドミニクも安心したような笑みを浮かべて、シェイルへと視線を移す。
「よくぞ妹を守ってくれた。感謝するぞ」
「いえ、私は何もしておりません。それより、この騒ぎはいったい何ですか? まさか、陛下の身に何か……」
「いや、陛下はご健在だ。だが、これから心労で倒れる予感がするが」
ドミニクは苦笑して、含みのある物言いをする。目下の不安は解消されたものの、新たな疑問が生まれた。一向に事態が呑み込めずにいる妹夫婦に、ドミニクは深い溜め息をついて語り出す。
「お前たちが帝国に行っている間に、ミジュームがえらいことになってな」
「ミジュームが?」
「ノーフォース公爵の殺害した犯人が捕まった」
「本当ですの?」
アニュエラの顔がさっと強張る。シレネ曰く、彼の死にアグニ―ル帝国は無関係だという。
『私はノーフォース公爵宛てに書状を送りました。ミジューム国王夫妻の謝罪を要求する旨をしたためたものです。あの方なら了承して、あの二人を差し出してくれると思っていたのですが……』
要求を呑めば、慰謝料と引き換えにサディアスを釈放するつもりだったという。だが、返ってきたのは、嘆願書とは名ばかりの抗議文。
激怒した皇帝はそれを破り捨て、ミジューム王国に宣戦布告を出したという。そのため、シレネは嘆願書の中身を確認していなかった。だが皇帝によると、サディアスの非礼を詫びながらも、シレネが息子を誘惑したのではないかと疑うような文面だったそうだ。
『ですから、私たちもノーフォース公爵が殺されたという情報を掴んだ時は、驚きました』
アグニール帝国による犯行ではないのなら、いったい誰が。帰りの場所で、アニュエラたちは議論を続けたものの、結論は出なかったのだ。
「公爵を殺したのは、王妃だ」
まさか、国を揺るがすほどの事態が発生しているのでは。アニュエラとシェイルは王宮へと急いだ。
宮内にはどういうわけか、近隣諸国の要人たちの姿があった。その中には二人と旧知の間柄の者もいるが、共通しているのは、皆深刻そうな顔付きをしているということだ。
「何があったのかしら……」
まるで蜂の巣をつついたような喧噪の中で、立ち尽くす二人。そんな彼らへ一人の男が歩み寄る。
「ああ、帰ってきたかお前たち」
「お兄様!」
見知った人物との再会に、アニュエラは安堵で表情を緩ませた。
「無事に帰って来てくれてよかったよ。帝国の奴らのことだ。お前たちを人質にして、理不尽な要求をふっかけてくる可能性もあったからな」
ドミニクも安心したような笑みを浮かべて、シェイルへと視線を移す。
「よくぞ妹を守ってくれた。感謝するぞ」
「いえ、私は何もしておりません。それより、この騒ぎはいったい何ですか? まさか、陛下の身に何か……」
「いや、陛下はご健在だ。だが、これから心労で倒れる予感がするが」
ドミニクは苦笑して、含みのある物言いをする。目下の不安は解消されたものの、新たな疑問が生まれた。一向に事態が呑み込めずにいる妹夫婦に、ドミニクは深い溜め息をついて語り出す。
「お前たちが帝国に行っている間に、ミジュームがえらいことになってな」
「ミジュームが?」
「ノーフォース公爵の殺害した犯人が捕まった」
「本当ですの?」
アニュエラの顔がさっと強張る。シレネ曰く、彼の死にアグニ―ル帝国は無関係だという。
『私はノーフォース公爵宛てに書状を送りました。ミジューム国王夫妻の謝罪を要求する旨をしたためたものです。あの方なら了承して、あの二人を差し出してくれると思っていたのですが……』
要求を呑めば、慰謝料と引き換えにサディアスを釈放するつもりだったという。だが、返ってきたのは、嘆願書とは名ばかりの抗議文。
激怒した皇帝はそれを破り捨て、ミジューム王国に宣戦布告を出したという。そのため、シレネは嘆願書の中身を確認していなかった。だが皇帝によると、サディアスの非礼を詫びながらも、シレネが息子を誘惑したのではないかと疑うような文面だったそうだ。
『ですから、私たちもノーフォース公爵が殺されたという情報を掴んだ時は、驚きました』
アグニール帝国による犯行ではないのなら、いったい誰が。帰りの場所で、アニュエラたちは議論を続けたものの、結論は出なかったのだ。
「公爵を殺したのは、王妃だ」
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