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加害者と被害者
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その後、すぐにレディーナ国王と王妃が駆けつけた。
「サディアス王太子殿下はどこにおられる? 話がしたい」
国王は穏やかな口調で臣下たちに命じているが、その顔は険しい。
王妃は泣きじゃくる娘を抱き締めながら、アニュエラに謝罪をしていた。
「娘を守ってくださってありがとう。そしてごめんなさい」
「謝るのは私のほうですわ。ミリア妃の暴挙を止めることが出来ませんでした」
「それは王太子殿下のお仕事でしょう? ……やはりあの二人を招待したのは、間違いだったわね」
サディアスは人混みに紛れながら、彼女たちの会話に聞き耳を立てていた。
(王妃の言い方は何だ? 本来は私たちを招待するつもりではなかったのか? 小国とはいえ、一国の王族をないがしろにしてもいいと思っているのか……?)
疎外感を抱いていると、王妃はその理由をも語り始めた。
「クレイラー会長からお話を伺ってはいたの。あの二人には気を付けるようにと。多少の失言程度は見逃すつもりだったけれど、まさかここまでだなんて……」
最後まで話を聞かず、サディアスはそっと会場を後にする。顔を見られないよう、俯きながら。
しかし廊下を出たところで、兵士たちに取り囲まれてしまった。
「ミジューム王国のサディアス王太子殿下でございますね? 別室までご同行願えますか」
「み、道を開けろ、招待客にこのような扱いをしていいと思っているのか!」
「申し訳ございません。しかし、この場から逃げ出そうとしているようにお見受けしましたので」
「逃げてなどいない……!」
本当だ。隣国で逃げ場などないのは分かり切っている。
今はただ、国王と王妃への弁解を考える時間が欲しかっただけだ。しかしそんな言い分が通用するはずもなく、サディアスは会議室のような部屋に押し込められた。
拘束はされなかったが、部屋の入り口には見張りが立ち、外に出ることは叶わなかった。
それから暫く経った頃。部屋の扉が開いた。
レディーナ国王と王妃、その側近たち。そして新しいドレスに着替えたアニュエラが入室する。
「ア、アニュエラ……?」
サディアスは愕然とした。
アニュエラはこちらへ軽く会釈をすると、レディーナ王国の側近たちの隣に座ったのだ。
「君はミジューム王国の人間だろう。何故、私の隣に座らない?」
「そう仰られましても……」
アニュエラはちらりとレディーナ国王へ視線を向けた。
「アニュエラ妃は被害者だ。こちら側の席に決まっているだろう」
国王の説明は納得のいかないものだった。
それではまるで、サディアスも加害者側と言っているようなものだ。
被害者というなら、自分もそれに当てはまる。こうしてミリアの暴走に巻き込まれたのだから。
張り詰めた空気の中、レディーナ王国の臣下にいくつかの質問をされた。
「ミリア妃を会場に残し、殿下はどちらにいらしゃったのですか?」
「……廊下におりました」
「理由をお聞きしても?」
「それは……」
アニュエラを叱り付けるため、などとは口が裂けても言えなかった。
彼女をちらりと見やるが、我関せずといった様子で目を合わせようとすらしない。
「……少し気分が悪くなってしまい、外の空気を吸いに」
「左様ですか。何故ミリア妃もお連れにならなかったのですか?」
「妻は夜会をとても楽しんでおりました。ですから、一人でも寂しくないだろうと……」
サディアスがたどたどしく答えると、臣下は一瞬呆れたような表情を浮かべた。しかしすぐに表情を切り替えて、次の質問をする。
「では、これが一番重要なのですが……ミリア妃は、レディーナ語をきちんとご習得されていらっしゃいましたか?」
「……? もちろん今夜のために習得しました」
「……そうですか」
冷ややかな声だった。
レディーナ語がトラブルの原因だったのだろうか。サディアスが尋ねようとした時、ドアが数回ノックされた後に開いた。
兵士に連れられてミリアが入ってくる。
酒気が抜けたのだろう。顔からは赤みが幾分か引いている。
しかし罪人のような扱いが不満なのか、不貞腐れたような表情をしていた。
「サディアス王太子殿下はどこにおられる? 話がしたい」
国王は穏やかな口調で臣下たちに命じているが、その顔は険しい。
王妃は泣きじゃくる娘を抱き締めながら、アニュエラに謝罪をしていた。
「娘を守ってくださってありがとう。そしてごめんなさい」
「謝るのは私のほうですわ。ミリア妃の暴挙を止めることが出来ませんでした」
「それは王太子殿下のお仕事でしょう? ……やはりあの二人を招待したのは、間違いだったわね」
サディアスは人混みに紛れながら、彼女たちの会話に聞き耳を立てていた。
(王妃の言い方は何だ? 本来は私たちを招待するつもりではなかったのか? 小国とはいえ、一国の王族をないがしろにしてもいいと思っているのか……?)
疎外感を抱いていると、王妃はその理由をも語り始めた。
「クレイラー会長からお話を伺ってはいたの。あの二人には気を付けるようにと。多少の失言程度は見逃すつもりだったけれど、まさかここまでだなんて……」
最後まで話を聞かず、サディアスはそっと会場を後にする。顔を見られないよう、俯きながら。
しかし廊下を出たところで、兵士たちに取り囲まれてしまった。
「ミジューム王国のサディアス王太子殿下でございますね? 別室までご同行願えますか」
「み、道を開けろ、招待客にこのような扱いをしていいと思っているのか!」
「申し訳ございません。しかし、この場から逃げ出そうとしているようにお見受けしましたので」
「逃げてなどいない……!」
本当だ。隣国で逃げ場などないのは分かり切っている。
今はただ、国王と王妃への弁解を考える時間が欲しかっただけだ。しかしそんな言い分が通用するはずもなく、サディアスは会議室のような部屋に押し込められた。
拘束はされなかったが、部屋の入り口には見張りが立ち、外に出ることは叶わなかった。
それから暫く経った頃。部屋の扉が開いた。
レディーナ国王と王妃、その側近たち。そして新しいドレスに着替えたアニュエラが入室する。
「ア、アニュエラ……?」
サディアスは愕然とした。
アニュエラはこちらへ軽く会釈をすると、レディーナ王国の側近たちの隣に座ったのだ。
「君はミジューム王国の人間だろう。何故、私の隣に座らない?」
「そう仰られましても……」
アニュエラはちらりとレディーナ国王へ視線を向けた。
「アニュエラ妃は被害者だ。こちら側の席に決まっているだろう」
国王の説明は納得のいかないものだった。
それではまるで、サディアスも加害者側と言っているようなものだ。
被害者というなら、自分もそれに当てはまる。こうしてミリアの暴走に巻き込まれたのだから。
張り詰めた空気の中、レディーナ王国の臣下にいくつかの質問をされた。
「ミリア妃を会場に残し、殿下はどちらにいらしゃったのですか?」
「……廊下におりました」
「理由をお聞きしても?」
「それは……」
アニュエラを叱り付けるため、などとは口が裂けても言えなかった。
彼女をちらりと見やるが、我関せずといった様子で目を合わせようとすらしない。
「……少し気分が悪くなってしまい、外の空気を吸いに」
「左様ですか。何故ミリア妃もお連れにならなかったのですか?」
「妻は夜会をとても楽しんでおりました。ですから、一人でも寂しくないだろうと……」
サディアスがたどたどしく答えると、臣下は一瞬呆れたような表情を浮かべた。しかしすぐに表情を切り替えて、次の質問をする。
「では、これが一番重要なのですが……ミリア妃は、レディーナ語をきちんとご習得されていらっしゃいましたか?」
「……? もちろん今夜のために習得しました」
「……そうですか」
冷ややかな声だった。
レディーナ語がトラブルの原因だったのだろうか。サディアスが尋ねようとした時、ドアが数回ノックされた後に開いた。
兵士に連れられてミリアが入ってくる。
酒気が抜けたのだろう。顔からは赤みが幾分か引いている。
しかし罪人のような扱いが不満なのか、不貞腐れたような表情をしていた。
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