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謹慎明け
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サディアスの謹慎が解かれたのは、一ヶ月後のことだった。
しかしそれで元通りというわけにはいかない。
まず、クレイラー商会との商談を任されなくなった。
「なっ……私にやらせないとはどういうことだ!」
「陛下のご命令でございます。殿下はどうか、この件からは手をお引きください」
「だが、クレイラー商会の契約は、私が結んだものだぞ!」
アリーシャにはとんでもないことをしたと、十分反省している。
だからこそ心を入れ替えて、誠心誠意をもって外務にあたるつもりだったのだ。
だというのに、再起の機会を奪うつもりなのか。
「……そのクレイラー商会からのご依頼です」
「何?」
「『サディアス殿下を関わらせるな』と会長から書簡が届きました」
「うっ……」
先方からの申し出であれば、無下には出来ない。
サディアスは甘んじて受け入れるしかなかった。
クレイラー商会の一件以来、サディアスへ向けられる視線は冷たい。
逃げるようにミリアの部屋へ向かう。
「妻に会いたいのだが、いいだろうか?」
「申し訳ございません。ミリア妃でしたら、庭園にいらっしゃいます」
「ん? 今は妃教育の時間ではないのか」
「下位貴族の令嬢をお呼びして、茶会をなさっております」
室内の清掃中だった侍女が、淡々とした口調で答える。
「ま、待て。妃教育はどうした!」
「殿下が謹慎されたショックで、勉強に集中出来ないとのことでしたので」
「そんなバカな理由があるか!」
「ですが無理矢理机に向かわせると、癇癪を起こされるのです。ミリア妃についていけず、先日ついに辞職なさった教育係もいます」
「はぁぁぁ? 父上は何故止めなかったんだ!」
高圧的な態度で問い詰めてくる王太子に、侍女が目を吊り上げる。
「それは! 殿下が一番ご存知ではありませんか!?」
大きく息を吸い、強い口調で聞き返す侍女にサディアスは逃げるように視線を逸らした。
原因は恐らく自分だ。
ミジューム王国は現在、脆弱な小国という立ち位置から脱出しようと模索している。
クレイラー商会との契約は、優良たる一手だった。しかし、それを潰そうとしたのがサディアスである。
王家が担うはずだった役目は、ルマンズ侯爵家が問題なく務めている。王家との契約はついでだ。
そのため、サディアスだけではなく王家そのものが白い目で見られている。
「あなた方には、もうついてはいけません」と言い切られてしまえば、国王であろうと引き止められなかったのだろう。
「……だが、せめて隣国の言語だけでも、至急覚えてもらわなければ困る」
来月、隣国で国同士の交流会が開かれる。それには近隣諸国の王族らが出席する予定だ。
ミジューム王国からはサディアスとミリア、そしてアニュエラが参加する。
どうして側妃まで。不満に思うサディアスに、外務官はこう語っていた。
「開催国の王女と、アニュエラ様は親密な関係にあるようです」
その王女がアニュエラに招待状を送ったようだ。
隣国の王族と親しい間柄なんて、またしてもサディアスの知らない事実だった。
どうしてあの女ばかり。
そう思う一方で、アニュエラも出席することに安堵する心もあった。
そして交流会当日。
サディアス、いやミジューム王家にとって忘れられない一日が始まった。
しかしそれで元通りというわけにはいかない。
まず、クレイラー商会との商談を任されなくなった。
「なっ……私にやらせないとはどういうことだ!」
「陛下のご命令でございます。殿下はどうか、この件からは手をお引きください」
「だが、クレイラー商会の契約は、私が結んだものだぞ!」
アリーシャにはとんでもないことをしたと、十分反省している。
だからこそ心を入れ替えて、誠心誠意をもって外務にあたるつもりだったのだ。
だというのに、再起の機会を奪うつもりなのか。
「……そのクレイラー商会からのご依頼です」
「何?」
「『サディアス殿下を関わらせるな』と会長から書簡が届きました」
「うっ……」
先方からの申し出であれば、無下には出来ない。
サディアスは甘んじて受け入れるしかなかった。
クレイラー商会の一件以来、サディアスへ向けられる視線は冷たい。
逃げるようにミリアの部屋へ向かう。
「妻に会いたいのだが、いいだろうか?」
「申し訳ございません。ミリア妃でしたら、庭園にいらっしゃいます」
「ん? 今は妃教育の時間ではないのか」
「下位貴族の令嬢をお呼びして、茶会をなさっております」
室内の清掃中だった侍女が、淡々とした口調で答える。
「ま、待て。妃教育はどうした!」
「殿下が謹慎されたショックで、勉強に集中出来ないとのことでしたので」
「そんなバカな理由があるか!」
「ですが無理矢理机に向かわせると、癇癪を起こされるのです。ミリア妃についていけず、先日ついに辞職なさった教育係もいます」
「はぁぁぁ? 父上は何故止めなかったんだ!」
高圧的な態度で問い詰めてくる王太子に、侍女が目を吊り上げる。
「それは! 殿下が一番ご存知ではありませんか!?」
大きく息を吸い、強い口調で聞き返す侍女にサディアスは逃げるように視線を逸らした。
原因は恐らく自分だ。
ミジューム王国は現在、脆弱な小国という立ち位置から脱出しようと模索している。
クレイラー商会との契約は、優良たる一手だった。しかし、それを潰そうとしたのがサディアスである。
王家が担うはずだった役目は、ルマンズ侯爵家が問題なく務めている。王家との契約はついでだ。
そのため、サディアスだけではなく王家そのものが白い目で見られている。
「あなた方には、もうついてはいけません」と言い切られてしまえば、国王であろうと引き止められなかったのだろう。
「……だが、せめて隣国の言語だけでも、至急覚えてもらわなければ困る」
来月、隣国で国同士の交流会が開かれる。それには近隣諸国の王族らが出席する予定だ。
ミジューム王国からはサディアスとミリア、そしてアニュエラが参加する。
どうして側妃まで。不満に思うサディアスに、外務官はこう語っていた。
「開催国の王女と、アニュエラ様は親密な関係にあるようです」
その王女がアニュエラに招待状を送ったようだ。
隣国の王族と親しい間柄なんて、またしてもサディアスの知らない事実だった。
どうしてあの女ばかり。
そう思う一方で、アニュエラも出席することに安堵する心もあった。
そして交流会当日。
サディアス、いやミジューム王家にとって忘れられない一日が始まった。
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