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24.選んだ道
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オデットがカミーユと離婚してから三ヶ月が経つ。
カミーユは僻地の労働所に飛ばされたらしく、その監視下で日々働き続けているという。
ただし自分はレーヌ伯爵家の人間だと未だに主張しているらしく、家督はいずれ自身に戻ってくると信じて疑わないようだ。
弟のリオンは出来損ないであり、次期当主になどとてもなれないとカミーユは考えているようだが、それは大きな間違いだった。
リオンは幼いながらに出来た少年だった。兄と似ているのは銀色の髪のみで顔立ちも瞳の色も異なっており、温厚且つ真面目な性格の持ち主だ。
リオンからオデットに直接会って謝罪したいと手紙が届いた時、ファルス家は慌てた。
カミーユをあんな男に育てたダミアンとイザベラはともかく、リオンは完全な被害者である。彼は今後『カミーユの弟』という醜聞を背負って生きていかなければならないのだ。
謝る必要はないとアデルは返信したのだが、結局リオンは両親の同伴付きでファルス家に訪れて深々と頭を下げた。
そんな少年にオデットは「ありがとう」と告げて、屋敷の中でケーキを食べないかと提案した。顔を上げたリオンは顔を真っ赤にして目に涙を浮かべていた。
これでひとまずオデットとカミーユとの間に起こった騒動は落ち着いた。
しかし例の事件が解決するどころか、新たな問題が噴出していた。
「……オデット様、こちらになります」
「ええ、この件はお母様とお兄様には……」
「勿論、お二人には内緒にしてありますのでご安心ください」
「……助かるわ」
執事からもらった数枚の書類。そこにはカミーユの『練習台』となり、身籠った令嬢とその子の顛末も記載されている。ジョセフに聞いても教えてくれないだろうから、執事に頼んで情報を持ってきてもらったのだ。
それらに目を通していたオデットは、その内容に顔色を悪くする。
身籠った令嬢はカミーユから当然のように堕胎を命じられた。それを無視して出産したものの父親は使用人、もしくは暴漢だという扱いをされた。
レーヌ家の名前を出さないように徹底されている。
カミーユだけでなく、他の貴族に抱かれて身籠った話も出始めていた。
さらに商品にされた令嬢の中には深刻な健康被害に苦しむ者もいる。
認可の降りていない方法での堕胎が原因とされる。正規のやり方よりも母体への影響が強く、この国では禁止されているのだが、費用が安いという理由でそちらを選んでしまったのだ。
仲介人から貰っていた避妊薬を服用し、体調を崩すようになった令嬢も多い。
「…………」
全てを読み終え、オデットは書類を机に置いた。そしてすぐに紙とペンを用意して手紙を書き始める。
それを封筒にしまうとすぐに執事を呼んだ。
「お願い、この手紙をマリュン家にお送りしてちょうだい」
「かしこまりました。アデル様とジョセフ様には……」
「秘密にして。きっと二人には止められると思うの」
「……それもそうですな」
執事は笑いながらそう返した。手紙に何を書いたのか、オデットが何をしようとしているのか、予想がついているのかもしれない。
「オデット様がこの屋敷からまたいなくなってしまうのは寂しいですが、それがあなたの選んだ道なら私は何も申しません」
執事の言葉にオデットは何も言わず微笑んだ。
カミーユは僻地の労働所に飛ばされたらしく、その監視下で日々働き続けているという。
ただし自分はレーヌ伯爵家の人間だと未だに主張しているらしく、家督はいずれ自身に戻ってくると信じて疑わないようだ。
弟のリオンは出来損ないであり、次期当主になどとてもなれないとカミーユは考えているようだが、それは大きな間違いだった。
リオンは幼いながらに出来た少年だった。兄と似ているのは銀色の髪のみで顔立ちも瞳の色も異なっており、温厚且つ真面目な性格の持ち主だ。
リオンからオデットに直接会って謝罪したいと手紙が届いた時、ファルス家は慌てた。
カミーユをあんな男に育てたダミアンとイザベラはともかく、リオンは完全な被害者である。彼は今後『カミーユの弟』という醜聞を背負って生きていかなければならないのだ。
謝る必要はないとアデルは返信したのだが、結局リオンは両親の同伴付きでファルス家に訪れて深々と頭を下げた。
そんな少年にオデットは「ありがとう」と告げて、屋敷の中でケーキを食べないかと提案した。顔を上げたリオンは顔を真っ赤にして目に涙を浮かべていた。
これでひとまずオデットとカミーユとの間に起こった騒動は落ち着いた。
しかし例の事件が解決するどころか、新たな問題が噴出していた。
「……オデット様、こちらになります」
「ええ、この件はお母様とお兄様には……」
「勿論、お二人には内緒にしてありますのでご安心ください」
「……助かるわ」
執事からもらった数枚の書類。そこにはカミーユの『練習台』となり、身籠った令嬢とその子の顛末も記載されている。ジョセフに聞いても教えてくれないだろうから、執事に頼んで情報を持ってきてもらったのだ。
それらに目を通していたオデットは、その内容に顔色を悪くする。
身籠った令嬢はカミーユから当然のように堕胎を命じられた。それを無視して出産したものの父親は使用人、もしくは暴漢だという扱いをされた。
レーヌ家の名前を出さないように徹底されている。
カミーユだけでなく、他の貴族に抱かれて身籠った話も出始めていた。
さらに商品にされた令嬢の中には深刻な健康被害に苦しむ者もいる。
認可の降りていない方法での堕胎が原因とされる。正規のやり方よりも母体への影響が強く、この国では禁止されているのだが、費用が安いという理由でそちらを選んでしまったのだ。
仲介人から貰っていた避妊薬を服用し、体調を崩すようになった令嬢も多い。
「…………」
全てを読み終え、オデットは書類を机に置いた。そしてすぐに紙とペンを用意して手紙を書き始める。
それを封筒にしまうとすぐに執事を呼んだ。
「お願い、この手紙をマリュン家にお送りしてちょうだい」
「かしこまりました。アデル様とジョセフ様には……」
「秘密にして。きっと二人には止められると思うの」
「……それもそうですな」
執事は笑いながらそう返した。手紙に何を書いたのか、オデットが何をしようとしているのか、予想がついているのかもしれない。
「オデット様がこの屋敷からまたいなくなってしまうのは寂しいですが、それがあなたの選んだ道なら私は何も申しません」
執事の言葉にオデットは何も言わず微笑んだ。
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