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14.モントゥーニュ侯爵

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 私と父は、すぐさまモントゥーニュ侯爵夫妻を問い詰めた。
 すると彼らは、娘と共謀していたことを素直に白状した。

「確かにレイラむすめは、以前からクリストフご子息に想いを寄せていた。だからと言って、軽率な気持ちでこのようなことをしたのではない。そのことは理解してもらいたい」
「だから何だというのですか!? レイラを許せとでも!?」
「そ、そういうわけではない。ただ娘の気持ちは汲んで欲しいのだ……」

 他人の気持ちをまったく考慮しようとしないところは、娘そっくりだ。
 私はモントゥーニュ侯爵を鋭く睨みつけながら、彼の話に耳を傾けていた。

 レイラは数年前から私に好意を抱いていたらしいが、その頃には両親の決めた婚約者がいた。
 なので誰にも明かすことなく、その恋心を静かに殺すつもりだったらしい。
 しかし、ある出来事が彼女を大きく変えることになる。

 それが私とアンリとの婚約だ。
 男爵令嬢如きが、光魔法を使えるだけで見初められた。
 その事実がレイラには耐え難いものだった。

 両親に私への想いを打ち明けたレイラは、装飾品に加工した魔道具によって魔法師の振りをすることを決めた。
 そして当時の婚約者と縁を切り、私に近づいたのである。
 魔道具は使用回数に限度があるので、定期的に新しいものを買う必要がある。そしてモントゥーニュ侯爵夫妻が、その費用を出していた。

「貴様らがしたことは立派な犯罪行為だ! それなのに、犯罪者を思いやれなどと……馬鹿らしい!」
「馬鹿らしい!? レイラが一線を超えてしまった原因はそちらにある! 魔法の有無で相手を決めるなど、くだらないとは思わんかね!?」

 激しい口調で吐き捨てる父に、モントゥーニュ侯爵が噛みつく。
 しかし父の言う通り、この国では魔法師と偽ることは罪に当たる。
 侯爵もそれを理解しているはずなのに、開き直るとはどういうことなのか。
 私も声を荒らげようとすると、

「レイラを訴えるのなら好きにすればいい! だがその場合、イーデンが闇魔法を授かったことを世間に公表させてもらう!」
「なっ!?」

 それは困る! そんなことが公になったら、ロイジェ公爵家の評判ががた落ちじゃないか!

「やり方が汚いぞ! 貴様には矜持というものがないのか!?」

 父が憤怒の形相で、モントゥーニュ侯爵の胸ぐらを掴む。
 だが侯爵は怯るどころか、薄笑いを浮かべていた。

「な、何とでも言うがいい! レイラは私たちの可愛い娘だ! 我が子を守るためなら、どんな手も使うさ!」
「ええ! レイラには手出しさせません!」

 侯爵夫人まで大真面目な顔で、声を張り上げて宣言する。

 ……子を思う親心が、これほどまでに厄介なものとは思わなかった。
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