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12.バレッタ

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 突如、父が依頼した調査機関から一通の手紙が届いた。
 一旦報告書が出された後も、密かに調査は継続されていたらしい。
 それに目を通した父の顔から血の気が引いていく。

「これは……」
「ど、どうなさったのですか?」
「あんな女狐に騙されておって……この馬鹿息子がぁ!!」

 激高した父に殴り飛ばされ、私はその場に崩れ落ちた。
 それを見ていた母が甲高い悲鳴を上げる。

「父上……一体何を……」
「今すぐレイラを連れてこい! 全て白状させてやる!」

 これほど怒っている父を見るのは初めてだった。
 私はコクコクと首を振ると、レイラの部屋へと向かった。

「クリストフ様!? そのお顔……どうなさったのですか!?」

 私の顔を見て、レイラがぎょっと目を見開く。

「いや、父上に突然殴られてしまって……それよりもイーデンは?」
「ちょうど侍女があやしているところでした」
「そうか。だったらちょうどよかった。父が君と話がしたいそうだ」

 私がそう切り出した途端、レイラの美貌が強張った。その表情に、私も嫌な予感を覚える。

「ご、ごめんなさい、クリストフ様。私、今少し体調が悪くて……」
「大丈夫。すぐに終わるから」
「でも……」
「ほら、早く来るんだ」

 レイラを連れて来ないと、私が父にもっと怒られてしまう。
 彼女には悪いが、無理矢理部屋から引きずり出した。

「父上、連れて来ました」
「そんなもの、見れば分かる。……クリストフ、その女の髪飾りをこちらに寄越せ」
「……え?」
「早くしろ」

 命令の意図が分からないまま、レイラが着けているバレッタに視線を向けた。
 ホワイトパールをあしらった、清楚なデザインとなっている。これも彼女が個人的に購入したものだろう。

「レイラ……」
「っ!」

 バレッタに手を伸ばそうとすると、何故かレイラは後ずさりをした。
 ああもう、逃げないでくれ!
 彼女の腕を掴み、むしり取るように奪う。ブチ、ブチと嫌な感触がしたと思ったら、バレッタに髪が数本絡まっていた。

「よし、ではレイラ。今すぐに光魔法でクリストフの顔を治してみせろ」

 私からバレッタを受け取ると、父はレイラにそう命じた。
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