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2巻
2-2
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「この焼き菓子、オレンジの皮が入っているのね。ただ甘いだけじゃなくてほろ苦さもあって、いい塩梅になっているわ」
ティア特製のオレンジマフィンは、ダチュラさんのお口に合ったみたい。ティアの作るお菓子は、そりゃ美味しいもん! 美味しそうに食べ進める姿を見て私までうれしくなっちゃう。
それにしてもダチュラさん、とっても上品に食べるなぁ。まるで食事作法のお手本を見ているみたい。なんかこう……大人の女性! って感じがする。
「ごちそうさま。お菓子もお茶も美味しかったわ」
そしてダチュラさんが食べ終わったところで、いよいよ商談開始。
「まずは、この店で取り扱っている品物の一覧を見せてもらえる?」
「はい。ご用意してあります」
昨日のうちに作っておいた、薬の効き目とか値段を簡単にまとめたリストをダチュラさんに渡す。
真剣な眼差しでそれに目を通すダチュラさん。けれど、次第に硬い表情を浮かべ始める。
な、なんだろう、この不穏な雰囲気。
「これは……」
ダチュラさんがぽつりと呟きを零す。
「な、何か問題でもありましたか?」
私は恐る恐るダチュラさんに尋ねてみる。
「問題というより……この店では、普段からこの価格で薬を販売しているの?」
高いと思われた!? 都会の薬屋よりも安い値段で販売しているつもりなんだけど……
「で、でも、たまーに特売でもう少し安くするときもあります」
「これよりもさらに安く?」
おや? この反応は……
「他の薬屋もそうだけれど、この国は安価で医療品が販売されているのね」
「あー確かにそうかもしれませんね」
うちの国って、薬を結構簡単に手に入れられるほうなんじゃないかな。
だけど、その逆の国も多いんだよね。それこそ風邪薬が贅沢品みたいな扱いになっているって聞いたこともあるし。
そう思っていると、ティアが思い出したように口を開いた。
「確かリーディンって国だと、薬がすごく高いんでしたっけ。前に新聞でそんな記事を読んだことがあります」
そうそう。薬高すぎ問題で真っ先に名前が挙がるのが、あの国なんだよね。
人口も多くて経済もある程度発展している国。それなのに生活必需品であるはずの薬が、贅沢品のような扱いになっている。家計が苦しい家庭は、薬を買うのも一苦労なんだって。どうしてそんなことになっちゃっているのかと言うと……
「原因はリーディン薬師協会よ。彼らは自分たちの利益のために、医薬品をわざと高額に設定しているらしいの」
どこか呆れた様子でダチュラさんがそう言い放った。
そもそも薬師協会で販売を認めている医薬品の売上は、その一部が協会に流れる仕組みになっている。つまり高めの価格設定にすれば、より協会の懐が潤うってこと。
「しかも、そのことを知っていながら王族や貴族は見て見ぬふり。あの人たちにはリーディン薬師協会の割引制度が適用されているのよ」
「えぇ~? 普通そういう制度って平民が対象ですよね? お金をいっぱい持っている人たちが薬を安く買えて、貧しい人たちが買えないってなんだかおかしくないですか?」
ティアが怪訝な顔で尋ねる。
「協会の奴らが言うには、上級国民の特権ってことらしいわよ」
特別扱いしているんだから、協会のやり方に口出しするなってことかな。自分たちが困らないなら、庶民の暮らしなんてどうでもいいっていう考えを持つ王族や貴族は多いからね。
それにしても汚い。やり口が汚いぞ、リーディン薬師協会。
「そんなのあり得ない! 金の亡者協会に改名したほうがいいんじゃないですか!?」
私もティアの意見に賛成だ。うんうんと頷いていると、ダチュラさんが溜め息混じりに言う。
「上の人間があなたたちみたいな考えを持てば、あの国は変われるのかもしれないわね……。いえ、話が脱線しすぎたわ。そろそろ商売の話に戻りましょうか。今回あなたの店から仕入れる品物なんだけど……」
「は、はい」
ダチュラさんの言葉にビシッと背筋を伸ばす。旅商人の中には『やっぱり他の薬師のところに行きます』と、何も仕入れずに帰ってしまう人もいるのだ。
「この店にある薬を全種類、それも可能な限りたくさん貰えないかしら?」
「えっ!?」
そ、そんなに買ってくれるんですか!?
豪快な注文にびっくりしていると、ダチュラさんは申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
「ごめんなさい。流石に急にそんな話されても無理よね」
「ああっ、違うんです、謝らないでください! うちとしても、たくさん買ってくださるのはありがたい話なんですけれど、すごい量になっちゃいませんか?」
「村の外に馬車を停めてて、そこに積むから大丈夫よ」
それは分かるんだけど、旅商人の売り物としてはやけに医薬品の比率だけ高くなっちゃうような。
でもダチュラさん本人が大丈夫って言っているしなぁ。あんまり深く考えないでおこう……と結論付けていると。
「それと、もうひとつお願いがあって……いいえ、こちらが本題ね」
ダチュラさんは真剣な表情でそう言って、両肘を机に立てて手を組み合わせる。
「な、なんでしょう?」
「レイフェルさん、その腕を見込んであなたに作ってほしい薬があるの」
「えっと……それはこの店に置いていない薬ということでしょうか? そういう依頼はたまに受けることがありますが……」
するとダチュラさんは、少しだけ間を置いてから私の質問に答えた。
「今から数年前、ある少女が病気に罹ったわ。幸いなことに彼女の家は薬を買う余裕があったから、すぐに完治すると言われていたの。……だけど処方された薬に重大な問題があったみたい。その薬を飲んだ彼女は、激しい中毒症状に襲われたわ。一命は取り留めたけど、今も頭痛や熱、倦怠感が残っていて日常生活を送ることも難しい状態なの」
ダチュラさんの話を聞いて、背筋がゾクッと冷たくなった。
薬師にとって一番怖いのは、調合ミスした薬を患者に飲ませちゃうことなんだよね。最悪の場合、患者が亡くなってしまうこともあるし。
「えっと、それじゃあ私に作ってほしい薬というのは……」
「ええ。彼女を救う治療薬よ」
……そうきましたか。そこまで重い症状の後遺症を治す薬。私にそんなものが作れるだろうか。すぐに答えが出せなくて悩む私を見て、ダチュラさんが静かな声で言う。
「報酬ならいくらでも支払うわ。たとえ望む結果にならなかったとしても」
「もしかして……その患者さんってダチュラさんの大切な人なんですか?」
私は恐る恐る聞いてみた。淡々と話しているダチュラさんだけど、どこか必死さを感じる。
「……私の大事な友人よ」
ダチュラさんは、ぎこちなく微笑みながら答えてくれた。
「彼女がこのまま一生治らないかもしれないって途方に暮れていたときに、加護を授かった薬師の噂を私は耳にしたの。どんな薬も作ることができて、どんな患者も治すことができる。だからひょっとして、その薬師なら彼女を救ってくれるかもしれないと思ったのよ」
うーん、どんな薬でも、どんな患者もというのはちょっと大げさだと思う。薬神様の加護の力にも限度があって、作りたくても作れない薬だってたくさんある。
でもそんなこと、私を頼ってくれるダチュラさんには言えない。それに薬師として、困っている人を放ってはおけないよね。
やるぞ、私は! 私の薬師魂に真っ赤な火がついた!
「ダチュラさん、私にご友人の治療薬を作らせてください!」
「……ありがとう、レイフェルさん」
私の言葉を聞いて緊張の糸が解れたのか、ダチュラさんが安堵の笑みを浮かべる。それを見て、俄然やる気が出てきた。
「まずはご友人にお会いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろん。彼女ならサマル村の診療所に預かってもらっているわ」
サマル村。名前だけなら聞いたことがある。このヘルバ村からだったら、一日半もあれば着く距離じゃないかな。案外近場で助かったなぁ。
……うん? ちょっと待てよ。『預かってもらっている』って元々は別の場所にいたってこと?
そんな疑問を浮かべながら、ダチュラさんのお友達に会うための打ち合わせを始める。
ダチュラさんは、お友達をヘルバ村へ連れてこようかと考えているみたい。だけど、病人に長時間の移動はあまりさせたくない。
そうして話し合いの結果、私は数日後にサマル村へ行くことになった。
「何から何まで悪いわね、レイフェルさん」
ダチュラさんは店を出る前に、またフードとスカーフで顔を隠していた。
あんなに綺麗な顔をしているのに勿体ない。だけど肌が弱くて、日光をずっと浴びているとすぐに赤くなっちゃうらしい。
「いえいえ、これくらいさせてください。私の店でこんなにたくさん仕入れてくれたんですから!」
店をティアに任せて、私はダチュラさんのお手伝い。村の外に停めている馬車に医薬品を次々と積んでいく。
ちなみに馬車を引く馬のメルバちゃんは、つぶらな瞳がチャーミングな栗毛の女の子。ダチュラさんに顔を撫でられると、嬉しそうに目を細めて喜んでいた。可愛いなぁ。
「仕入れ、ね……」
「ダチュラさん?」
「あのね、私本当は商人じゃないの」
ダチュラさんは、消毒液の入った箱を馬車に積みながらそう打ち明けた。
「女ひとりで旅をしていると、何か理由があるのか根掘り葉掘り聞こうとする人がいるのよ。だけど商人ってことにしておけば、それだけでとりあえずは納得してくれる場合が多いの」
「そ、それじゃあ、旅商人のふりをするために薬を買っているんですか?」
それにしては買いすぎでは?
私の質問に、ダチュラさんは首を横に振った。
「いいえ、それだけが理由じゃないわ。サマル村の診療所で友人を預かってもらう代わりに、医薬品を提供しているの。あの村には薬師がいないから、今までは旅商人から買っていたんですって」
私がやって来る前のヘルバ村と同じだ。薬師がいない地域って意外と多いのかも。
「でも、一度にこれだけたくさん買ったのはこれが初めてよ。なんたって天才薬師が作る薬だもの」
いえいえ、天才薬師だなんてそんな。世の中には、私よりもすごい薬師が……あ、そうだ。
「ダチュラさん、あの建物のことはご存じですか?」
私が指差したのは、森の近くにそびえ立つ煉瓦造りの立派な建物だった。
「いいえ。貴族が建てた別荘だと思っていたけど……」
ダチュラさんは不思議そうに首をかしげながら答える。
「蛇の集いっていうアスクラン王国薬師協会があるんですけど、そこの支部なんです」
敷地内には薬草園もあって百種類以上の薬草が栽培されている。
その中には、独特のにおいがする種類もチラホラ。だから園内は、色んなにおいが混ざり合う魔の空間だ。
以前ティアとふたりで入らせてもらったことがあるけれど、ものの数分もしないうちに脱出した。死ぬかと思った……。
「そうだったのね。この国にも支部が作られたのは知っていたけれど……」
ダチュラさんは興味津々な様子で、支部を眺めていた。
「もしお時間に余裕があれば、あちらにも足を運んでみるといいですよ。お客様向けの販売所もあって、色んな薬がずらーっと並んでいるのを見ているだけで楽しいんです!」
私が声を弾ませて話すと、ダチュラさんは「楽しい?」と不思議そうに言葉を零した。
その反応を見てハッと息を呑む。普通の人は、薬を眺めても楽しくないか……!
変な薬師だと思われてしまったかもと不安に思っていた私だけれど、ダチュラさんはクスクスと小さな笑い声を漏らした。
「レイフェルさんにそう言われると、なんだか私も気になってきたわね。今度行ってみようかしら」
「ぜ、ぜひぜひ! なんと、あの薬学王子アレックスさんが開発した薬もあります!」
ダチュラさんの言葉にほっとしつつ、さりげなくアルさんの名前を出してみる。……させてください、恋人自慢。
蛇の集いを知っているなら、もちろん薬学王子も知っているはず。
「アレックスって、もしかして……アスクラン王国の第三王子のこと?」
「はい。支部長を務めているんですよ!」
「あら、すごいじゃない。だけど王族の仕事もあるだろうし、とっても忙しそうね」
そうなんですよ。現在進行形で大忙しなんですよ。アスクラン王国の式典の準備で。
アルさんに会えない寂しさが込み上げてきて、思わず溜め息をついたときだった。
「レイフェルさぁぁぁんっ! これ忘れてますよぉぉぉぉっ!!」
紙袋を抱えたティアがこちら目がけて猛ダッシュしてきた。
チュンチュンッ!
馬車の周りで地面をつついていた雀たちが、ティアの絶叫に驚いて一斉に飛び立つ。
「ティア!?」
「こ、これだけ残っているのを見つけたから……届けにきたんですぅ……ゲホッ、ゴホッ」
店からここまで全力疾走してきたのだろう。ゼエゼエと息を切らしながら、私に紙袋を渡してきた。
慌てて紙袋の中を見てみると、鼻炎用の薬がたくさん入っている。あ、これ準備だけしておいて、置いてきちゃってたんだ……
「あ、ありがとうティア……」
こんな無理をさせてしまって申し訳なくなりティアの背中を撫でる。すると、ダチュラさんが私たちを見て目を細めていた。
「あなたたちって師弟というより仲良しな姉妹みたいね」
「あ、それよく言われるんですよ! ね、ティア」
「はい! 私も最初レイフェルさんを見たとき、びっくりしましたもん」
その原因で私と間違われて、誘拐される大事件が起こったことがありますが……
「それじゃあ、私はこれで失礼するわね」
「はい! お気をつけて」
「ええ、さようならレイフェルさん、ティアさん」
ダチュラさんはそう別れを告げると、軽やかな動きで馬車の御者席に乗った。そして、ダチュラさんに指示されてメルバが颯爽と走り出す。
か、かっこいい……! いつか私もあんなふうに馬車を走らせてみたいな~!
そんなことを思いながらティアと一緒に、ダチュラさんの背中を見送った。
ダチュラさんが私を迎えにやって来るのは、三日後。
私がいない間、店はティアに任せる予定だ。もしティアが大変そうだったら、手伝ってあげてくださいと村長たちにもあとでお願いしておこう。
店の営業はなんとかなるとして、それまでにやっておかなければならないことがある。
そう。それは薬作り。ダチュラさんにたくさん薬を売って在庫が少なくなったから、この三日間で、できる限り補充しておかなくちゃいけない。
そうして、ティアと怒涛の薬作りのために急いで店へ帰ったのだった。
「ハァ……ハァ……」
ずっと鍋を掻き回しているせいで、腕が痛くなってきた。こういうとき、薬作りって体力仕事なんだって再認識する。
「ハルバートさんみたいな筋肉がほしいね……」
「ほしいですね……」
剣士らしくがっしりとした体格のハルバートさんなら、無限に鍋を掻き回せそう。
アルさんも『薬を作るときだけ、ハルバート様と体が入れ替わらないかなって考えるときがあります」って真剣な顔で言っていた。
だけど、そうしたらその間アルさんの体にハルバートさんが入るのだろうか。
ワイルドな笑みを見せるアルさんと、ニコニコ笑顔のハルバートさん。
……うーん。微妙な気持ちになっていると、ティアにレードルをひょいっと取り上げられてしまった。
「明日出発なんですから、レイフェルさんはそろそろ休んでください。肩を痛めた状態でダチュラさんと旅をすることになっちゃいますよ」
そう。明日の午前中にダチュラさんが迎えに来る。薬作りに明け暮れているうちに、あっという間に時間が流れてしまったのだ。
「ありがとう、ティア。旅は途中で何が起こるか分からないから、体調はしっかり整えていかないとね」
「そうですよ。ほらほら。アルさんからのお手紙を読んでてください」
「う、うん」
今朝届いたアルさんからの手紙。寝る前に読もうと思っていたんだよね。
封筒を開けると、いつものように甘くて優しい花の香りが鼻腔をくすぐる。その香りに心が癒されて口元が緩んだ。
手紙には式典が無事に終わったことが綴られていた。
王子たちによる今年のスピーチは、荘厳さが感じられる素晴らしい内容だったと、高く評価されたみたい。アルさんの苦労が報われてよかった。
お兄さんたちからは来年も……という空気を出されたけれど、しっかりとお断りさせていただいたのだとか。
アルさんってほんわかしていて流されやすそうに見えて、実は芯の強い人だもんね。彼らには弟の手を借りずに、全力を尽くしていい文章を考えてもらいたい。
そしてこの手紙を書き終えたら、すぐにでもハルバートさんを連れてアスクラン王国を出発するって書いてあるんだけれど、ここで問題がひとつ。
「あ、明日かぁ……」
アルさんたちが村に着くのは、明日のお昼ごろになってしまうらしい。
そして私は、お昼前に村を出発しちゃうわけで……ヌアアアアッ!
――久しぶりに一緒に夕食でもいかがですか?
そんな文章を見て、申し訳なさでいたたまれない気持ちになる。薬作りで忙しかったとはいえ、少しの間、ヘルバ村を離れることを伝えていなかったのだ。
アルさん、ごめんなさい……!
ちゃんと手紙で知らせておけばよかったと、ものすごく後悔している。はぁ……
アルさんのしょんぼりした姿が目に浮かぶ。その姿には、なぜか犬の垂れた耳が頭に生えていた。
ティア特製のオレンジマフィンは、ダチュラさんのお口に合ったみたい。ティアの作るお菓子は、そりゃ美味しいもん! 美味しそうに食べ進める姿を見て私までうれしくなっちゃう。
それにしてもダチュラさん、とっても上品に食べるなぁ。まるで食事作法のお手本を見ているみたい。なんかこう……大人の女性! って感じがする。
「ごちそうさま。お菓子もお茶も美味しかったわ」
そしてダチュラさんが食べ終わったところで、いよいよ商談開始。
「まずは、この店で取り扱っている品物の一覧を見せてもらえる?」
「はい。ご用意してあります」
昨日のうちに作っておいた、薬の効き目とか値段を簡単にまとめたリストをダチュラさんに渡す。
真剣な眼差しでそれに目を通すダチュラさん。けれど、次第に硬い表情を浮かべ始める。
な、なんだろう、この不穏な雰囲気。
「これは……」
ダチュラさんがぽつりと呟きを零す。
「な、何か問題でもありましたか?」
私は恐る恐るダチュラさんに尋ねてみる。
「問題というより……この店では、普段からこの価格で薬を販売しているの?」
高いと思われた!? 都会の薬屋よりも安い値段で販売しているつもりなんだけど……
「で、でも、たまーに特売でもう少し安くするときもあります」
「これよりもさらに安く?」
おや? この反応は……
「他の薬屋もそうだけれど、この国は安価で医療品が販売されているのね」
「あー確かにそうかもしれませんね」
うちの国って、薬を結構簡単に手に入れられるほうなんじゃないかな。
だけど、その逆の国も多いんだよね。それこそ風邪薬が贅沢品みたいな扱いになっているって聞いたこともあるし。
そう思っていると、ティアが思い出したように口を開いた。
「確かリーディンって国だと、薬がすごく高いんでしたっけ。前に新聞でそんな記事を読んだことがあります」
そうそう。薬高すぎ問題で真っ先に名前が挙がるのが、あの国なんだよね。
人口も多くて経済もある程度発展している国。それなのに生活必需品であるはずの薬が、贅沢品のような扱いになっている。家計が苦しい家庭は、薬を買うのも一苦労なんだって。どうしてそんなことになっちゃっているのかと言うと……
「原因はリーディン薬師協会よ。彼らは自分たちの利益のために、医薬品をわざと高額に設定しているらしいの」
どこか呆れた様子でダチュラさんがそう言い放った。
そもそも薬師協会で販売を認めている医薬品の売上は、その一部が協会に流れる仕組みになっている。つまり高めの価格設定にすれば、より協会の懐が潤うってこと。
「しかも、そのことを知っていながら王族や貴族は見て見ぬふり。あの人たちにはリーディン薬師協会の割引制度が適用されているのよ」
「えぇ~? 普通そういう制度って平民が対象ですよね? お金をいっぱい持っている人たちが薬を安く買えて、貧しい人たちが買えないってなんだかおかしくないですか?」
ティアが怪訝な顔で尋ねる。
「協会の奴らが言うには、上級国民の特権ってことらしいわよ」
特別扱いしているんだから、協会のやり方に口出しするなってことかな。自分たちが困らないなら、庶民の暮らしなんてどうでもいいっていう考えを持つ王族や貴族は多いからね。
それにしても汚い。やり口が汚いぞ、リーディン薬師協会。
「そんなのあり得ない! 金の亡者協会に改名したほうがいいんじゃないですか!?」
私もティアの意見に賛成だ。うんうんと頷いていると、ダチュラさんが溜め息混じりに言う。
「上の人間があなたたちみたいな考えを持てば、あの国は変われるのかもしれないわね……。いえ、話が脱線しすぎたわ。そろそろ商売の話に戻りましょうか。今回あなたの店から仕入れる品物なんだけど……」
「は、はい」
ダチュラさんの言葉にビシッと背筋を伸ばす。旅商人の中には『やっぱり他の薬師のところに行きます』と、何も仕入れずに帰ってしまう人もいるのだ。
「この店にある薬を全種類、それも可能な限りたくさん貰えないかしら?」
「えっ!?」
そ、そんなに買ってくれるんですか!?
豪快な注文にびっくりしていると、ダチュラさんは申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
「ごめんなさい。流石に急にそんな話されても無理よね」
「ああっ、違うんです、謝らないでください! うちとしても、たくさん買ってくださるのはありがたい話なんですけれど、すごい量になっちゃいませんか?」
「村の外に馬車を停めてて、そこに積むから大丈夫よ」
それは分かるんだけど、旅商人の売り物としてはやけに医薬品の比率だけ高くなっちゃうような。
でもダチュラさん本人が大丈夫って言っているしなぁ。あんまり深く考えないでおこう……と結論付けていると。
「それと、もうひとつお願いがあって……いいえ、こちらが本題ね」
ダチュラさんは真剣な表情でそう言って、両肘を机に立てて手を組み合わせる。
「な、なんでしょう?」
「レイフェルさん、その腕を見込んであなたに作ってほしい薬があるの」
「えっと……それはこの店に置いていない薬ということでしょうか? そういう依頼はたまに受けることがありますが……」
するとダチュラさんは、少しだけ間を置いてから私の質問に答えた。
「今から数年前、ある少女が病気に罹ったわ。幸いなことに彼女の家は薬を買う余裕があったから、すぐに完治すると言われていたの。……だけど処方された薬に重大な問題があったみたい。その薬を飲んだ彼女は、激しい中毒症状に襲われたわ。一命は取り留めたけど、今も頭痛や熱、倦怠感が残っていて日常生活を送ることも難しい状態なの」
ダチュラさんの話を聞いて、背筋がゾクッと冷たくなった。
薬師にとって一番怖いのは、調合ミスした薬を患者に飲ませちゃうことなんだよね。最悪の場合、患者が亡くなってしまうこともあるし。
「えっと、それじゃあ私に作ってほしい薬というのは……」
「ええ。彼女を救う治療薬よ」
……そうきましたか。そこまで重い症状の後遺症を治す薬。私にそんなものが作れるだろうか。すぐに答えが出せなくて悩む私を見て、ダチュラさんが静かな声で言う。
「報酬ならいくらでも支払うわ。たとえ望む結果にならなかったとしても」
「もしかして……その患者さんってダチュラさんの大切な人なんですか?」
私は恐る恐る聞いてみた。淡々と話しているダチュラさんだけど、どこか必死さを感じる。
「……私の大事な友人よ」
ダチュラさんは、ぎこちなく微笑みながら答えてくれた。
「彼女がこのまま一生治らないかもしれないって途方に暮れていたときに、加護を授かった薬師の噂を私は耳にしたの。どんな薬も作ることができて、どんな患者も治すことができる。だからひょっとして、その薬師なら彼女を救ってくれるかもしれないと思ったのよ」
うーん、どんな薬でも、どんな患者もというのはちょっと大げさだと思う。薬神様の加護の力にも限度があって、作りたくても作れない薬だってたくさんある。
でもそんなこと、私を頼ってくれるダチュラさんには言えない。それに薬師として、困っている人を放ってはおけないよね。
やるぞ、私は! 私の薬師魂に真っ赤な火がついた!
「ダチュラさん、私にご友人の治療薬を作らせてください!」
「……ありがとう、レイフェルさん」
私の言葉を聞いて緊張の糸が解れたのか、ダチュラさんが安堵の笑みを浮かべる。それを見て、俄然やる気が出てきた。
「まずはご友人にお会いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろん。彼女ならサマル村の診療所に預かってもらっているわ」
サマル村。名前だけなら聞いたことがある。このヘルバ村からだったら、一日半もあれば着く距離じゃないかな。案外近場で助かったなぁ。
……うん? ちょっと待てよ。『預かってもらっている』って元々は別の場所にいたってこと?
そんな疑問を浮かべながら、ダチュラさんのお友達に会うための打ち合わせを始める。
ダチュラさんは、お友達をヘルバ村へ連れてこようかと考えているみたい。だけど、病人に長時間の移動はあまりさせたくない。
そうして話し合いの結果、私は数日後にサマル村へ行くことになった。
「何から何まで悪いわね、レイフェルさん」
ダチュラさんは店を出る前に、またフードとスカーフで顔を隠していた。
あんなに綺麗な顔をしているのに勿体ない。だけど肌が弱くて、日光をずっと浴びているとすぐに赤くなっちゃうらしい。
「いえいえ、これくらいさせてください。私の店でこんなにたくさん仕入れてくれたんですから!」
店をティアに任せて、私はダチュラさんのお手伝い。村の外に停めている馬車に医薬品を次々と積んでいく。
ちなみに馬車を引く馬のメルバちゃんは、つぶらな瞳がチャーミングな栗毛の女の子。ダチュラさんに顔を撫でられると、嬉しそうに目を細めて喜んでいた。可愛いなぁ。
「仕入れ、ね……」
「ダチュラさん?」
「あのね、私本当は商人じゃないの」
ダチュラさんは、消毒液の入った箱を馬車に積みながらそう打ち明けた。
「女ひとりで旅をしていると、何か理由があるのか根掘り葉掘り聞こうとする人がいるのよ。だけど商人ってことにしておけば、それだけでとりあえずは納得してくれる場合が多いの」
「そ、それじゃあ、旅商人のふりをするために薬を買っているんですか?」
それにしては買いすぎでは?
私の質問に、ダチュラさんは首を横に振った。
「いいえ、それだけが理由じゃないわ。サマル村の診療所で友人を預かってもらう代わりに、医薬品を提供しているの。あの村には薬師がいないから、今までは旅商人から買っていたんですって」
私がやって来る前のヘルバ村と同じだ。薬師がいない地域って意外と多いのかも。
「でも、一度にこれだけたくさん買ったのはこれが初めてよ。なんたって天才薬師が作る薬だもの」
いえいえ、天才薬師だなんてそんな。世の中には、私よりもすごい薬師が……あ、そうだ。
「ダチュラさん、あの建物のことはご存じですか?」
私が指差したのは、森の近くにそびえ立つ煉瓦造りの立派な建物だった。
「いいえ。貴族が建てた別荘だと思っていたけど……」
ダチュラさんは不思議そうに首をかしげながら答える。
「蛇の集いっていうアスクラン王国薬師協会があるんですけど、そこの支部なんです」
敷地内には薬草園もあって百種類以上の薬草が栽培されている。
その中には、独特のにおいがする種類もチラホラ。だから園内は、色んなにおいが混ざり合う魔の空間だ。
以前ティアとふたりで入らせてもらったことがあるけれど、ものの数分もしないうちに脱出した。死ぬかと思った……。
「そうだったのね。この国にも支部が作られたのは知っていたけれど……」
ダチュラさんは興味津々な様子で、支部を眺めていた。
「もしお時間に余裕があれば、あちらにも足を運んでみるといいですよ。お客様向けの販売所もあって、色んな薬がずらーっと並んでいるのを見ているだけで楽しいんです!」
私が声を弾ませて話すと、ダチュラさんは「楽しい?」と不思議そうに言葉を零した。
その反応を見てハッと息を呑む。普通の人は、薬を眺めても楽しくないか……!
変な薬師だと思われてしまったかもと不安に思っていた私だけれど、ダチュラさんはクスクスと小さな笑い声を漏らした。
「レイフェルさんにそう言われると、なんだか私も気になってきたわね。今度行ってみようかしら」
「ぜ、ぜひぜひ! なんと、あの薬学王子アレックスさんが開発した薬もあります!」
ダチュラさんの言葉にほっとしつつ、さりげなくアルさんの名前を出してみる。……させてください、恋人自慢。
蛇の集いを知っているなら、もちろん薬学王子も知っているはず。
「アレックスって、もしかして……アスクラン王国の第三王子のこと?」
「はい。支部長を務めているんですよ!」
「あら、すごいじゃない。だけど王族の仕事もあるだろうし、とっても忙しそうね」
そうなんですよ。現在進行形で大忙しなんですよ。アスクラン王国の式典の準備で。
アルさんに会えない寂しさが込み上げてきて、思わず溜め息をついたときだった。
「レイフェルさぁぁぁんっ! これ忘れてますよぉぉぉぉっ!!」
紙袋を抱えたティアがこちら目がけて猛ダッシュしてきた。
チュンチュンッ!
馬車の周りで地面をつついていた雀たちが、ティアの絶叫に驚いて一斉に飛び立つ。
「ティア!?」
「こ、これだけ残っているのを見つけたから……届けにきたんですぅ……ゲホッ、ゴホッ」
店からここまで全力疾走してきたのだろう。ゼエゼエと息を切らしながら、私に紙袋を渡してきた。
慌てて紙袋の中を見てみると、鼻炎用の薬がたくさん入っている。あ、これ準備だけしておいて、置いてきちゃってたんだ……
「あ、ありがとうティア……」
こんな無理をさせてしまって申し訳なくなりティアの背中を撫でる。すると、ダチュラさんが私たちを見て目を細めていた。
「あなたたちって師弟というより仲良しな姉妹みたいね」
「あ、それよく言われるんですよ! ね、ティア」
「はい! 私も最初レイフェルさんを見たとき、びっくりしましたもん」
その原因で私と間違われて、誘拐される大事件が起こったことがありますが……
「それじゃあ、私はこれで失礼するわね」
「はい! お気をつけて」
「ええ、さようならレイフェルさん、ティアさん」
ダチュラさんはそう別れを告げると、軽やかな動きで馬車の御者席に乗った。そして、ダチュラさんに指示されてメルバが颯爽と走り出す。
か、かっこいい……! いつか私もあんなふうに馬車を走らせてみたいな~!
そんなことを思いながらティアと一緒に、ダチュラさんの背中を見送った。
ダチュラさんが私を迎えにやって来るのは、三日後。
私がいない間、店はティアに任せる予定だ。もしティアが大変そうだったら、手伝ってあげてくださいと村長たちにもあとでお願いしておこう。
店の営業はなんとかなるとして、それまでにやっておかなければならないことがある。
そう。それは薬作り。ダチュラさんにたくさん薬を売って在庫が少なくなったから、この三日間で、できる限り補充しておかなくちゃいけない。
そうして、ティアと怒涛の薬作りのために急いで店へ帰ったのだった。
「ハァ……ハァ……」
ずっと鍋を掻き回しているせいで、腕が痛くなってきた。こういうとき、薬作りって体力仕事なんだって再認識する。
「ハルバートさんみたいな筋肉がほしいね……」
「ほしいですね……」
剣士らしくがっしりとした体格のハルバートさんなら、無限に鍋を掻き回せそう。
アルさんも『薬を作るときだけ、ハルバート様と体が入れ替わらないかなって考えるときがあります」って真剣な顔で言っていた。
だけど、そうしたらその間アルさんの体にハルバートさんが入るのだろうか。
ワイルドな笑みを見せるアルさんと、ニコニコ笑顔のハルバートさん。
……うーん。微妙な気持ちになっていると、ティアにレードルをひょいっと取り上げられてしまった。
「明日出発なんですから、レイフェルさんはそろそろ休んでください。肩を痛めた状態でダチュラさんと旅をすることになっちゃいますよ」
そう。明日の午前中にダチュラさんが迎えに来る。薬作りに明け暮れているうちに、あっという間に時間が流れてしまったのだ。
「ありがとう、ティア。旅は途中で何が起こるか分からないから、体調はしっかり整えていかないとね」
「そうですよ。ほらほら。アルさんからのお手紙を読んでてください」
「う、うん」
今朝届いたアルさんからの手紙。寝る前に読もうと思っていたんだよね。
封筒を開けると、いつものように甘くて優しい花の香りが鼻腔をくすぐる。その香りに心が癒されて口元が緩んだ。
手紙には式典が無事に終わったことが綴られていた。
王子たちによる今年のスピーチは、荘厳さが感じられる素晴らしい内容だったと、高く評価されたみたい。アルさんの苦労が報われてよかった。
お兄さんたちからは来年も……という空気を出されたけれど、しっかりとお断りさせていただいたのだとか。
アルさんってほんわかしていて流されやすそうに見えて、実は芯の強い人だもんね。彼らには弟の手を借りずに、全力を尽くしていい文章を考えてもらいたい。
そしてこの手紙を書き終えたら、すぐにでもハルバートさんを連れてアスクラン王国を出発するって書いてあるんだけれど、ここで問題がひとつ。
「あ、明日かぁ……」
アルさんたちが村に着くのは、明日のお昼ごろになってしまうらしい。
そして私は、お昼前に村を出発しちゃうわけで……ヌアアアアッ!
――久しぶりに一緒に夕食でもいかがですか?
そんな文章を見て、申し訳なさでいたたまれない気持ちになる。薬作りで忙しかったとはいえ、少しの間、ヘルバ村を離れることを伝えていなかったのだ。
アルさん、ごめんなさい……!
ちゃんと手紙で知らせておけばよかったと、ものすごく後悔している。はぁ……
アルさんのしょんぼりした姿が目に浮かぶ。その姿には、なぜか犬の垂れた耳が頭に生えていた。
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