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18.聖女の誕生(聖女side)
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『待ってよ、お姉様ーっ!』
『オフィーリア、早く早く! こっちに綺麗なお花畑があるの!』
辺境の村できゃっきゅとはしゃぎながら駆け回る姉妹。
オフィーリアには五つ歳が離れた姉がいた。
村の外れにある小さな神殿で神官を務める両親に代わり、姉がオフィーリアの面倒を見ていたのだ。
いつでもどこでも二人一緒。村人からも仲の良い姉妹として知られていた。
(お父様とお母様がいなくても寂しくないよ。だってお姉様がいるから)
この幸せな時間がいつまでも続きますように。
オフィーリアは神殿を訪れる度に、本当にいるのかも分からない神に祈りを捧げた。
それから数年後。
オフィーリアの暮らしている村で流行り病が蔓延し、両親や姉もかかってしまった。
しかし村人たちに高価な薬を買う金などなく、ただ死を待つだけと誰もが絶望していた。
(みんなが病気で死んじゃう……そんなの嫌っ!)
オフィーリアが治癒魔法に目覚めたのは、その時だった。
魔法を扱える庶民は、ごくわずか。
しかも希少性の高い治癒魔法であることに、村人たちは驚愕しながらも喜んだ。
「奇跡……奇跡の力だ。神様が村を救うために、オフィーリアに治癒魔法を授けてくださったんだ!」
「ああ……神よ、感謝いたします!」
突然目覚めた癒しの力は、病気で苦しむ人々を次々と治していく。
(私が魔法を使えるなんて……まるで夢みたい!)
こうして村の窮地を救ったオフィーリアは、『聖女』として崇められるようになった。
以前にも増して可愛がり、どんなお願いだって聞いてくれる。村の誰もがオフィーリアをお姫様のように扱う。
オフィーリアもそれを当然のように受け入れていた。
(だって、お父様とお母様も言ってたもん。『オフィーリアは聖女様なんだから、何をしてもいい』って)
魔法を使うのはとっても簡単だ。手を翳しながら祈りを込めるだけで、どんな怪我人や病人もたちまち元気になる。
たったそれだけで、村人たちに可愛がられて愛されるのだ。オフィーリアは素敵なプレゼントをくれた神に感謝した。
しかしそれから数年後、姉の様子が少しずつ変わり始めた。
『お姉様、このお人形ちょうだい?』
『はぁ……人のものを何でも欲しがる癖、いい加減直したら?』
以前はあんなに優しかったのに、オフィーリアに素っ気ない態度を取るようになったのだ。一緒に過ごすこともめっきり減ってしまった。
『お姉様最近冷たいです。私のことが嫌いになってしまったの?』
『そうじゃなくて、これはあなたのために言ってるの』
『私の?』
『今のままじゃ、そのうち痛い目を見るわよ』
『お姉様……』
きっと皆の人気者になったオフィーリアに嫉妬しているのだ。自分は魔法が使えないし、あまり可愛くないから。
(そんなことしても仕方ないのに……そうだわ、お父様やお母様に相談してみましょう!)
オフィーリアが遠方の神殿にいる両親に手紙を送ると、二人はすぐ村に帰ってきて姉を叱り付けた。
『妹に嫉妬するなどみっともないぞ。オフィーリアを悲しませるんじゃない』
『嫉妬ではありません。私はあの子のことを思って……』
『言い訳しないの! オフィーリアに謝りなさい!』
叱られている最中の姉は少し可哀想だったが、これで反省してくれるはずだとオフィーリアは思っていた。
だがその翌日、姉は誰にも告げないまま村を去ってしまった。
『オフィーリア、早く早く! こっちに綺麗なお花畑があるの!』
辺境の村できゃっきゅとはしゃぎながら駆け回る姉妹。
オフィーリアには五つ歳が離れた姉がいた。
村の外れにある小さな神殿で神官を務める両親に代わり、姉がオフィーリアの面倒を見ていたのだ。
いつでもどこでも二人一緒。村人からも仲の良い姉妹として知られていた。
(お父様とお母様がいなくても寂しくないよ。だってお姉様がいるから)
この幸せな時間がいつまでも続きますように。
オフィーリアは神殿を訪れる度に、本当にいるのかも分からない神に祈りを捧げた。
それから数年後。
オフィーリアの暮らしている村で流行り病が蔓延し、両親や姉もかかってしまった。
しかし村人たちに高価な薬を買う金などなく、ただ死を待つだけと誰もが絶望していた。
(みんなが病気で死んじゃう……そんなの嫌っ!)
オフィーリアが治癒魔法に目覚めたのは、その時だった。
魔法を扱える庶民は、ごくわずか。
しかも希少性の高い治癒魔法であることに、村人たちは驚愕しながらも喜んだ。
「奇跡……奇跡の力だ。神様が村を救うために、オフィーリアに治癒魔法を授けてくださったんだ!」
「ああ……神よ、感謝いたします!」
突然目覚めた癒しの力は、病気で苦しむ人々を次々と治していく。
(私が魔法を使えるなんて……まるで夢みたい!)
こうして村の窮地を救ったオフィーリアは、『聖女』として崇められるようになった。
以前にも増して可愛がり、どんなお願いだって聞いてくれる。村の誰もがオフィーリアをお姫様のように扱う。
オフィーリアもそれを当然のように受け入れていた。
(だって、お父様とお母様も言ってたもん。『オフィーリアは聖女様なんだから、何をしてもいい』って)
魔法を使うのはとっても簡単だ。手を翳しながら祈りを込めるだけで、どんな怪我人や病人もたちまち元気になる。
たったそれだけで、村人たちに可愛がられて愛されるのだ。オフィーリアは素敵なプレゼントをくれた神に感謝した。
しかしそれから数年後、姉の様子が少しずつ変わり始めた。
『お姉様、このお人形ちょうだい?』
『はぁ……人のものを何でも欲しがる癖、いい加減直したら?』
以前はあんなに優しかったのに、オフィーリアに素っ気ない態度を取るようになったのだ。一緒に過ごすこともめっきり減ってしまった。
『お姉様最近冷たいです。私のことが嫌いになってしまったの?』
『そうじゃなくて、これはあなたのために言ってるの』
『私の?』
『今のままじゃ、そのうち痛い目を見るわよ』
『お姉様……』
きっと皆の人気者になったオフィーリアに嫉妬しているのだ。自分は魔法が使えないし、あまり可愛くないから。
(そんなことしても仕方ないのに……そうだわ、お父様やお母様に相談してみましょう!)
オフィーリアが遠方の神殿にいる両親に手紙を送ると、二人はすぐ村に帰ってきて姉を叱り付けた。
『妹に嫉妬するなどみっともないぞ。オフィーリアを悲しませるんじゃない』
『嫉妬ではありません。私はあの子のことを思って……』
『言い訳しないの! オフィーリアに謝りなさい!』
叱られている最中の姉は少し可哀想だったが、これで反省してくれるはずだとオフィーリアは思っていた。
だがその翌日、姉は誰にも告げないまま村を去ってしまった。
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