9 / 21
9.少し前の話1(シリル視点)
しおりを挟む
そろそろ菓子にも手を伸ばしてみる気はないか?
皇帝陛下からそう提案されたのは半年前のこと。月に一度ある二人きりのお茶会に参加した時だった。
どうしてそんなことを言ったのかは分かる。
陛下は大の甘い物好き。自分好みの店を出してはくれないかという遠回しなお願い。
一国の主であり、僕の友人である彼の頼みを断るわけにもいかない。
それに菓子界隈にも挑戦してみたい気持ちもあったからね。
僕は陛下の言葉に首を縦に振った。
やるからには本格的に。材料も人材も一級品でなければいけない。特に後者は大事だ。どんなに素晴らしい材料があっても作り手次第で美味しくもなるしまずくもなる。
早速各国にある支店に連絡し、腕のいい菓子職人はいない調べて欲しいと伝えた。
いくつかの名前が上がったが、その中で僕の目を引いたのはカスタネアという少女。
カスタネアの作る菓子はとても美味で、高貴なる人々の間では大人気。
菓子嫌いで有名な国王の舌も唸らせた一品だとか。まだ若いのにすごいなぁと思っていると、更なる事実。
何とカスタネアは正規の菓子職人ではなく、ルビス侯爵の婚約者。
菓子作りだけは最高だが、元平民でありながら貴族としてのマナーを学ぶ意欲が全くなく、菓子ばかり作って楽しんでいる。
そんな彼女に付けられたあだ名は『お菓子姫』。
いくら美味しいお菓子を作れても、人格に難ありだとちょっと。
だからこの子は候補から外そうと思っていたが、面白いことが分かってきた。
国王陛下含め王族の現在のお気に入りは、ルビス侯爵であること。
カスタネアがルビス侯爵の屋敷に住み始めてすぐの頃から、ルビス侯爵は毎日のように菓子を土産に様々な貴族の屋敷を訪れたり、城にまで足を運んでいる。
噂では他国の文官や高貴の者にまで、カスタネアが作った菓子が振る舞われたとか。
……どこまでが真実かは分からないけれど、火のない所に煙は立たぬと言う。もう少し深く調べてみようと思った。
それにカスタネア本人にも興味が湧いたし、彼女の作る菓子を口にしてみたい。
僕は本格的にカスタネアとその周辺を調査してみることにした。
皇帝陛下からそう提案されたのは半年前のこと。月に一度ある二人きりのお茶会に参加した時だった。
どうしてそんなことを言ったのかは分かる。
陛下は大の甘い物好き。自分好みの店を出してはくれないかという遠回しなお願い。
一国の主であり、僕の友人である彼の頼みを断るわけにもいかない。
それに菓子界隈にも挑戦してみたい気持ちもあったからね。
僕は陛下の言葉に首を縦に振った。
やるからには本格的に。材料も人材も一級品でなければいけない。特に後者は大事だ。どんなに素晴らしい材料があっても作り手次第で美味しくもなるしまずくもなる。
早速各国にある支店に連絡し、腕のいい菓子職人はいない調べて欲しいと伝えた。
いくつかの名前が上がったが、その中で僕の目を引いたのはカスタネアという少女。
カスタネアの作る菓子はとても美味で、高貴なる人々の間では大人気。
菓子嫌いで有名な国王の舌も唸らせた一品だとか。まだ若いのにすごいなぁと思っていると、更なる事実。
何とカスタネアは正規の菓子職人ではなく、ルビス侯爵の婚約者。
菓子作りだけは最高だが、元平民でありながら貴族としてのマナーを学ぶ意欲が全くなく、菓子ばかり作って楽しんでいる。
そんな彼女に付けられたあだ名は『お菓子姫』。
いくら美味しいお菓子を作れても、人格に難ありだとちょっと。
だからこの子は候補から外そうと思っていたが、面白いことが分かってきた。
国王陛下含め王族の現在のお気に入りは、ルビス侯爵であること。
カスタネアがルビス侯爵の屋敷に住み始めてすぐの頃から、ルビス侯爵は毎日のように菓子を土産に様々な貴族の屋敷を訪れたり、城にまで足を運んでいる。
噂では他国の文官や高貴の者にまで、カスタネアが作った菓子が振る舞われたとか。
……どこまでが真実かは分からないけれど、火のない所に煙は立たぬと言う。もう少し深く調べてみようと思った。
それにカスタネア本人にも興味が湧いたし、彼女の作る菓子を口にしてみたい。
僕は本格的にカスタネアとその周辺を調査してみることにした。
66
お気に入りに追加
3,665
あなたにおすすめの小説
両親の愛を諦めたら、婚約者が溺愛してくるようになりました
ボタニカルseven
恋愛
HOT1位ありがとうございます!!!!!!
「どうしたら愛してくれましたか」
リュシエンヌ・フロラインが最後に聞いた問いかけ。それの答えは「一生愛すつもりなどなかった。お前がお前である限り」だった。両親に愛されようと必死に頑張ってきたリュシエンヌは愛された妹を嫉妬し、憎み、恨んだ。その果てには妹を殺しかけ、自分が死刑にされた。
そんな令嬢が時を戻り、両親からの愛をもう求めないと誓う物語。
【本編完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。
はゆりか
恋愛
「お前との婚約は破棄させもらう」
「破棄…ですか?マルク様が望んだ婚約だったと思いますが?」
「お前のその人形の様な態度は懲り懲りだ。俺は真実の愛に目覚めたのだ。だからこの婚約は無かったことにする」
「ああ…なるほど。わかりました」
皆が賑わう昼食時の学食。
私、カロリーナ・ミスドナはこの国の第2王子で婚約者のマルク様から婚約破棄を言い渡された。
マルク様は自分のやっている事に酔っているみたいですが、貴方がこれから経験する未来は地獄ですよ。
全くこの人は…
全て仕組まれた事だと知らずに幸せものですね。
【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた--
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は--
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。
和泉鷹央
恋愛
アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。
自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。
だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。
しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。
結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。
炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥
2021年9月2日。
完結しました。
応援、ありがとうございます。
他の投稿サイトにも掲載しています。
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる