他の令嬢に心変わりしたので婚約破棄だそうです。え?何で私が慰謝料を要求されているのですか?

火野村志紀

文字の大きさ
28 / 28

28.早く私を迎えに来て!(エヴァリア視点)

しおりを挟む
 久しぶりに会ったラピス様は何だか怒った様子で、私の話を最後まで聞いてくれなかった。
 きっとラピス様のお父様とお母様のせいだと思う。私は分からなかったけど、怒らせるようなことを言ってしまったんだよね……。

 仕方ないから諦めておうちに帰ると、リネオ様がお父様に殴られていた。
 何てことをするの!?

「エヴァリア! いくらお前の頼みでも我慢出来ん。今すぐにこの愚か者を叩き出してやる!」
「ま、待ってください、ヒスライン男爵! あれは事故です。ちょっとだけ魔が差したっていうか~……」
「魔が差した? エヴァリアの愛人に成り下がったくせに、屋敷のメイドに手を出しておいて、何だその言い訳は!」
「だってあのメイド、明らかに僕を誘ってたんです! 僕の目の前でいやらしく腰を振って……」

 二人の会話を聞いていた私は、目の前が真っ赤になるのを感じた。

「お父様、そのメイドを今すぐ辞めさせてください! 私に言わないでリネオ様とやらしいことをしようとするなんて許せません!」
「エ、エヴァリア……! そ、そうです、エヴァリアの言う通りです! 僕はむしろ被害者で……」
「黙れ、平民に落ちたクズめ! 私も悪魔ではない。身を弁えて使用人として雑用でもこなしていれば、私も貴族に戻れるよう協力してやったものを……!」
「何を言うんですか! 僕はあなたより上の存在の公爵だったんですよ!? 男爵家で使用人になれだなんて……僕のプライドが許せませんねっ!」

 そうだよ! リネオ様にそんなことさせられないもん!
 リネオ様は何もしなくてもいいの!

「貴様のようなクズをこれ以上、この屋敷に住まわせるのも、私のプライドが許さんな。……エヴァリア、貴様もだ」
「……え?」
「見た目に釣られて、貴様のような馬鹿を養子にするべきではなかった。こいつとの婚約が決まった時は嬉しい反面、嫌な予感がしたが……残念ながら的中してしまった」

 な、何? いつも私に優しくしてくれるお父様が冷たい目で見てくる……。しかも馬鹿って言われてる!

「今、この時から貴様はただの平民だ、エヴァリア。もうヒスライン家の人間などではない」
「そ、そんな……待ってください、お父様! 私この家の娘でいたいです!」
「私を父呼ばわりするな!」

 どうしよう……! 貴族じゃなくなったら私は平民に戻ってしまう。そうしたらどうなるの? 嫌! 怖くて考えたくない!

「何おかしなことを仰ってるんですか、ヒスライン男爵! こんなに可愛いエヴァリアを捨てる!? 正気と思えませんね!」
「……もうよい、何も言うな耳障りだ。それとエヴァリア、今まで貴様に使ってやった金は全て返してもらうぞ」
「無理です!」

 だって高いものをいっぱい買ってもらったんだよ?
 平民になったらどうやって働けばいいか分からないし、絶対返せない!
 もういや、どうして私こんな辛い思いをしなくちゃいけないの?
 辛くて悔しくて涙が流れてくる。

「安心しろ。見た目だけは上質な貴様にぴったりな仕事がある。……そこのクズに向いているものもな」

 私が泣いているのに、リネオ様が震えているのにお父様は楽しそうに笑った。




「やあ、エヴァリアちゃん。今日も会いに来たよぉ」

 二日前に来たお客様。私を殴ったり首を絞めて楽しむ人なの。そのせいで顔がまだ痛いのに、また殴られるなんて。
 お父様は私を娼館、それも変なお客様がたくさん来る場所に売った。
 だから毎日毎日、とっても辛いし怖いわ……。

「ねえエヴァリアちゃん。僕の屋敷においでよ。僕のペットになってくれたら、美味しい餌を用意してあげるよ。君の元婚約者を飼った夫人の話を聞いたら、僕もそういうの欲しくなっちゃった」

 リネオ様はどこかの貴族に売られてしまったみたい。それもペットとして。
 私のお客様はみんな、その話ばかりするけど聞くのも辛い。
 その夫人は変な薬でペットを虐めるのが趣味で、リネオ様はいつも飲まされて、おかしくなってるみたい。
 もうすぐ壊れるって言う人もいたけど、壊れるって何が……?

「この店もそろそろ危ないって噂だよ? 陛下が違法娼館摘発に積極的らしくてさぁ……ここがなくなったら、君は路頭に迷って餓死だ。その前にご主人様をちゃあんと決めるんだよ……?」

 こんな気持ち悪い人に飼われたくない。私は首を横に振るんだけど……。

「だって君なんてどこも雇ってくれないよ。今時文字の読み書きも出来ないってまずくない? ヒスライン男爵のところで勉強しなかった?」

 勉強しようと思ったもん。でもつまらないし辛いし……やりたくなくて泣いてたら、「しなくていい」って言われたの。本当よ。だから貴族でも、無理に勉強する必要はないって思ってたの。

 大丈夫。きっとリネオ様が私を助けに来てくれる。
 そしてリネオ様が貴族になって、今度こそ私と結婚するの……。

「君を見てるとマリエッタ王女がどうして勉強勉強口うるさく言ってるのか、分かる気がするよ」

 それはどういう意味?
 分かりづらい言い方をして私を馬鹿にしないで!
しおりを挟む
感想 125

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(125件)

aporokita
2022.06.16 aporokita

完結ありがとうございました。
まさに自業自得のラストでしたね。
平民が学ぼうとするのに、学ばない貴族の愚かさ。教育の限界を考えました。
一気に読みましたが、深かったです。

2022.06.16 火野村志紀

ありがとうございます~
人間は学んで成長する生き物なんですよね。
またこういうお話を書いてみたいと思います!

解除
みこと
2021.09.20 みこと

馬鹿にしないでも何も……馬鹿じゃんよおまえ。

解除
來埜
2021.09.14 來埜

こんにちは。いつも更新楽しみに読ませて頂いています。
今日の更新まだかな〜と思っていたら完結になっていて驚きました!ラピスとレアンドルさんってお付き合い開始してたんですか?マドレーヌさんも同じように呼んでる愛称呼びになった=友人になったと思っていたので、両想いになってく過程があるのかと思っていました💦
番外編とかでも良いので、二人が恋人になっているお話や、ラピスは働けるようになったのか(もしくはお嫁にいったのか?)とか読めたら嬉しいなと思いました。とても好きな二人だけに😊

解除

あなたにおすすめの小説

【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます

ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」 「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」  シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。 全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。  しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。  アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――

「本当の自分になりたい」って婚約破棄しましたよね?今さら婚約し直すと思っているんですか?

水垣するめ
恋愛
「本当の自分を見て欲しい」と言って、ジョン王子はシャロンとの婚約を解消した。 王族としての務めを果たさずにそんなことを言い放ったジョン王子にシャロンは失望し、婚約解消を受け入れる。 しかし、ジョン王子はすぐに後悔することになる。 王妃教育を受けてきたシャロンは非の打ち所がない完璧な人物だったのだ。 ジョン王子はすぐに後悔して「婚約し直してくれ!」と頼むが、当然シャロンは受け入れるはずがなく……。

婚約破棄をすると言ってきた人が、1時間後に謝りながら追いかけてきました

柚木ゆず
恋愛
「アロメリス伯爵令嬢、アンリエット。お前との婚約を破棄する」  ありもしない他令嬢への嫌がらせを理由に、わたしは大勢の前で婚約者であるフェルナン様から婚約破棄を宣告されました。  ですがその、僅か1時間後のことです。フェルナン様は必死になってわたしを追いかけてきて、謝罪をしながら改めて婚約をさせて欲しいと言い出したのでした。  嘘を吐いてまで婚約を白紙にしようとしていた人が、必死に言い訳をしながら関係を戻したいと言うだなんて。  1時間の間に、何があったのでしょうか……?

婚約破棄をされるのですね? でしたらその代償を払っていただきます

柚木ゆず
恋愛
「フルール・レファネッサル! この時を以てお前との婚約を破棄する!!」  私フルールの婚約者であるラトーレルア侯爵令息クリストフ様は、私の罪を捏造して婚約破棄を宣言されました。  クリストフ様。貴方様は気付いていないと思いますが、そちらは契約違反となります。ですのでこれから、その代償を払っていただきますね。

【完結】あなたが妹を選んだのです…後悔しても遅いですよ?

なか
恋愛
「ローザ!!お前との結婚は取り消しさせてもらう!!」 結婚式の前日に彼は大きな声でそう言った 「なぜでしょうか?ライアン様」 尋ねる私に彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべ 私の妹マリアの名前を呼んだ 「ごめんなさいお姉様~」 「俺は真実の愛を見つけたのだ!」 真実の愛? 妹の大きな胸を見ながら言うあなたに説得力の欠片も 理性も感じられません 怒りで拳を握る 明日に控える結婚式がキャンセルとなればどれだけの方々に迷惑がかかるか けど息を吐いて冷静さを取り戻す 落ち着いて これでいい……ようやく終わるのだ 「本当によろしいのですね?」 私の問いかけに彼は頷く では離縁いたしまししょう 後悔しても遅いですよ? これは全てあなたが選んだ選択なのですから

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。 伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。 セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。 そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに…… 婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。 そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。