23 / 28
23.そんな……(リネオ視点)
しおりを挟む
屋敷に戻れば、僕を出迎える使用人はもう誰もいない。まだ爵位剥奪までには期間があるっていうのに、全員辞めてしまったから。
しかも揃いも揃って、僕たちに暴言を吐き捨てていくんだ!
「どうか平民になってもお元気で。まあ、元気でいられるかは分かりませんが」
「いつかリネオ様がやらかす時が来ると思ってましたが、案外早かったですね」
「ラピス様はさっさと逃げて正解でしたね。こんな人と結婚なんてしたら苦労続きだったろうし」
誰がお前たちを雇ってやっていたと思っているんだ!
薄情な奴ら過ぎる。
「はい、リネオ。今晩の食事よ」
何これ……。固めのパンと野菜のクズしか入ってないスープが出てきた。
柔らかいふわふわなパンは?
甘くてとろりとしたポタージュは?
濃いソースがかかった肉汁たっぷりの牛肉ステーキは?
食後の冷たいシャーベットは?
「我慢してちょうだい、リネオ。今後のためにあまりお金は使えないのよ」
「そんなこと言ったって、昨日もこんな夕飯だったじゃん……」
「昨日は鶏肉のソテーがついていただろ」
そう言って父上がパンを千切ってスープに浸している。
どこか馬鹿にしたような言い方に、僕はむっとした。
「あんなの鶏肉じゃないよ。パサパサしてて臭くて、飲み込むのにどんだけ時間がかかったと思ってんの?」
「まあ、何てことを言うの!? 私が一生懸命焼いたのに……!」
母上がわざとらしく泣きそうな声を出す。あ~、やだやだ。しおらしいところを見せれば許してくれると思ってるのかな?
僕たちのご飯をこれから作っていくのも、掃除も、洗濯もやるのは母上だ。でもこんなんじゃ先行きが不安って言うかさぁ。
安いパンは保存性もあるらしいけど、その分固くて味もいまいち。だから父上と同じように、スープに浸して食べて見るけど……。
「まっずいよ、これぇ。食べられたもんじゃないね」
「リネオ、お前……」
「ねえ、食べ盛りの息子がお腹空かせてるんだよ? もっと食べ応えがあって美味しいのないの~?」
僕は知っているんだ。家具や母上のアクセサリーを売って結構お金が出来たことを。
今後のためにあまり使えないとは言うけど、可愛い息子が空腹を訴えているなら使うべきだよ。
「……分かった」
父上は大きく息を吐いてから、三枚の紙幣を僕に突き出した。
そうそう、こういうこと。材料を買って来ても、どうせ母上じゃまともに作れない。
だったら金を貰って外で食べて来た方がいいでしょ!
「これで足りるか?」
よく分からないけど、まあ一食分にはなるだろ。僕はそれを握り締めて屋敷を出た。
あ~、久しぶりに食べた食べた。それにデザートも食べれて酒も飲めたし、幸せな気分だ。
以前の食事には劣るレベルだけど、母上のまずい料理を食べるよりは全然ましだった。
こんな感じなら平民になってもいけ……。
「あ、あれ?」
屋敷に帰ってみると、どうしてか真っ暗になっていた。父上も母上ももう寝たのかな。
明日の朝食代ももらうつもりだったけど、まあ明日でもいいや。今夜は僕も寝よう……。
おかしいと気付いたのは翌日。いくら待っても父上と母上が起きて来ない。もう昼近くだ。
ふざけんな、僕はお腹が空いたぞ! 叩き起こすついでに二人を起こしに行ったけど、寝室はもぬけの殻だった。
もしかして僕への嫌がらせで、どこか高い宿屋に泊まりに行ったのか!?
そう思ってキッチンに残されていたスープの残りを飲みながら、あいつらの帰りを待った。
だけどいくら待っても帰って来ない。
……もしかして僕、置いて行かれた?
しかも揃いも揃って、僕たちに暴言を吐き捨てていくんだ!
「どうか平民になってもお元気で。まあ、元気でいられるかは分かりませんが」
「いつかリネオ様がやらかす時が来ると思ってましたが、案外早かったですね」
「ラピス様はさっさと逃げて正解でしたね。こんな人と結婚なんてしたら苦労続きだったろうし」
誰がお前たちを雇ってやっていたと思っているんだ!
薄情な奴ら過ぎる。
「はい、リネオ。今晩の食事よ」
何これ……。固めのパンと野菜のクズしか入ってないスープが出てきた。
柔らかいふわふわなパンは?
甘くてとろりとしたポタージュは?
濃いソースがかかった肉汁たっぷりの牛肉ステーキは?
食後の冷たいシャーベットは?
「我慢してちょうだい、リネオ。今後のためにあまりお金は使えないのよ」
「そんなこと言ったって、昨日もこんな夕飯だったじゃん……」
「昨日は鶏肉のソテーがついていただろ」
そう言って父上がパンを千切ってスープに浸している。
どこか馬鹿にしたような言い方に、僕はむっとした。
「あんなの鶏肉じゃないよ。パサパサしてて臭くて、飲み込むのにどんだけ時間がかかったと思ってんの?」
「まあ、何てことを言うの!? 私が一生懸命焼いたのに……!」
母上がわざとらしく泣きそうな声を出す。あ~、やだやだ。しおらしいところを見せれば許してくれると思ってるのかな?
僕たちのご飯をこれから作っていくのも、掃除も、洗濯もやるのは母上だ。でもこんなんじゃ先行きが不安って言うかさぁ。
安いパンは保存性もあるらしいけど、その分固くて味もいまいち。だから父上と同じように、スープに浸して食べて見るけど……。
「まっずいよ、これぇ。食べられたもんじゃないね」
「リネオ、お前……」
「ねえ、食べ盛りの息子がお腹空かせてるんだよ? もっと食べ応えがあって美味しいのないの~?」
僕は知っているんだ。家具や母上のアクセサリーを売って結構お金が出来たことを。
今後のためにあまり使えないとは言うけど、可愛い息子が空腹を訴えているなら使うべきだよ。
「……分かった」
父上は大きく息を吐いてから、三枚の紙幣を僕に突き出した。
そうそう、こういうこと。材料を買って来ても、どうせ母上じゃまともに作れない。
だったら金を貰って外で食べて来た方がいいでしょ!
「これで足りるか?」
よく分からないけど、まあ一食分にはなるだろ。僕はそれを握り締めて屋敷を出た。
あ~、久しぶりに食べた食べた。それにデザートも食べれて酒も飲めたし、幸せな気分だ。
以前の食事には劣るレベルだけど、母上のまずい料理を食べるよりは全然ましだった。
こんな感じなら平民になってもいけ……。
「あ、あれ?」
屋敷に帰ってみると、どうしてか真っ暗になっていた。父上も母上ももう寝たのかな。
明日の朝食代ももらうつもりだったけど、まあ明日でもいいや。今夜は僕も寝よう……。
おかしいと気付いたのは翌日。いくら待っても父上と母上が起きて来ない。もう昼近くだ。
ふざけんな、僕はお腹が空いたぞ! 叩き起こすついでに二人を起こしに行ったけど、寝室はもぬけの殻だった。
もしかして僕への嫌がらせで、どこか高い宿屋に泊まりに行ったのか!?
そう思ってキッチンに残されていたスープの残りを飲みながら、あいつらの帰りを待った。
だけどいくら待っても帰って来ない。
……もしかして僕、置いて行かれた?
70
お気に入りに追加
4,617
あなたにおすすめの小説
邪魔者はどちらでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。
私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。
ある日、そんな私に婚約者ができる。
相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。
初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。
そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。
その日から、私の生活は一変して――
※過去作の改稿版になります。
※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。
※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください
八代奏多
恋愛
伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。
元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。
出ていくのは、貴方の方ですわよ?
※カクヨム様でも公開しております。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます
tartan321
恋愛
最後の結末は??????
本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。
婚約破棄ですか、すでに解消されたはずですが
ふじよし
恋愛
パトリツィアはティリシス王国ラインマイヤー公爵の令嬢だ。
隣国ルセアノ皇国との国交回復を祝う夜会の直前、パトリツィアは第一王子ヘルムート・ビシュケンスに婚約破棄を宣言される。そのかたわらに立つ見知らぬ少女を自らの結婚相手に選んだらしい。
けれど、破棄もなにもパトリツィアとヘルムートの婚約はすでに解消されていた。
※現在、小説家になろうにも掲載中です
舞台装置は壊れました。
ひづき
恋愛
公爵令嬢は予定通り婚約者から破棄を言い渡された。
婚約者の隣に平民上がりの聖女がいることも予定通り。
『お前は未来の国王と王妃を舞台に押し上げるための装置に過ぎん。それをゆめゆめ忘れるな』
全てはセイレーンの父と王妃の書いた台本の筋書き通り───
※一部過激な単語や設定があるため、R15(保険)とさせて頂きます
2020/10/30
お気に入り登録者数50超え、ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))
2020/11/08
舞台装置は壊れました。の続編に当たる『不確定要素は壊れました。』を公開したので、そちらも宜しくお願いします。
せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから
甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。
であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。
だが、
「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」
婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。
そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。
気がつけば、セリアは全てを失っていた。
今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。
さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。
失意のどん底に陥ることになる。
ただ、そんな時だった。
セリアの目の前に、かつての親友が現れた。
大国シュリナの雄。
ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。
彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。
【完結】妹ざまぁ小説の主人公に転生した。徹底的にやって差し上げます。
鏑木 うりこ
恋愛
「アンゼリカ・ザザーラン、お前との婚約を破棄させてもらう!」
ええ、わかっていますとも。私はこの瞬間の為にずっと準備をしてきましたから。
私の婚約者であったマルセル王太子に寄り添う義妹のリルファ。何もかも私が読んでいたざまぁ系小説と一緒ね。
内容を知っている私が、ざまぁしてやる側の姉に転生したって言うことはそう言うことよね?私は小説のアンゼリカほど、気弱でも大人しくもないの。
やるからには徹底的にやらせていただきますわ!
HOT1位、恋愛1位、人気1位ありがとうございます!こんなに高順位は私史上初めてでものすごく光栄です!うわーうわー!
文字数45.000ほどで2021年12月頃の完結済み中編小説となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる