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22.平民が勉強!?(リネオ視点)
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僕の家が貴族じゃなくなると知った途端、どいつもこいつも僕たちに冷たくなってしまった。
平民として暮らしていけるわけがない。あんな下等な連中と同じレベルに成り下がるんだよ?
だからマーロア家を助けるようにって、街の奴らに命令しに来たんだよね。なのに全員に断られるとか何これ?
「俺たちは俺たちの生活で精一杯なんです。あんたらの世話なんてしてられるかよ」
「し、しろよ! 僕らは貴族だったんだぞ! 平民になっても敬うべきで……」
「そんな決まり、この国にはないですよ。つーか、あんたあんだけ署名集まったのは誰のせいかって理解してないんですね」
喫茶店の店主が馬鹿にしたように溜め息をつく。こんな応対をされたのは初めてだ……。
「爵位剥奪を求める署名ってのは結構ありますけど、歴代でも最多だそうですよ。馬鹿息子の印象が最悪すぎてね」
「それ僕のことか!? そんな口利いてると父上に言って……」
「言ってどうすんですか。もう少しで平民になるお父上に何が出来ると?」
くっそ、腹立つ! 貴族のありがたみを全く理解してないな、この親父。だから僕たちがこんなに困ってるのに冷たいんだ……。
誰か僕に味方をしてくれる奴いないの? って店内を見回していると、違和感に気付いた。
な、何で本読んでる奴が多いんだ……?
前までは喋る奴らが多くて、賑やかだった喫茶店もやけに静かだ。
「なぁ、これ何て読むんだ?」
「それは『林檎の木』よ。この単語は木って意味なの」
「へえ。じゃあこっちは?」
「んーと……何だったかなぁ……」
小声での会話の内容もこんな感じだ。それを聞いてぞわぞわした。
あいつら言葉もろくに分かんないのに、本を読んでるって何なんだ。読めない本買うくらいなら、食べ物と酒買った方がいいのになぁ~。つーか、その分の金僕に貢いだ方がよくない?
あ、ほら、辞書取り出して単語を調べ始めたよ。あんな立派で分厚いのだって、結構値が張るのに……。
「でも、ありがたいよね。こんなちゃんとした辞書がものすごく安く買えるんだから」
「どっかの店じゃ、食べ物の単語と簡単な会話文纏めた冊子を無料で配布してるんだったよな」
はあ!? 平民がものすごく安くって言っているから、相当な安値じゃないの!?
しかも冊子を配布なんてどうなっているんだろ……。
「マリエッタ様のおかげですよ」
さっきまで散々僕に冷たくしていた店主が話しかけてきた。
マリエッタ? ああ、ラピスはあの王女様にスカウトされて王城に行ってしまったんだっけ……。
「マリエッタ様は、以前からこの国の教育水準を問題視していたみたいでしてね。同じ考えを持っていた執政官たちと色々と動いているんです。最初は静観していた国王もこうしちゃいられないって、教育制度の改定とかを検討しているそうですよ」
「教育って……平民も!?」
「見りゃ分かんでしょ」
「そ、そんなの貴族が認めるわけないだろ」
平民に余計な知識が身に付いて困るのは貴族だ。使い勝手のいい連中の頭がよくなったら、扱いづらくなるんだよ。
「あんたの言う通り、貴族の一部がいちゃもんを付けたみたいですけどね。でも貴族の学のなさも深刻化していたんで、賛成する声が多数だったとか」
え、何その視線。まさか……僕を学がない貴族って言いたいのか!?
僕はまだ勉強していないだけだ! 家督を継ぐ頃になったら厳しい勉強をして、一人前になる予定だったんだっ!
「家督を継ぐ間際になってからようやく勉学に励むようになっても、大して身に付かず引退した親や執事に暫く頼りっきりの駄目貴族ばかりで……」
僕はそんな奴らとは違う。
やる時はやる男なんだ! だからそんな僕を平民にしたこの国は絶対に間違ってる……!
平民として暮らしていけるわけがない。あんな下等な連中と同じレベルに成り下がるんだよ?
だからマーロア家を助けるようにって、街の奴らに命令しに来たんだよね。なのに全員に断られるとか何これ?
「俺たちは俺たちの生活で精一杯なんです。あんたらの世話なんてしてられるかよ」
「し、しろよ! 僕らは貴族だったんだぞ! 平民になっても敬うべきで……」
「そんな決まり、この国にはないですよ。つーか、あんたあんだけ署名集まったのは誰のせいかって理解してないんですね」
喫茶店の店主が馬鹿にしたように溜め息をつく。こんな応対をされたのは初めてだ……。
「爵位剥奪を求める署名ってのは結構ありますけど、歴代でも最多だそうですよ。馬鹿息子の印象が最悪すぎてね」
「それ僕のことか!? そんな口利いてると父上に言って……」
「言ってどうすんですか。もう少しで平民になるお父上に何が出来ると?」
くっそ、腹立つ! 貴族のありがたみを全く理解してないな、この親父。だから僕たちがこんなに困ってるのに冷たいんだ……。
誰か僕に味方をしてくれる奴いないの? って店内を見回していると、違和感に気付いた。
な、何で本読んでる奴が多いんだ……?
前までは喋る奴らが多くて、賑やかだった喫茶店もやけに静かだ。
「なぁ、これ何て読むんだ?」
「それは『林檎の木』よ。この単語は木って意味なの」
「へえ。じゃあこっちは?」
「んーと……何だったかなぁ……」
小声での会話の内容もこんな感じだ。それを聞いてぞわぞわした。
あいつら言葉もろくに分かんないのに、本を読んでるって何なんだ。読めない本買うくらいなら、食べ物と酒買った方がいいのになぁ~。つーか、その分の金僕に貢いだ方がよくない?
あ、ほら、辞書取り出して単語を調べ始めたよ。あんな立派で分厚いのだって、結構値が張るのに……。
「でも、ありがたいよね。こんなちゃんとした辞書がものすごく安く買えるんだから」
「どっかの店じゃ、食べ物の単語と簡単な会話文纏めた冊子を無料で配布してるんだったよな」
はあ!? 平民がものすごく安くって言っているから、相当な安値じゃないの!?
しかも冊子を配布なんてどうなっているんだろ……。
「マリエッタ様のおかげですよ」
さっきまで散々僕に冷たくしていた店主が話しかけてきた。
マリエッタ? ああ、ラピスはあの王女様にスカウトされて王城に行ってしまったんだっけ……。
「マリエッタ様は、以前からこの国の教育水準を問題視していたみたいでしてね。同じ考えを持っていた執政官たちと色々と動いているんです。最初は静観していた国王もこうしちゃいられないって、教育制度の改定とかを検討しているそうですよ」
「教育って……平民も!?」
「見りゃ分かんでしょ」
「そ、そんなの貴族が認めるわけないだろ」
平民に余計な知識が身に付いて困るのは貴族だ。使い勝手のいい連中の頭がよくなったら、扱いづらくなるんだよ。
「あんたの言う通り、貴族の一部がいちゃもんを付けたみたいですけどね。でも貴族の学のなさも深刻化していたんで、賛成する声が多数だったとか」
え、何その視線。まさか……僕を学がない貴族って言いたいのか!?
僕はまだ勉強していないだけだ! 家督を継ぐ頃になったら厳しい勉強をして、一人前になる予定だったんだっ!
「家督を継ぐ間際になってからようやく勉学に励むようになっても、大して身に付かず引退した親や執事に暫く頼りっきりの駄目貴族ばかりで……」
僕はそんな奴らとは違う。
やる時はやる男なんだ! だからそんな僕を平民にしたこの国は絶対に間違ってる……!
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