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18.初めての経験
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「え、誰……」
レアンドル様の登場にリネオ様が困惑していますが、私も驚いています。どうしてこの方まで参戦してきたのでしょう?
「執政官を勤めさせていただいている者です。国王陛下の命により、ラピス様の教育係も兼任しております」
「そうじゃない。これは僕とラピスの話なのに、無関係のお前が出て来るっておかしいでしょ?」
「関係? 大いにあります。あなた方のせいで勉強時間が減ったのです。おかげでスケジュールを練り直す必要が出ました」
そう言ってレアンドル様は私の隣に腰を下ろしました。
「そもそもの話、あなたは何故今も尚ラピス様との復縁を諦めていないのですか。見苦しい」
「それは……僕にとってラピスは必要な存在で……」
「そんな相手がいるのに他の令嬢を婚約者にしたと?」
「エヴァリアも大好きだから……」
「つまり、そちらの方が女性として大事ということですね」
レアンドル様が冷たく言い放つと、リネオ様はむっとした様子で反論しました。
「何言ってんだよ。僕はラピスのことをちゃんと女の子として大事にしてるよ。綺麗だしスタイルもいいし……」
「外見のことを言っているわけではありません。……あなた、ラピス様ではなく仕事が出来て、自分を甘やかしてくれる都合のいい女性が欲しいだけなのでは?」
「そ、そんなことは……」
レアンドル様が来てから急にリネオ様が弱腰になりましたね。視線も定まらず、きょろきょろしています。時折私に助けを求めるように見てきますが無視です。
レアンドル様もそのことに気付いているらしく、リネオ様へ冷めた視線を向けます。
「どうしました? あなた曰く無関係の私が口出しをしているのです。もっと腹を立てて言い返すと予想していたのですが」
「ぼ、僕は将来公爵となる人間だぞ? たかが執政官如きに腹を立てているようじゃ……」
「今まであなたに対して、こうやって強気に出る同性がいなかったのでは? 父親や使用人のように甘やかすか、公爵家の権威に屈して媚び諂う者ばかりで、正面から敵意を向けられる経験は初めて。違いますか?」
ああ、なるほど。強気に出られると、どうしていいか分からなくなってしまうのですね……。
「い、いい加減にしろよ。あんまり調子に乗ると父上にお前のことを言い付けてやる!」
「……そんな無駄なことをしている暇があれば、平民たちからの信頼を取り戻すことをお考えになった方がよろしいかと」
「は……? どういう意味だよ」
「そのくらい、ご自分でお考えなさい」
「酷いです! どうしてそんな分かりづらい言い方をするんですか!?」
エヴァリア様が声を上げました。そこを指摘している場合ではないと思いますが。
そして彼女の発言は、レアンドル様の機嫌をますます降下させたようです。絶対零度の眼差しをエヴァリア様へ向けました。
「あなたの噂はよく耳にしていますよ、エヴァリア嬢。その容姿の虜になったヒスライン男爵の一存であなたを養子に迎えたとか」
「は、はい。お父様は私の恩人です。こんな私でも幸せになれたんですから」
「だったら普通、男爵の恩に報いるべく勉学に励むのではないですか? いつまで経っても知識も教養も身に付かないと、悪い評判ばかり立っています」
「そんな……私だって頑張って一生懸命努力してます!」
「そうだ! エヴァリアを悪く言うな! 平民を馬鹿にするなんて──」
リネオ様の文句を遮るように、レアンドル様は「面会終了の時間です」と一言。
レアンドル様が来てからは時間があっという間に過ぎていました。
「さあ、行きますよラピス様」
「ええ……」
「それと最後に一つ」
応接の間を出て行く間際、レアンドル様はリネオ様へと振り返りました。
「私は平民だからと馬鹿にするつもりはありません。身分低くても優秀な人間は優秀ですので。どこかの元平民と違って」
そう仰ると、エヴァリア様は顔を真っ赤にして両手で顔を覆ってしまいました。リネオ様はエヴァリア様の肩に手を置いてレアンドル様を睨み付けています。
……こうして見るとお似合いですねぇ。
レアンドル様の登場にリネオ様が困惑していますが、私も驚いています。どうしてこの方まで参戦してきたのでしょう?
「執政官を勤めさせていただいている者です。国王陛下の命により、ラピス様の教育係も兼任しております」
「そうじゃない。これは僕とラピスの話なのに、無関係のお前が出て来るっておかしいでしょ?」
「関係? 大いにあります。あなた方のせいで勉強時間が減ったのです。おかげでスケジュールを練り直す必要が出ました」
そう言ってレアンドル様は私の隣に腰を下ろしました。
「そもそもの話、あなたは何故今も尚ラピス様との復縁を諦めていないのですか。見苦しい」
「それは……僕にとってラピスは必要な存在で……」
「そんな相手がいるのに他の令嬢を婚約者にしたと?」
「エヴァリアも大好きだから……」
「つまり、そちらの方が女性として大事ということですね」
レアンドル様が冷たく言い放つと、リネオ様はむっとした様子で反論しました。
「何言ってんだよ。僕はラピスのことをちゃんと女の子として大事にしてるよ。綺麗だしスタイルもいいし……」
「外見のことを言っているわけではありません。……あなた、ラピス様ではなく仕事が出来て、自分を甘やかしてくれる都合のいい女性が欲しいだけなのでは?」
「そ、そんなことは……」
レアンドル様が来てから急にリネオ様が弱腰になりましたね。視線も定まらず、きょろきょろしています。時折私に助けを求めるように見てきますが無視です。
レアンドル様もそのことに気付いているらしく、リネオ様へ冷めた視線を向けます。
「どうしました? あなた曰く無関係の私が口出しをしているのです。もっと腹を立てて言い返すと予想していたのですが」
「ぼ、僕は将来公爵となる人間だぞ? たかが執政官如きに腹を立てているようじゃ……」
「今まであなたに対して、こうやって強気に出る同性がいなかったのでは? 父親や使用人のように甘やかすか、公爵家の権威に屈して媚び諂う者ばかりで、正面から敵意を向けられる経験は初めて。違いますか?」
ああ、なるほど。強気に出られると、どうしていいか分からなくなってしまうのですね……。
「い、いい加減にしろよ。あんまり調子に乗ると父上にお前のことを言い付けてやる!」
「……そんな無駄なことをしている暇があれば、平民たちからの信頼を取り戻すことをお考えになった方がよろしいかと」
「は……? どういう意味だよ」
「そのくらい、ご自分でお考えなさい」
「酷いです! どうしてそんな分かりづらい言い方をするんですか!?」
エヴァリア様が声を上げました。そこを指摘している場合ではないと思いますが。
そして彼女の発言は、レアンドル様の機嫌をますます降下させたようです。絶対零度の眼差しをエヴァリア様へ向けました。
「あなたの噂はよく耳にしていますよ、エヴァリア嬢。その容姿の虜になったヒスライン男爵の一存であなたを養子に迎えたとか」
「は、はい。お父様は私の恩人です。こんな私でも幸せになれたんですから」
「だったら普通、男爵の恩に報いるべく勉学に励むのではないですか? いつまで経っても知識も教養も身に付かないと、悪い評判ばかり立っています」
「そんな……私だって頑張って一生懸命努力してます!」
「そうだ! エヴァリアを悪く言うな! 平民を馬鹿にするなんて──」
リネオ様の文句を遮るように、レアンドル様は「面会終了の時間です」と一言。
レアンドル様が来てからは時間があっという間に過ぎていました。
「さあ、行きますよラピス様」
「ええ……」
「それと最後に一つ」
応接の間を出て行く間際、レアンドル様はリネオ様へと振り返りました。
「私は平民だからと馬鹿にするつもりはありません。身分低くても優秀な人間は優秀ですので。どこかの元平民と違って」
そう仰ると、エヴァリア様は顔を真っ赤にして両手で顔を覆ってしまいました。リネオ様はエヴァリア様の肩に手を置いてレアンドル様を睨み付けています。
……こうして見るとお似合いですねぇ。
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