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15.頼み事
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手紙を破り捨てたい衝動に駆られましたが、ぐっと堪えました。
私の精神的負担と引き換えに、ただでさえ有利に進むと思われていた裁判において更なる武器を手に入れたのです。
そこは感謝しています。本人に申し上げるつもりはありませんが。
それと礼儀として返事は出しておかなければなりません。
リネオ様の愛人にはならないこと、裁判で争うつもりでいることを出来るだけ感情が籠もらないように綴るだけでかなり疲れました。手紙でここまでの疲労感です。実際に会っていたらどうなっていたことか。
返信を書き終え、手紙をメイドに託してようやく勉強再開です。
……と思いきや、レアンドル様が意外なことを仰いました。
「先程の続きは明日にしましょう。本日はゆっくりお休みください」
「よろしいのですか?」
「あの手紙のせいであなただけではなく、私も疲れました」
レアンドル様は溜め息をつきつつ、書物を本棚に戻していきます。
休息を摂ることも大事でしょう。お言葉に甘えてさせていただくことにしました。
「ありがとうございます、レアンドル様」
「私のためでもありますので、礼はいりません。……その代わり、一つ頼みたいことがあります」
「ええ。私に出来ることでしたら何でもお申し付けください」
レアンドル様にはお世話になっていますから。手助け出来ることがあれば、喜んでしたいと思います。
……何だか妙なことになりました。何故私はレアンドル様と共に街を歩いているのでしょうか。
ツィトー領以外の街を歩くのは初めてです。見慣れない光景に足がついつい止まりそうになってしまいます。
「はぐれますよ。ぼんやりしないでください」
「も、申し訳ありません」
ですが、どこに連れて行かれるのでしょうか。この街は治安がいいようですし、怪しい場所ではないと思いますが。
「……この店です」
レアンドル様が立ち止まったのは、木造建てのお店でした。お菓子屋なのでしょうか、甘い香りが店の外にまで漂ってきます。
「欲しいものがありましたら仰ってください。値段、数量は問いませんので」
「それが頼みたいこと……ですか?」
「ええ。事情があって、この店の売上に貢献しなければならないのですよ。それに協力してください」
「でしたら、早く仰ってくださればよかったのに……」
「言っていたら、あなたお金持って来ていたでしょう。私が頼んだことなので、私が奢らないと筋が通りません」
レアンドル様はそう仰ると、先に店の中へ入って行きました。これは大人しく奢られた方がよさそうですね。
私も店内に足を踏み入れると、甘い香りが更に強くなりました。人気店のようで、多くの客で賑わっています。
会計を行っているのは三角巾を着けた女性でした。彼女はレアンドル様と視線が合うと、嬉しそうに笑顔を浮かべます。
「あら、レンさんじゃない。久しぶり……」
女性はそこで言葉を一旦言葉を止めました。……何でしょうか。私に熱い眼差しを向けているような。
「だ、誰!? その美人さん誰!?」
「落ち着いてください、マドレーヌ。順を追って説明しますから……」
「ちょ、ちょっと待って。会計が落ち着いたらじっくり話聞くから、今のうちにお菓子選んでて!」
どうやらレアンドル様と彼女は知り合いのようです。
「ラピス様あの人のことはあまり気にせず、どれにするか決めておいてください」
「はい……」
そうは言いますが、たくさん種類があって悩んでしまいます。
クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子だけではなく、ミルククリームやカスタードクリームをたっぷり使った生菓子、新鮮そうな果実を使ったゼリーなども揃っています。
この店の一番人気兼名物はシュー・ア・ラ・クレームらしいですね。中に入っているクリームが絶品だとか。女性の殆どが買っているようです。
……こちらと、後は林檎のゼリーにしておきますか。
私の精神的負担と引き換えに、ただでさえ有利に進むと思われていた裁判において更なる武器を手に入れたのです。
そこは感謝しています。本人に申し上げるつもりはありませんが。
それと礼儀として返事は出しておかなければなりません。
リネオ様の愛人にはならないこと、裁判で争うつもりでいることを出来るだけ感情が籠もらないように綴るだけでかなり疲れました。手紙でここまでの疲労感です。実際に会っていたらどうなっていたことか。
返信を書き終え、手紙をメイドに託してようやく勉強再開です。
……と思いきや、レアンドル様が意外なことを仰いました。
「先程の続きは明日にしましょう。本日はゆっくりお休みください」
「よろしいのですか?」
「あの手紙のせいであなただけではなく、私も疲れました」
レアンドル様は溜め息をつきつつ、書物を本棚に戻していきます。
休息を摂ることも大事でしょう。お言葉に甘えてさせていただくことにしました。
「ありがとうございます、レアンドル様」
「私のためでもありますので、礼はいりません。……その代わり、一つ頼みたいことがあります」
「ええ。私に出来ることでしたら何でもお申し付けください」
レアンドル様にはお世話になっていますから。手助け出来ることがあれば、喜んでしたいと思います。
……何だか妙なことになりました。何故私はレアンドル様と共に街を歩いているのでしょうか。
ツィトー領以外の街を歩くのは初めてです。見慣れない光景に足がついつい止まりそうになってしまいます。
「はぐれますよ。ぼんやりしないでください」
「も、申し訳ありません」
ですが、どこに連れて行かれるのでしょうか。この街は治安がいいようですし、怪しい場所ではないと思いますが。
「……この店です」
レアンドル様が立ち止まったのは、木造建てのお店でした。お菓子屋なのでしょうか、甘い香りが店の外にまで漂ってきます。
「欲しいものがありましたら仰ってください。値段、数量は問いませんので」
「それが頼みたいこと……ですか?」
「ええ。事情があって、この店の売上に貢献しなければならないのですよ。それに協力してください」
「でしたら、早く仰ってくださればよかったのに……」
「言っていたら、あなたお金持って来ていたでしょう。私が頼んだことなので、私が奢らないと筋が通りません」
レアンドル様はそう仰ると、先に店の中へ入って行きました。これは大人しく奢られた方がよさそうですね。
私も店内に足を踏み入れると、甘い香りが更に強くなりました。人気店のようで、多くの客で賑わっています。
会計を行っているのは三角巾を着けた女性でした。彼女はレアンドル様と視線が合うと、嬉しそうに笑顔を浮かべます。
「あら、レンさんじゃない。久しぶり……」
女性はそこで言葉を一旦言葉を止めました。……何でしょうか。私に熱い眼差しを向けているような。
「だ、誰!? その美人さん誰!?」
「落ち着いてください、マドレーヌ。順を追って説明しますから……」
「ちょ、ちょっと待って。会計が落ち着いたらじっくり話聞くから、今のうちにお菓子選んでて!」
どうやらレアンドル様と彼女は知り合いのようです。
「ラピス様あの人のことはあまり気にせず、どれにするか決めておいてください」
「はい……」
そうは言いますが、たくさん種類があって悩んでしまいます。
クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子だけではなく、ミルククリームやカスタードクリームをたっぷり使った生菓子、新鮮そうな果実を使ったゼリーなども揃っています。
この店の一番人気兼名物はシュー・ア・ラ・クレームらしいですね。中に入っているクリームが絶品だとか。女性の殆どが買っているようです。
……こちらと、後は林檎のゼリーにしておきますか。
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