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10.あれ?何この雰囲気(リネオ視点)
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「あ、あのリネオ様、私あれが欲しいです……!」
街の宝石店に入り、数分程経ってからエヴァリアがおねだりをした。
彼女が指を差したのは、店の壁に飾られているネックレス。七種類のダイアモンドを使っているらしく、とても綺麗だ。値段はないけれど……。
側にいた店員に訊いてみる。
「ねえ、あのネックレス欲しいんだけどいくらするの?」
「申し訳ありません、お客様。あちらは非売品になっていまして……」
頭を下げる店員。するとエヴァリアが悲しそうに顔を歪めた。
「そう……ですか。でしたら仕方ありませんね」
「エヴァリア、他ので欲しいのはある?」
「ええと……今のところはないです……」
このままだと何も買わないで店を出ることになる。こういう店に入ったら、何か一つでも買ってあげるのが貴族の男としてのマナーなのに。
「あの子が欲しいのはあれしかないんだよ。非売品だか何だか知らないけど、僕に買い取らせてよ!」
「ですが、あちらは……」
「そんな渋っててもいいのかな~? 僕、マーロア公爵家の人間なんだけどな~?」
家の名前を出した途端、店員は「お、お待ちください」と言って店の奥に引っ込んだ。なーんだ、無理を言えばどうにかなるんじゃん。
待っている間、エヴァリアが「かっこよかったです、リネオ様」と僕を褒めてくれた。
以前、これに近いことがあった時、ラピスは「あれでは脅しです。無暗にマーロア家の名前を出すのはおやめになった方がよろしいかと」なんて嫌味を言ったんだ!
自分が男爵家だからって僻まなくたっていいのに。あー女は怖いね。
数分経ってから店長が出て来た。待たせすぎだろ。数分あったら、近くにある喫茶店に入ることだって出来たんだぞ。
僕が不機嫌な態度で接していると、店長は何と僕をお待たせしてしまった詫びとして、タダでネックレスをプレゼントすると言ってくれた。
これにはエヴァリアも驚いている。
「嬉しい……ありがとうございます、リネオ様!」
「僕もエヴァリアに喜んでもらえて嬉しいよ」
ネックレスをその場で包装されそうになったから僕は止めた。今ここでエヴァリアが着けたところを見たかったし。
七色の光るダイアモンドのネックレスと、まるでお花の妖精さんみたいなエヴァリア。とっても似合っている。
その後に喫茶店にも寄って、るんるん気分で屋敷に帰る。
すると弁護士がうちに来ていた。そういえば今日ツィトー家に慰謝料を払うか、愛人になるか決めろって返事をさせるんだっけ。ま、ラピスは僕の愛人決定なんですけど!
「リ、リネオ様、お待ちしておりました」
僕に頭を下げる弁護士。隣には困惑の表情を浮かべる父上の姿もある。
何だろこの空気。ツィトー家からの返事は?
「実はリネオ様にお伝えしたいことがございまして……」
「うんうん! 分かっているよ君が言いたいことは」
「今回の裁判は非常に難しいものとなるかもしれません」
顔色を悪くしながら弁護士が言う。
え? どういうこと? ラピスに愛人断られたから裁判やるの?
しかも裁判所も僕たちの味方なんでしょ?
ラピスを助けてくれる奴なんて誰もいないはず……。
「本日の早朝、裁判官の数人が捕縛されて王城へ連行されたのです」
「ほ、捕縛?」
「その裁判官というのは全員、この家と繋がりがあった者たちでして……その中には今回の裁判を担当する者もいます」
「じゃあ、他の裁判官に頼むしかないね」
マーロア公爵家に関係がなくても大丈夫。とりあえず大金を渡しておけば……。
「それは既に決まっているようです。……フレール裁判官とのことでした」
ん? フレール? どこかで聞いたことがあるような……。
街の宝石店に入り、数分程経ってからエヴァリアがおねだりをした。
彼女が指を差したのは、店の壁に飾られているネックレス。七種類のダイアモンドを使っているらしく、とても綺麗だ。値段はないけれど……。
側にいた店員に訊いてみる。
「ねえ、あのネックレス欲しいんだけどいくらするの?」
「申し訳ありません、お客様。あちらは非売品になっていまして……」
頭を下げる店員。するとエヴァリアが悲しそうに顔を歪めた。
「そう……ですか。でしたら仕方ありませんね」
「エヴァリア、他ので欲しいのはある?」
「ええと……今のところはないです……」
このままだと何も買わないで店を出ることになる。こういう店に入ったら、何か一つでも買ってあげるのが貴族の男としてのマナーなのに。
「あの子が欲しいのはあれしかないんだよ。非売品だか何だか知らないけど、僕に買い取らせてよ!」
「ですが、あちらは……」
「そんな渋っててもいいのかな~? 僕、マーロア公爵家の人間なんだけどな~?」
家の名前を出した途端、店員は「お、お待ちください」と言って店の奥に引っ込んだ。なーんだ、無理を言えばどうにかなるんじゃん。
待っている間、エヴァリアが「かっこよかったです、リネオ様」と僕を褒めてくれた。
以前、これに近いことがあった時、ラピスは「あれでは脅しです。無暗にマーロア家の名前を出すのはおやめになった方がよろしいかと」なんて嫌味を言ったんだ!
自分が男爵家だからって僻まなくたっていいのに。あー女は怖いね。
数分経ってから店長が出て来た。待たせすぎだろ。数分あったら、近くにある喫茶店に入ることだって出来たんだぞ。
僕が不機嫌な態度で接していると、店長は何と僕をお待たせしてしまった詫びとして、タダでネックレスをプレゼントすると言ってくれた。
これにはエヴァリアも驚いている。
「嬉しい……ありがとうございます、リネオ様!」
「僕もエヴァリアに喜んでもらえて嬉しいよ」
ネックレスをその場で包装されそうになったから僕は止めた。今ここでエヴァリアが着けたところを見たかったし。
七色の光るダイアモンドのネックレスと、まるでお花の妖精さんみたいなエヴァリア。とっても似合っている。
その後に喫茶店にも寄って、るんるん気分で屋敷に帰る。
すると弁護士がうちに来ていた。そういえば今日ツィトー家に慰謝料を払うか、愛人になるか決めろって返事をさせるんだっけ。ま、ラピスは僕の愛人決定なんですけど!
「リ、リネオ様、お待ちしておりました」
僕に頭を下げる弁護士。隣には困惑の表情を浮かべる父上の姿もある。
何だろこの空気。ツィトー家からの返事は?
「実はリネオ様にお伝えしたいことがございまして……」
「うんうん! 分かっているよ君が言いたいことは」
「今回の裁判は非常に難しいものとなるかもしれません」
顔色を悪くしながら弁護士が言う。
え? どういうこと? ラピスに愛人断られたから裁判やるの?
しかも裁判所も僕たちの味方なんでしょ?
ラピスを助けてくれる奴なんて誰もいないはず……。
「本日の早朝、裁判官の数人が捕縛されて王城へ連行されたのです」
「ほ、捕縛?」
「その裁判官というのは全員、この家と繋がりがあった者たちでして……その中には今回の裁判を担当する者もいます」
「じゃあ、他の裁判官に頼むしかないね」
マーロア公爵家に関係がなくても大丈夫。とりあえず大金を渡しておけば……。
「それは既に決まっているようです。……フレール裁判官とのことでした」
ん? フレール? どこかで聞いたことがあるような……。
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