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1.二人の世界ですね
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何となく私とこの人は結ばれないだろうと予感はしていました。
だって、彼からの愛情を感じることがなかったから。
私がどれだけ彼に尽くしても、彼の心が私へ傾くことはありませんでした。
その時はきっと一生やって来ません。
それは仕方のないことだと思いますが……。
「ラピス、君にも彼女を紹介するよ! エヴァリアと言って、ヒスライン男爵のご令嬢なんだ。とっても可愛い子だろう?」
マーロア公爵令息リネオ──私の婚約者の隣には、桃色の髪が可愛らしい少女が微笑んでいます。
エヴァリア様。私も知っています。一年前にヒスライン男爵の養子となった元平民で、貴族の男性の間では密かに人気を集めていました。
「は、初めまして、ラピス様。エヴァリアと申しますっ」
「え、ええ、初めまして……」
「今日はラピス様に言いたいことがあります!」
「言いたい……こと?」
どこか緊張した様子でエヴァリア様は力強く頷きました。私と彼女には何の接点もないはずなのですけど。
それとリネオ様がにやついているのが気になります。どこか悪意を感じさせるそれを不信に思い始めた時でした。
「私、私……リネオ様のことを好きになってしまったんです!」
「そうですか……」
告げられた言葉に意外性はありませんでした。
エヴァリア様の頬はほんのり紅潮していて、何を言われるか見当がついていましたから。
ですが、リネオ様の婚約者である私に堂々と言えることでしょうか。普通なら言えませんよね?
「君との婚約生活は正直味気ないものだった。君はちょっと頭が堅すぎて、会話をしている時に息苦しさを感じていたんだ」
リネオ様がエヴァリア様の味方についているなら話は別ですが。
「それは……申し訳ありませんでした」
「いや、今更謝られてもね。それに僕は君に代わる愛しい人をようやく見付けることが出来た」
リネオ様が両手を広げて謳うように語ります。
彼の言う『愛しい人』が誰を差すのか……聞くまでもありません。エヴァリア様がうっとりとした表情で、リネオ様の肩に両手を置いているのですから。
私の目の前で相思相愛であることをアピールする二人を止める者は誰もいません。
ここはマーロア公爵邸の庭園。たとえメイドや庭師が目撃しても、素知らぬ振りをするでしょう。
私は溜め息をつきたくなるのを我慢して、「私たちの婚約はどうなるのでしょう?」と訊ねました。
「そんなの破棄するに決まっているじゃないか。妻を二人迎えるのは禁じられているからね」
「ご、ごめんなさい、ラピス様。私が悪いんです! 私がリネオ様を好きになってしまったのが……!」
「エヴァリア、君は何も悪くないんだよ。君は僕に人を愛すること、愛されることを教えてくれたんだから……」
「リネオ様……」
私は演劇でも見ているのでしょうか。切なげな顔で互いを見合うリネオ様とエヴァリア様は、すっかり二人だけの世界に入り込んでいます。
だって、彼からの愛情を感じることがなかったから。
私がどれだけ彼に尽くしても、彼の心が私へ傾くことはありませんでした。
その時はきっと一生やって来ません。
それは仕方のないことだと思いますが……。
「ラピス、君にも彼女を紹介するよ! エヴァリアと言って、ヒスライン男爵のご令嬢なんだ。とっても可愛い子だろう?」
マーロア公爵令息リネオ──私の婚約者の隣には、桃色の髪が可愛らしい少女が微笑んでいます。
エヴァリア様。私も知っています。一年前にヒスライン男爵の養子となった元平民で、貴族の男性の間では密かに人気を集めていました。
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「え、ええ、初めまして……」
「今日はラピス様に言いたいことがあります!」
「言いたい……こと?」
どこか緊張した様子でエヴァリア様は力強く頷きました。私と彼女には何の接点もないはずなのですけど。
それとリネオ様がにやついているのが気になります。どこか悪意を感じさせるそれを不信に思い始めた時でした。
「私、私……リネオ様のことを好きになってしまったんです!」
「そうですか……」
告げられた言葉に意外性はありませんでした。
エヴァリア様の頬はほんのり紅潮していて、何を言われるか見当がついていましたから。
ですが、リネオ様の婚約者である私に堂々と言えることでしょうか。普通なら言えませんよね?
「君との婚約生活は正直味気ないものだった。君はちょっと頭が堅すぎて、会話をしている時に息苦しさを感じていたんだ」
リネオ様がエヴァリア様の味方についているなら話は別ですが。
「それは……申し訳ありませんでした」
「いや、今更謝られてもね。それに僕は君に代わる愛しい人をようやく見付けることが出来た」
リネオ様が両手を広げて謳うように語ります。
彼の言う『愛しい人』が誰を差すのか……聞くまでもありません。エヴァリア様がうっとりとした表情で、リネオ様の肩に両手を置いているのですから。
私の目の前で相思相愛であることをアピールする二人を止める者は誰もいません。
ここはマーロア公爵邸の庭園。たとえメイドや庭師が目撃しても、素知らぬ振りをするでしょう。
私は溜め息をつきたくなるのを我慢して、「私たちの婚約はどうなるのでしょう?」と訊ねました。
「そんなの破棄するに決まっているじゃないか。妻を二人迎えるのは禁じられているからね」
「ご、ごめんなさい、ラピス様。私が悪いんです! 私がリネオ様を好きになってしまったのが……!」
「エヴァリア、君は何も悪くないんだよ。君は僕に人を愛すること、愛されることを教えてくれたんだから……」
「リネオ様……」
私は演劇でも見ているのでしょうか。切なげな顔で互いを見合うリネオ様とエヴァリア様は、すっかり二人だけの世界に入り込んでいます。
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