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13.企み(ブノワ視点)

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 現在クロード王子は病による症状はほぼ収まりつつあるが、別の問題が出ていた。
 生気を失った目で、ずっと窓の外を眺めているのだ。

 まるで廃人のようだ。
 こっそり様子を見に来た俺は、気味悪さを感じて顔を歪めた。
 エステルを救えなかった自責の念で精神崩壊を起こしたのだろうか。
 訝しむ俺に看病役のメイドがこんなことを教えてくれた。

「クロード王子殿下は、エステル元医官長を救おうとしました。それは心の病による乱心だとされ、精神を安定させるための薬を服用されています」
「……薬を飲んであの有り様か?」

 呆れたように言う俺に、メイドは苦笑を浮かべた。

「あれは薬の副作用によるものです。妙なことを考えることがない分、思考能力を奪ってしまうようでして……」

 薬というより、もはや毒だ。
 モーリスたちはそんなものを王族に飲ませているのかと、俺は笑ってしまった。
 いや国王陛下の指示によるものかもしれないが。

 だが薬をやめさせればクロード王子は正気を取り戻し、都合の悪いことをべらべらと喋り始める。
 少し心苦しいが、あの人には消えてもらった方がいい。

 俺は去り際にもう一度クロード王子を見て、凍り付いた。
 ぼやけた表情で俺をじぃ、と見詰めていたのだ。
 まるで俺の考えを見透かしているような……。

 いいや、そんなことあるはずがない。
 俺はクロード王子を鋭く睨み付けてから立ち去った。


 だが今のクロード王子が隙だらけだと分かったのは、大きな収穫だ。
 モーリスたちと相談して、毎食後飲む薬に少しずつ毒を入れることにした。
 体内に一定量蓄積されると、死に至る効果がある。
 中毒を起こすと咳や胸の痛み、発疹などの症状が現れる。
 流行り病の症状と同じだ。

「最近のクロードお兄様は気持ちが悪いです。あんな人が王族なんて恥ずかしい……」

 ナデージュ王女の兄嫌いもますます加速していることだし、医官たちには早速明日から作戦を開始してもらおう。



 だがその必要はなくなった。
 この日の夜、クロード王子は自ら命を絶ったのである。
 発覚したのは翌朝のことだった。

「あ、朝、部屋に入ったら王子がいなくなっていたんです。それで窓が全開になっていたので、も、もしかしてって下を見てみたら王子が……王子が……!」

 第一発見者のメイドは発狂寸前だった。
 窓から飛び降りて死んだクロード王子は、悲惨なことになっていたそうだ。
 特に顔の損傷が酷く、衣服でクロード王子だと判断された。

 自殺の理由は不明。遺書も残されていない。
 不可解な死だが、俺や医官たちはほっと胸を撫で下ろしていた。

 出来ることなら、人殺しなんて真似したくないからな。
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