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6. 嫌いだった(ナデージュ視点)
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女性とは常に可愛らしく、美しくいればそれで十分だと思うの。
だって女性のくせに頭がいいだなんて、男性に失礼でしょう?
彼らの役目を奪ってしまうかもしれないんだもの。
これは私だけの考えじゃない。
この国そのものにそういった思想が根付いていた。
だから私は、エステルが以前から気に入らなかった。
王宮医官というだけじゃなくて、それらを纏める医官長。
私より二つ歳上なだけで、そこまで上り詰めるほどの才能。
しかも婚約者は大臣の息子。
皆がエステルを「我が国初の女性医官長」、「才ある淑女」、「生きる国宝」と言って賞賛する。
ほんの少し可愛い程度なのに、ちやほやされてばかり。
彼女の名前は他国にも知られていて、二年前──まだ病が流行る前には隣国に招かれたこともあった。
エステルがあまりにも優秀なものだから、国民の考えも少しずつ変わろうとしていた。
女性も自由に学び、働き、社会に進出する時代じゃないかって。
そんなことを言うのは、クロードお兄様くらいだったのに!
私は勉強なんてするつもりもないし、政治なんてどうでもいい。
そんなのお父様が何とかしてくれるもの。
でもエステルのせいで、それだけじゃ駄目な世の中になってしまうかもしれない。
嫌い。嫌いよ、エステルなんて!
イライラしている時に優しく声をかけてくれたのがブノワ様。エステルの結婚相手。
ブノワ様はご両親が勝手に決めた婚約に不満があって、エステルもそんなに好きじゃなかったみたい。
私たちはすぐに深い関係になった。
けれど公には出来ない秘密の仲。
私だって、いつか他の誰かと結婚しなければならない。
どうしたらブノワ様とずっといられるのかしら。
そんな悩みとも、もうおさらば。
邪魔なエステルは死んで、ブノワ様は晴れて自由の身。
お父様とお母様も私たちの婚約を認めてくれた。
エステルのことで心に傷を負ったブノワ様を、私が慰め続けたって言ったのが効いたのかもしれない。
私たちが互いの部屋に行き来しても、誰も変な目で見ない。
一日中傍にいても許される幸せな日々。
エステルが処刑された後も、新聞にはエステルを罵る記事が必ず掲載されていて面白い。
皆読みたがるんですって。
何の悩みもないし、あとは結婚式を挙げるだけ。
病だって怖くないわ。
新しい医官たちが「特効薬は間もなく完成する」って言っていたもの。
今日は何をしようかしら。
頭の中で予定を立てていると、何だか城の中が騒がしいことに気付く。
世話役のメイドに聞いてみると、隣国の医官たちが来ていると教えられた。
……大変だわ。
「私もご挨拶しなくては!」
メイドに命令して急いで身支度を整えさせる。
お気に入りのドレスに着替え、化粧を直してドレスに合った髪型に変えた。
一緒にお茶会をした公爵家の令嬢が言っていたのよ。
あの国には美形の医官がいるって。
私はブノワ様一筋だけれど、一応顔を見ておきたかった。
だって女性のくせに頭がいいだなんて、男性に失礼でしょう?
彼らの役目を奪ってしまうかもしれないんだもの。
これは私だけの考えじゃない。
この国そのものにそういった思想が根付いていた。
だから私は、エステルが以前から気に入らなかった。
王宮医官というだけじゃなくて、それらを纏める医官長。
私より二つ歳上なだけで、そこまで上り詰めるほどの才能。
しかも婚約者は大臣の息子。
皆がエステルを「我が国初の女性医官長」、「才ある淑女」、「生きる国宝」と言って賞賛する。
ほんの少し可愛い程度なのに、ちやほやされてばかり。
彼女の名前は他国にも知られていて、二年前──まだ病が流行る前には隣国に招かれたこともあった。
エステルがあまりにも優秀なものだから、国民の考えも少しずつ変わろうとしていた。
女性も自由に学び、働き、社会に進出する時代じゃないかって。
そんなことを言うのは、クロードお兄様くらいだったのに!
私は勉強なんてするつもりもないし、政治なんてどうでもいい。
そんなのお父様が何とかしてくれるもの。
でもエステルのせいで、それだけじゃ駄目な世の中になってしまうかもしれない。
嫌い。嫌いよ、エステルなんて!
イライラしている時に優しく声をかけてくれたのがブノワ様。エステルの結婚相手。
ブノワ様はご両親が勝手に決めた婚約に不満があって、エステルもそんなに好きじゃなかったみたい。
私たちはすぐに深い関係になった。
けれど公には出来ない秘密の仲。
私だって、いつか他の誰かと結婚しなければならない。
どうしたらブノワ様とずっといられるのかしら。
そんな悩みとも、もうおさらば。
邪魔なエステルは死んで、ブノワ様は晴れて自由の身。
お父様とお母様も私たちの婚約を認めてくれた。
エステルのことで心に傷を負ったブノワ様を、私が慰め続けたって言ったのが効いたのかもしれない。
私たちが互いの部屋に行き来しても、誰も変な目で見ない。
一日中傍にいても許される幸せな日々。
エステルが処刑された後も、新聞にはエステルを罵る記事が必ず掲載されていて面白い。
皆読みたがるんですって。
何の悩みもないし、あとは結婚式を挙げるだけ。
病だって怖くないわ。
新しい医官たちが「特効薬は間もなく完成する」って言っていたもの。
今日は何をしようかしら。
頭の中で予定を立てていると、何だか城の中が騒がしいことに気付く。
世話役のメイドに聞いてみると、隣国の医官たちが来ていると教えられた。
……大変だわ。
「私もご挨拶しなくては!」
メイドに命令して急いで身支度を整えさせる。
お気に入りのドレスに着替え、化粧を直してドレスに合った髪型に変えた。
一緒にお茶会をした公爵家の令嬢が言っていたのよ。
あの国には美形の医官がいるって。
私はブノワ様一筋だけれど、一応顔を見ておきたかった。
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