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4.クロード王子(ブノワ視点)

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 クロード王子に指摘され、俺は慌てて顔を歪めて悲しんでいるように見せた。

「私だってエステルを、愛しい婚約者を失うのは悲しいです。ですがここまで来たら、誰にも彼女の処刑を止めることは出来ない……そうでしょう?」
「……それは本心から出た言葉か?」
「当然です。たとえエステルが悪女だとしても、彼女への愛は変わりません……」

 胸の辺りを押さえ、振り絞るような声で偽りの愛を語る。
 これで父上たちも騙せてきた。
 おかげで今の俺は『悪女に翻弄された悲しき男』だ。
 エステルの本性を見抜けなかった馬鹿呼ばわりする奴もいるが、殆どの人間は俺に同情的だった。

「……嘘をつくな。君はエステルに愛など持っていないだろう」

 クロード王子が俺を鋭く睨み付ける。

「な、何を仰いますか。この私の想いを疑っているのですか?」
「本当に愛しているのなら、エステルを悪女呼ばわりするものか」
「そのことは認めざるを得ません。何故ならあなたに危険な薬を飲ませたのですから!」
「飲ませたのは王宮医官たちではなく父上だ。彼らの言葉を聞き入れず、必ず治ると勝手に信じ込んで私に薬を与えた。挙げ句、私の容態が急変すれば医官たちを責め立てる。あの男の血が私にも流れているのかと思うと……」
「それは言い過ぎかと!」

 エステルたちが作った薬のせいで死にかけたのに、どうしてエステルを庇おうとしてるんだこの人。
 やっぱりこの王子頭が少しアレだな。ナデ―ジュが毛嫌いする気持ちも分かる。

「少し冷静になってください、クロード殿下」
「冷静になっていられるか! 私のせいで、医官たちは何の罪もないのに死んでいったんだ。私が殺したも同然だ……」

 その場に座り込むクロード王子をただ眺めることしか出来なかった。



 数時間後、絞首台の前に現れたエステルの姿にその場は騒然となった。
 原型を留めないほどに顔が爛れ、髪も失って頭皮が剥き出しとなっていたのだ。

 エステルの処刑が決まった後、どうせ殺すのだから何をしてもいいだろうと拷問が行われたらしい。
 水責めや鞭打ちの他、硫酸を頭からかけられたようだ。
 裸足で歩かされているが、爪は全て剥がされていた。
 足の痛みで立ち止まると、塩水を指の部分にかけられる。その度にエステルは獣のような絶叫を上げた。

 観衆の反応は様々なものだった。
 あまりにも惨い姿に吐き気を催す者もいれば、歓喜の声を上げる者もいる。
 俺は前者だ。ここまで酷いものを見せられると思っていなかったぞ。
 夢に出て来そうだと思っていると、エステルが立ち止まって俺の方を見た気がしたが無視した。



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