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十八話(セドリック視点)
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使用人たちの言い訳は酷いものだった。
「私たちはただ、侯爵家のために! だってあんな女、侯爵家には不要の存在です!」
エリーゼの侍女アイナが青ざめた顔で主張する。
「わ、私はアイナ様に脅されてやっていただけです! 言う通りにしないと、エリーゼ様と同じ目に遭わせるって……!」
メイドが目に涙を浮かべながら、自分も被害者だと訴える。
「そ、その、計画に協力する代わりに、シンシア様より報酬を受け取っていました。私にも養う家族がおります故……」
執事がハンカチで額の汗を拭いながら、賄賂を受け取っていたことを白状する。
調査の結果、使用人の殆どがエリーゼのいじめに関与していたことが分かった。
その事実を隠し、逆に彼女が使用人を虐げていたと虚偽の報告をしていたのだ。
彼らにも、彼らの企みに気付けなかった自分にも怒りを覚える。
「貴様たちは……何も知らない私を嘲笑っていたのか?」
「セドリック様は誤解をなさっています! 私どもは、セドリック様とローラス侯爵家を守ろうと……」
アイナが頬を引き攣らせ、尚も自分たちの行いを正当化しようとする。
その場にいた他の使用人たちも、それに同調するように頷いた。
腹の底から、ふつふつと怒りが沸き上がる。
皆、口を開けば「セドリック様のため」、「侯爵家のため」。
誰もエリーゼへの謝罪の言葉がない。
彼らは彼女を無価値、いや害悪と見なしていたのだろう。
私が原因なのは分かっている。
だが、あまりにも短絡的過ぎる。雇用主の妻に精神的苦痛を与えた。
この国では、十分な大罪だ。そして罰を受けるのは、当人たちだけではない。
「貴様たちには罪を償ってもらう。……家族も同罪だ」
そう告げると、使用人たちはにわかに慌て出した。
「お、お待ちください! 家族は関係ありません!」
「我が子はまだ幼いのです。どうかお許しください!」
「何故私たちが罰せられなければならないのです! そもそも、あなたが男爵家の娘に現を抜かしたのが全ての原因だと言うのに……」
その場で卒倒する者。許しを請う者。抗議する者。
反応は様々だった。
その中で一番突き刺さったのは、アイナの一言だった。
「セドリック様も、エリーゼ様を虐げていたではありませんか! 同罪なのはあなたもです!」
そんなこと、私自身が一番理解している。
だが私が罪人となれば、ローラス侯爵家は終わる。
息子はまだ赤子。家督を継がせるには、あまりにも早すぎる。
そうなればシンシアの両親が、真実を公表して権力を握ろうと動く可能性もあった。
父上に家督を返上しようにも、先月から病で伏せっている。議会の認証を得るのは難しいだろう。
……そうだ。シンシアはどうした?
近頃は、部屋に籠もってばかりで私に会いに来ようとしない。子供の世話も乳母に任せきりだ。
まだ屋敷に居座っているようだが……
「……シンシアを連れて来い」
使用人たちに命じる。だが、部屋にシンシアの姿はなかった。屋敷内をくまなく探させたが、どこにも見当たらない。
実家に帰ったのか? だが、胸騒ぎがする。
重苦しい空気が邸宅を包み込む中、何故か警察の者たちが硬い表情で訪れた。
シンシアが、若い女性をナイフで刺したという。
その女性の名は、エリーゼだった。
「私たちはただ、侯爵家のために! だってあんな女、侯爵家には不要の存在です!」
エリーゼの侍女アイナが青ざめた顔で主張する。
「わ、私はアイナ様に脅されてやっていただけです! 言う通りにしないと、エリーゼ様と同じ目に遭わせるって……!」
メイドが目に涙を浮かべながら、自分も被害者だと訴える。
「そ、その、計画に協力する代わりに、シンシア様より報酬を受け取っていました。私にも養う家族がおります故……」
執事がハンカチで額の汗を拭いながら、賄賂を受け取っていたことを白状する。
調査の結果、使用人の殆どがエリーゼのいじめに関与していたことが分かった。
その事実を隠し、逆に彼女が使用人を虐げていたと虚偽の報告をしていたのだ。
彼らにも、彼らの企みに気付けなかった自分にも怒りを覚える。
「貴様たちは……何も知らない私を嘲笑っていたのか?」
「セドリック様は誤解をなさっています! 私どもは、セドリック様とローラス侯爵家を守ろうと……」
アイナが頬を引き攣らせ、尚も自分たちの行いを正当化しようとする。
その場にいた他の使用人たちも、それに同調するように頷いた。
腹の底から、ふつふつと怒りが沸き上がる。
皆、口を開けば「セドリック様のため」、「侯爵家のため」。
誰もエリーゼへの謝罪の言葉がない。
彼らは彼女を無価値、いや害悪と見なしていたのだろう。
私が原因なのは分かっている。
だが、あまりにも短絡的過ぎる。雇用主の妻に精神的苦痛を与えた。
この国では、十分な大罪だ。そして罰を受けるのは、当人たちだけではない。
「貴様たちには罪を償ってもらう。……家族も同罪だ」
そう告げると、使用人たちはにわかに慌て出した。
「お、お待ちください! 家族は関係ありません!」
「我が子はまだ幼いのです。どうかお許しください!」
「何故私たちが罰せられなければならないのです! そもそも、あなたが男爵家の娘に現を抜かしたのが全ての原因だと言うのに……」
その場で卒倒する者。許しを請う者。抗議する者。
反応は様々だった。
その中で一番突き刺さったのは、アイナの一言だった。
「セドリック様も、エリーゼ様を虐げていたではありませんか! 同罪なのはあなたもです!」
そんなこと、私自身が一番理解している。
だが私が罪人となれば、ローラス侯爵家は終わる。
息子はまだ赤子。家督を継がせるには、あまりにも早すぎる。
そうなればシンシアの両親が、真実を公表して権力を握ろうと動く可能性もあった。
父上に家督を返上しようにも、先月から病で伏せっている。議会の認証を得るのは難しいだろう。
……そうだ。シンシアはどうした?
近頃は、部屋に籠もってばかりで私に会いに来ようとしない。子供の世話も乳母に任せきりだ。
まだ屋敷に居座っているようだが……
「……シンシアを連れて来い」
使用人たちに命じる。だが、部屋にシンシアの姿はなかった。屋敷内をくまなく探させたが、どこにも見当たらない。
実家に帰ったのか? だが、胸騒ぎがする。
重苦しい空気が邸宅を包み込む中、何故か警察の者たちが硬い表情で訪れた。
シンシアが、若い女性をナイフで刺したという。
その女性の名は、エリーゼだった。
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