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80.実家への報告
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アデラさんは最後まで怯えた表情のままだった。
大きな懸念材料が一つ減ったことで安心する一方で、彼女の様子が気になるけれど。
情けをかけてはいけないと、考えを切り替えようと思う。
「邪魔者もなくなったことだし、今日はこれからずっとリザと色んなところに行けるな」
「……それはもう少し後です」
どうして、とショックを受けたような顔をするオブシディアさんに多少心が揺らいだ。
私もオブシディアさんと一緒に街を歩き、店巡りをしたいけれど、まだやるべきことが一つ残っている。
「お父様に報告しに行かなければなりません」
「……別にミレーユが手紙出したんだから、後でもいいだろ?」
叔母様は私に変身したオブシディアさんが店から出て行った後、ディンデール家へすぐに手紙を届けて欲しいと郵便局に手配していた。
手紙にはアデラさんの件が詳細に語られている。
それを読んだおかげで、お父様もすぐに行動に移ることができた。
アデラさんを早急に城へ引き渡せたのも、ディンデール家が予め話を通していたからだった。
「お父様もオブシディアさんに会いたがっていると思いますし」
「…………あいつ、何か面白いし会ってやるか」
……そんな友人にお会いするような感覚で仰らなくても。
けれど、お父様は慇懃のないオブシディアさんの態度を逆に気に入っているらしい。
息子がもう一人できたようだと、以前届いた手紙(こちらは本物)に書かれていた。
「だけど、そうだな。どうせなら、あの気持ち悪い男の件も今日のうちに解決したくなってくるな」
「それは……そうですけれど」
一日で全てを片つけるには、精神的負担が重すぎて暫く寝込んでしまいそうだ。
一刻でも早くフィリヌ家との関わりを完全に断ちたい気持ちは強いけれど、せめて二、三日置いてからの方がいい。
だけどそんな私の願望は脆くも崩れ去った。
渋々といった様子のオブシディアさんを連れて、久々のディンデール邸に到着すると、
「……え?」
フィリヌ家の紋章が入った馬車が止まっているのを見つけてしまった。
それも数台も。
お父様と話し合いをするなら、トール様とフィリヌ侯爵だけで充分なはず。
……嫌な予感がするので、これは一旦引き返すべきかもしれない。
「オブシディアさん、遊びに行きましょうか」
「報告はどうするんだ?」
「一度リフレッシュしてからということで」
今、私がフィリヌ家の人間と顔を合わせるようなことがあれば、かえってお父様に迷惑をかけてしまうだろう。
そう思って撤退しようとした時だった。
ドン、と大きな音がしたかと思えば、屋敷の壁の一部がクッキーのように砕けて中から誰かが飛び出した。
いや、投げ出されたと表現した方がいいだろう。
大きな懸念材料が一つ減ったことで安心する一方で、彼女の様子が気になるけれど。
情けをかけてはいけないと、考えを切り替えようと思う。
「邪魔者もなくなったことだし、今日はこれからずっとリザと色んなところに行けるな」
「……それはもう少し後です」
どうして、とショックを受けたような顔をするオブシディアさんに多少心が揺らいだ。
私もオブシディアさんと一緒に街を歩き、店巡りをしたいけれど、まだやるべきことが一つ残っている。
「お父様に報告しに行かなければなりません」
「……別にミレーユが手紙出したんだから、後でもいいだろ?」
叔母様は私に変身したオブシディアさんが店から出て行った後、ディンデール家へすぐに手紙を届けて欲しいと郵便局に手配していた。
手紙にはアデラさんの件が詳細に語られている。
それを読んだおかげで、お父様もすぐに行動に移ることができた。
アデラさんを早急に城へ引き渡せたのも、ディンデール家が予め話を通していたからだった。
「お父様もオブシディアさんに会いたがっていると思いますし」
「…………あいつ、何か面白いし会ってやるか」
……そんな友人にお会いするような感覚で仰らなくても。
けれど、お父様は慇懃のないオブシディアさんの態度を逆に気に入っているらしい。
息子がもう一人できたようだと、以前届いた手紙(こちらは本物)に書かれていた。
「だけど、そうだな。どうせなら、あの気持ち悪い男の件も今日のうちに解決したくなってくるな」
「それは……そうですけれど」
一日で全てを片つけるには、精神的負担が重すぎて暫く寝込んでしまいそうだ。
一刻でも早くフィリヌ家との関わりを完全に断ちたい気持ちは強いけれど、せめて二、三日置いてからの方がいい。
だけどそんな私の願望は脆くも崩れ去った。
渋々といった様子のオブシディアさんを連れて、久々のディンデール邸に到着すると、
「……え?」
フィリヌ家の紋章が入った馬車が止まっているのを見つけてしまった。
それも数台も。
お父様と話し合いをするなら、トール様とフィリヌ侯爵だけで充分なはず。
……嫌な予感がするので、これは一旦引き返すべきかもしれない。
「オブシディアさん、遊びに行きましょうか」
「報告はどうするんだ?」
「一度リフレッシュしてからということで」
今、私がフィリヌ家の人間と顔を合わせるようなことがあれば、かえってお父様に迷惑をかけてしまうだろう。
そう思って撤退しようとした時だった。
ドン、と大きな音がしたかと思えば、屋敷の壁の一部がクッキーのように砕けて中から誰かが飛び出した。
いや、投げ出されたと表現した方がいいだろう。
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