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69.親子喧嘩再び(アデラ視点)
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『精霊の隠れ家』には改めて謝罪に行くことになった。
その知らせをお父様に聞いて、私は鼻でふふんと笑った。
「あの王子も律儀ねぇ~。自分がどう言われたのかも忘れちゃったのかしら」
「口を慎め、アデラ。元は言えば、お前のせいだというのに……」
「何よ! お父様までリザリアの味方をするっていうの!?」
怒って声を荒らげると、お父様にギロッと睨まれた。
「王太子に恥をかかせたのだぞ。お前にはその自覚がないのか?」
大声を出すことはないけど、お父様は怒りを押さえたような声で私に聞いた。
それだってリザリアのせいじゃない。
私はあくまできっかけを作っちゃっただけで、後は王族の体裁を考えて発言しなかったリザリアが責められるべきだわ。
お父様の質問に答えず無言で睨み返していると、お父様はふぅー……と溜め息をついた。
「王太子殿下と親しくなれたと聞いた時は大いに喜んだが、お前の浅はかさをもう少し危惧するべきだった」
「ちょっと、それ私が馬鹿って言いたいの?」
「いいか、アデラ。お前は自尊心が高く、狡猾な人間だ。それについてはまったく構わん。むしろそのくらいでなければ、貴族社会では優位に立てないのだからな。だが、擁護できないほどに頭が悪い」
「な……っ!?」
浅はかより酷い言われ方に、羞恥で顔に熱が集まるのが分かった。
血も繋がっていないクソ親父に、ここまで言われる筋合いないんだけど!? ふざけんなよ!
「頭が悪いだけならまだいい。それならそれで上手い具合に操りようがあるからな。しかしお前は全て自分の思い通りにいくという固定観念の下で、行動する。厄介極まりない」
「失礼なことを言わないで! 大体仮にそうだったとして、私をこんな娘に育てたのはあんたでしょ!」
「……そうだな、私の責任だ。お前の美しさを利用することばかり考えて、その内面としっかり向き合わなかった。なのでお前を見捨てたりはせん。こんな性悪を野に放てば、他の人間に寄生するのが目に見えている」
この親父、今すぐ殺してやろうかなって本気で思う。
だけどそんなことをしたら、贅沢な暮らしができなくなるから我慢するけど。
人殺しになるかもしれない恐怖は、リザリアの時に死ぬほど味わったもの。
「店に行くのは今度の定休日だそうだ。いいか、お前もついていって頭を下げろ」
「……分かったわよ」
「うちの使用人も同行させよう。しっかりと謝ったかどうか、その者に見届けさせる」
腹の立つ……。
それに定休日だったら、黒い魔法使い様に会えないじゃないの。
マジで行く意味ないんだけど。
あ、でも、ここで形だけでも誠意を見せておけば、王子にもいい印象を与えられるか。
せっかく出会えた最高の物件よ。
無事に王子とゴールインできれば、私を馬鹿だとか浅はかとか言ったクソ親父の鼻も明かせるし、絶対に逃がさないわ。
その知らせをお父様に聞いて、私は鼻でふふんと笑った。
「あの王子も律儀ねぇ~。自分がどう言われたのかも忘れちゃったのかしら」
「口を慎め、アデラ。元は言えば、お前のせいだというのに……」
「何よ! お父様までリザリアの味方をするっていうの!?」
怒って声を荒らげると、お父様にギロッと睨まれた。
「王太子に恥をかかせたのだぞ。お前にはその自覚がないのか?」
大声を出すことはないけど、お父様は怒りを押さえたような声で私に聞いた。
それだってリザリアのせいじゃない。
私はあくまできっかけを作っちゃっただけで、後は王族の体裁を考えて発言しなかったリザリアが責められるべきだわ。
お父様の質問に答えず無言で睨み返していると、お父様はふぅー……と溜め息をついた。
「王太子殿下と親しくなれたと聞いた時は大いに喜んだが、お前の浅はかさをもう少し危惧するべきだった」
「ちょっと、それ私が馬鹿って言いたいの?」
「いいか、アデラ。お前は自尊心が高く、狡猾な人間だ。それについてはまったく構わん。むしろそのくらいでなければ、貴族社会では優位に立てないのだからな。だが、擁護できないほどに頭が悪い」
「な……っ!?」
浅はかより酷い言われ方に、羞恥で顔に熱が集まるのが分かった。
血も繋がっていないクソ親父に、ここまで言われる筋合いないんだけど!? ふざけんなよ!
「頭が悪いだけならまだいい。それならそれで上手い具合に操りようがあるからな。しかしお前は全て自分の思い通りにいくという固定観念の下で、行動する。厄介極まりない」
「失礼なことを言わないで! 大体仮にそうだったとして、私をこんな娘に育てたのはあんたでしょ!」
「……そうだな、私の責任だ。お前の美しさを利用することばかり考えて、その内面としっかり向き合わなかった。なのでお前を見捨てたりはせん。こんな性悪を野に放てば、他の人間に寄生するのが目に見えている」
この親父、今すぐ殺してやろうかなって本気で思う。
だけどそんなことをしたら、贅沢な暮らしができなくなるから我慢するけど。
人殺しになるかもしれない恐怖は、リザリアの時に死ぬほど味わったもの。
「店に行くのは今度の定休日だそうだ。いいか、お前もついていって頭を下げろ」
「……分かったわよ」
「うちの使用人も同行させよう。しっかりと謝ったかどうか、その者に見届けさせる」
腹の立つ……。
それに定休日だったら、黒い魔法使い様に会えないじゃないの。
マジで行く意味ないんだけど。
あ、でも、ここで形だけでも誠意を見せておけば、王子にもいい印象を与えられるか。
せっかく出会えた最高の物件よ。
無事に王子とゴールインできれば、私を馬鹿だとか浅はかとか言ったクソ親父の鼻も明かせるし、絶対に逃がさないわ。
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