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56.ルミノー邸へ(トール視点)
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思えば近頃アデラともあまり会っていない。僕がルミノー邸に行っても、メイドに「アデラ様は現在ご不在です」と門前払いされてばかり。
だから文通で我慢していた。何故か僕の字を見て「……私が書きましょう」と言った執事に代筆させているけど。
でもこれは直接会ってはっきりさせておかないと!
アデラが僕よりも、あの変な黒い奴にお熱だなんて信じられない。
どうせリザリアとどうにか再婚させようと、父上が咄嗟についた嘘に決まってるもんね。
父上から解放された後、僕は急いでルミノー邸に向かった。
すると応対出てきたメイドに、
「はぁ……またいらっしゃったのですか。本日もアデラ様はおりませんので」
と無愛想に言われたので僕は怒りに震えた。
これがアデラの旦那様(仮)に対する態度か!?
メイドを突き飛ばして中にずんずん進んでいく。おっ、今の僕大物貴族っぽくてかっこいいぞ~!
たとえいないとしても、アデラが帰って来るまでルミノー邸に居座ってやる。
そう思って広間に向かおうとした時だった。
「あら、何かしら。玄関の方が騒がしいけれど……」
メイドと会話をしているアデラ発見!
久しぶりに会ったけど、やっぱり綺麗だ。
こんなに美人なのに僕を裏切ろうとしているとか有り得ないって。
「アデラ、会いたかったよ! 僕のお姫様!」
「うわっ、何で屋敷に入って来てんの!?」
う、ううん? 目を潤ませて僕の胸に飛び込んでくると思っていたのに、むしろ嫌そうに後退された。
久々に会って照れているのかな。
それが婚約者への態度? って注意したいけど、ここは我慢我慢。
今日だけは許してあげるよ、アデラ。
「君の顔が見たかったからに決まってるでしょ? そんな分かり切ったことを言わせないでよ」
「そうじゃなくて! 私はいないから帰るようにメイドに言われなかった!?」
「言われたよ? でも何度もそんなことを言われて素直に聞く僕じゃないからね。あのメイド、アデラへの嫌がらせであんな嘘をついてたのかな。早くクビにした方が……」
「はぁぁぁっ!? 無理矢理入って来たの!? 無理無理気持ち悪すぎて有り得ないんだけど!!」
羽虫を見るような目で僕を見ながらアデラが叫ぶ。
何この反応、本気で嫌がってる?
我慢の限界だと僕はアデラに詰め寄ろうとする。
「アデラ、君自分の立場分かってないよね? 僕の妻になる人なんだよ? 僕に逆らったら……」
「……おや、君は何も聞いていないのかね?」
背後から聞こえた声に振り返ると、困惑した表情のルミノー伯爵が立っていた。
だから文通で我慢していた。何故か僕の字を見て「……私が書きましょう」と言った執事に代筆させているけど。
でもこれは直接会ってはっきりさせておかないと!
アデラが僕よりも、あの変な黒い奴にお熱だなんて信じられない。
どうせリザリアとどうにか再婚させようと、父上が咄嗟についた嘘に決まってるもんね。
父上から解放された後、僕は急いでルミノー邸に向かった。
すると応対出てきたメイドに、
「はぁ……またいらっしゃったのですか。本日もアデラ様はおりませんので」
と無愛想に言われたので僕は怒りに震えた。
これがアデラの旦那様(仮)に対する態度か!?
メイドを突き飛ばして中にずんずん進んでいく。おっ、今の僕大物貴族っぽくてかっこいいぞ~!
たとえいないとしても、アデラが帰って来るまでルミノー邸に居座ってやる。
そう思って広間に向かおうとした時だった。
「あら、何かしら。玄関の方が騒がしいけれど……」
メイドと会話をしているアデラ発見!
久しぶりに会ったけど、やっぱり綺麗だ。
こんなに美人なのに僕を裏切ろうとしているとか有り得ないって。
「アデラ、会いたかったよ! 僕のお姫様!」
「うわっ、何で屋敷に入って来てんの!?」
う、ううん? 目を潤ませて僕の胸に飛び込んでくると思っていたのに、むしろ嫌そうに後退された。
久々に会って照れているのかな。
それが婚約者への態度? って注意したいけど、ここは我慢我慢。
今日だけは許してあげるよ、アデラ。
「君の顔が見たかったからに決まってるでしょ? そんな分かり切ったことを言わせないでよ」
「そうじゃなくて! 私はいないから帰るようにメイドに言われなかった!?」
「言われたよ? でも何度もそんなことを言われて素直に聞く僕じゃないからね。あのメイド、アデラへの嫌がらせであんな嘘をついてたのかな。早くクビにした方が……」
「はぁぁぁっ!? 無理矢理入って来たの!? 無理無理気持ち悪すぎて有り得ないんだけど!!」
羽虫を見るような目で僕を見ながらアデラが叫ぶ。
何この反応、本気で嫌がってる?
我慢の限界だと僕はアデラに詰め寄ろうとする。
「アデラ、君自分の立場分かってないよね? 僕の妻になる人なんだよ? 僕に逆らったら……」
「……おや、君は何も聞いていないのかね?」
背後から聞こえた声に振り返ると、困惑した表情のルミノー伯爵が立っていた。
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