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52.ハーライトの処遇(トール視点)
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『精霊の隠れ家』を潰してもらおうと思って、ハーライトをけしかけてから一週間が経った。……んだけど、『精霊の隠れ家』は今日も元気に営業中。
逆にハーライト及び『極光の財宝』の評判が地の底まで落ちた。
街のレストランを貸し切ってやりたい放題していたら、リザリアと例の魔法使いに追い返されただって?
何考えてんだろ、あいつ。
高い店で飲み食いしている暇があったら、さっさとリザリアの店を潰してくれない!?
しかも『極光の財宝』は、ハーライトの独断で臨時休業にしてしまった。それを惜しむ声はどこからも聞こえない。
というより、工芸品職人を含めた従業員が次々と退職届を出しているんだってさ。
もう店は潰れるの確定。
責任者のハーライトをフィリヌ魔導店に連れ戻して、タダ働きをさせることも決まっている。
しかも相当長い期間。
そのことを抗議するために、ハーライトがうちの屋敷にやって来た。
「納得がいかねぇ! そんな馬鹿な話があってたまるか!」
この前の話し合いの時は「自分には責任がない」って姿を見せなかったくせに。
父上の執務室で喚く馬鹿をこっそり廊下から覗いていると、父上が机の上にあったインク瓶をハーライトに投げつけた。
ハーライトの顔が真っ黒に染まったのを見て噴き出しそうになる。いけない、いけない。覗き見がバレたら怒られちゃうよね。
「ゴミクズが口答えをするな!! 貴様の腕を見込んで独立させた私も愚かだったが、まさかこのようなこととなるとは……! 問題は品質のことだけではない! 従業員から給料の支払いや勤務時間についての不満も出ているんだぞ!!」
「それに関しては事務員に文句を言え! 俺は少しだけ指示を出しただけで、あとはあいつらのせいだろ!」
「奴らは口を揃えて貴様の指示に従って給料を削減し、残業記録を抹消したと言っているぞ!」
「そ、それは……そういう文句を黙らせるのも事務員の役目で……」
そのインクを落としたら、真っ青な顔が出てくるんだろうな。
父上もどうしてインクボトルを投げたかな。ハーライトの顔が見られなくて面白さが半減だよ!
「リザリア! あいつは俺に何も聞かないで、一人で給料計算とかシフトの調整をやってたんだ! あいつと同じことができない事務員どもが悪いんだ!」
「はぁ……もういい。お前には死ぬまでうちの店で働いてもらう、そのことに変わりはないのだ。こんな話をするだけ時間の無駄だ」
「な……っ、待て、待ってください! 俺にもう一度だけチャンスを……」
「やらん! 今まで貴様の尻拭いをどれだけしてやったと思っている!? ……こいつを連れて行け!」
部屋の隅に立っていた大男たちがハーライトの体を押さえつけ、部屋から無理矢理連れ出す。
まずい、見つかる! と僕は慌ててそこから離れた。
「嫌だ嫌だ!! 俺はハーライト様だぞ!? 奴隷同然の扱いを受けるなんて……!」
「そいつの喉を潰しておけ! 二度と喋られなくなるようにしろ!!」
父上も酷いことするなぁ……。まあ、ハーライトがどうなっても僕は知ったことじゃないね!
なんて思っていたら、今度はフィリヌ魔導店の方がまずい自体になり始めた。
逆にハーライト及び『極光の財宝』の評判が地の底まで落ちた。
街のレストランを貸し切ってやりたい放題していたら、リザリアと例の魔法使いに追い返されただって?
何考えてんだろ、あいつ。
高い店で飲み食いしている暇があったら、さっさとリザリアの店を潰してくれない!?
しかも『極光の財宝』は、ハーライトの独断で臨時休業にしてしまった。それを惜しむ声はどこからも聞こえない。
というより、工芸品職人を含めた従業員が次々と退職届を出しているんだってさ。
もう店は潰れるの確定。
責任者のハーライトをフィリヌ魔導店に連れ戻して、タダ働きをさせることも決まっている。
しかも相当長い期間。
そのことを抗議するために、ハーライトがうちの屋敷にやって来た。
「納得がいかねぇ! そんな馬鹿な話があってたまるか!」
この前の話し合いの時は「自分には責任がない」って姿を見せなかったくせに。
父上の執務室で喚く馬鹿をこっそり廊下から覗いていると、父上が机の上にあったインク瓶をハーライトに投げつけた。
ハーライトの顔が真っ黒に染まったのを見て噴き出しそうになる。いけない、いけない。覗き見がバレたら怒られちゃうよね。
「ゴミクズが口答えをするな!! 貴様の腕を見込んで独立させた私も愚かだったが、まさかこのようなこととなるとは……! 問題は品質のことだけではない! 従業員から給料の支払いや勤務時間についての不満も出ているんだぞ!!」
「それに関しては事務員に文句を言え! 俺は少しだけ指示を出しただけで、あとはあいつらのせいだろ!」
「奴らは口を揃えて貴様の指示に従って給料を削減し、残業記録を抹消したと言っているぞ!」
「そ、それは……そういう文句を黙らせるのも事務員の役目で……」
そのインクを落としたら、真っ青な顔が出てくるんだろうな。
父上もどうしてインクボトルを投げたかな。ハーライトの顔が見られなくて面白さが半減だよ!
「リザリア! あいつは俺に何も聞かないで、一人で給料計算とかシフトの調整をやってたんだ! あいつと同じことができない事務員どもが悪いんだ!」
「はぁ……もういい。お前には死ぬまでうちの店で働いてもらう、そのことに変わりはないのだ。こんな話をするだけ時間の無駄だ」
「な……っ、待て、待ってください! 俺にもう一度だけチャンスを……」
「やらん! 今まで貴様の尻拭いをどれだけしてやったと思っている!? ……こいつを連れて行け!」
部屋の隅に立っていた大男たちがハーライトの体を押さえつけ、部屋から無理矢理連れ出す。
まずい、見つかる! と僕は慌ててそこから離れた。
「嫌だ嫌だ!! 俺はハーライト様だぞ!? 奴隷同然の扱いを受けるなんて……!」
「そいつの喉を潰しておけ! 二度と喋られなくなるようにしろ!!」
父上も酷いことするなぁ……。まあ、ハーライトがどうなっても僕は知ったことじゃないね!
なんて思っていたら、今度はフィリヌ魔導店の方がまずい自体になり始めた。
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