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35.元妻の店へ(トール視点)
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僕とアデラはとっとと店を出た。
出入り口付近にいた店員が僕たちを見て落ち込んだ表情をしていたけど、知ったことじゃないね!
客を充分に満足させられる品物を揃えないお前らが悪い。
「それにしても……」
「どうしたの、トール様?」
「『精霊の隠れ家』ってどこかで聞いたことがあるような……」
馬車に乗り込みながらそう言葉を零していると、アデラが不自然に視線を逸らした。
「そ、そうね。どこにでもあるようなお店の名前だし……」
「うーん……あ、そうだ、思い出した! リザリアがの店だ……!」
ハーライトが従業員を根刮ぎ奪ったせいで、まだオープン前なのにピンチになっていたあの店!
リザリアだけじゃなくて、あの黒づくめの魔法使いも職人として雇っているんだったか。
よし……そっちも見に行ってみるか。
「次は精霊の隠れ家まで行ってもらえる? あ、でも場所は分からないか……」
「いいえ、分かりますよ。何せかなり有名な店ですからね」
僕の頼みを聞いて、御者がすぐに馬車を走らせる。
そ、そんなに有名なんだ。
しかも、恐らくいい意味でだ。
有り得ない。ハーライトの店がこんな評判なのに、向こうは繁盛しているだなんて。
絶対インチキをしているに違いないね。
たとえばディンデール家が金で買収した平民に『精霊の隠れ家』のいい噂を、反対に『極光の財宝』の悪い噂を流させているとか!
くそぉ、僕への復讐のつもりかよリザリア。
何だってみんなして、リザリアばっかり持ち上げるんだ。
お祖父様も離婚に賛成なんだと思っていたら、『彼女が可哀想だから、早くこの一族から解放してあげたい』?
慰謝料をがっぽりもらう計画も、お祖父様が余計な口を出したせいで台無しになった。
これもリザリアが僕たちの知らないところで、お祖父様に妙なことを吹き込んだからに決まっている。
直接会って文句を言わなきゃとは思ってたんだ。
鼻息を荒くしてそんなことを考えていると、アデラがそわそわした様子で口を開いた。
「わ、私はいいわ。疲れちゃったからそろそろ帰ろうかしら……」
「何だい、アデラ。リザリアに会うのが気まずいと思ってるなら大丈夫だよ。僕が守ってあげるからさ」
「本当!? だ、だったら、今のうちに言っておくわ! あの女が何を言っても私のことを信じてね。私はあなたのことを誰よりも愛してるんだから、あなたも同じくらい私のことを思っていてね……!?」
「う、うん、言うまでもないよ」
その必死な様子に若干引きつつ、頷いてやる。
いつもは、堂々としているアデラがここまで気にしているんだ。よっぽどリザリアが嫌なんだろうな。
だからってアデラをここで帰す選択肢はないよ。
僕が行きたいんだから、彼女もそれに従うべき。
アデラが黒づくめの魔法使いを気に入っているのが気になるけど、僕のことが一番って言ってくれているしね。
アデラに「大丈夫」とか「何も怖くないよ」って言っているうちに、店の近くに到着。
首都なだけあって、人の賑わいがすごい。
可愛い子や美人がいっぱいいるなぁ……。あ、僕の本命はアデラだよ? ほんとだよ?
「それで、『精霊の隠れ家』はどの辺りにあるの?」
「ああ、あそこです。路地裏にあるんですよ」
「路地裏ぁ?」
御者から言われて僕は困惑した。
そんなところに店を開いて、客なんて来るわけがないだろうに。なんて思いながら窓の外を見回していると、路地裏の前に長蛇の列ができているのを見付けた。
出入り口付近にいた店員が僕たちを見て落ち込んだ表情をしていたけど、知ったことじゃないね!
客を充分に満足させられる品物を揃えないお前らが悪い。
「それにしても……」
「どうしたの、トール様?」
「『精霊の隠れ家』ってどこかで聞いたことがあるような……」
馬車に乗り込みながらそう言葉を零していると、アデラが不自然に視線を逸らした。
「そ、そうね。どこにでもあるようなお店の名前だし……」
「うーん……あ、そうだ、思い出した! リザリアがの店だ……!」
ハーライトが従業員を根刮ぎ奪ったせいで、まだオープン前なのにピンチになっていたあの店!
リザリアだけじゃなくて、あの黒づくめの魔法使いも職人として雇っているんだったか。
よし……そっちも見に行ってみるか。
「次は精霊の隠れ家まで行ってもらえる? あ、でも場所は分からないか……」
「いいえ、分かりますよ。何せかなり有名な店ですからね」
僕の頼みを聞いて、御者がすぐに馬車を走らせる。
そ、そんなに有名なんだ。
しかも、恐らくいい意味でだ。
有り得ない。ハーライトの店がこんな評判なのに、向こうは繁盛しているだなんて。
絶対インチキをしているに違いないね。
たとえばディンデール家が金で買収した平民に『精霊の隠れ家』のいい噂を、反対に『極光の財宝』の悪い噂を流させているとか!
くそぉ、僕への復讐のつもりかよリザリア。
何だってみんなして、リザリアばっかり持ち上げるんだ。
お祖父様も離婚に賛成なんだと思っていたら、『彼女が可哀想だから、早くこの一族から解放してあげたい』?
慰謝料をがっぽりもらう計画も、お祖父様が余計な口を出したせいで台無しになった。
これもリザリアが僕たちの知らないところで、お祖父様に妙なことを吹き込んだからに決まっている。
直接会って文句を言わなきゃとは思ってたんだ。
鼻息を荒くしてそんなことを考えていると、アデラがそわそわした様子で口を開いた。
「わ、私はいいわ。疲れちゃったからそろそろ帰ろうかしら……」
「何だい、アデラ。リザリアに会うのが気まずいと思ってるなら大丈夫だよ。僕が守ってあげるからさ」
「本当!? だ、だったら、今のうちに言っておくわ! あの女が何を言っても私のことを信じてね。私はあなたのことを誰よりも愛してるんだから、あなたも同じくらい私のことを思っていてね……!?」
「う、うん、言うまでもないよ」
その必死な様子に若干引きつつ、頷いてやる。
いつもは、堂々としているアデラがここまで気にしているんだ。よっぽどリザリアが嫌なんだろうな。
だからってアデラをここで帰す選択肢はないよ。
僕が行きたいんだから、彼女もそれに従うべき。
アデラが黒づくめの魔法使いを気に入っているのが気になるけど、僕のことが一番って言ってくれているしね。
アデラに「大丈夫」とか「何も怖くないよ」って言っているうちに、店の近くに到着。
首都なだけあって、人の賑わいがすごい。
可愛い子や美人がいっぱいいるなぁ……。あ、僕の本命はアデラだよ? ほんとだよ?
「それで、『精霊の隠れ家』はどの辺りにあるの?」
「ああ、あそこです。路地裏にあるんですよ」
「路地裏ぁ?」
御者から言われて僕は困惑した。
そんなところに店を開いて、客なんて来るわけがないだろうに。なんて思いながら窓の外を見回していると、路地裏の前に長蛇の列ができているのを見付けた。
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