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27.離婚成立
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なしになったとはどういうことだろう。
フィリヌ侯爵夫妻が止めたとは思えないのだけれど。
私が思考を巡らせていると、叔母様が「何で? 自分で自分の間違いに気づけるような一家じゃないでしょ?」とお父様に尋ねた。
するとお父様は、複雑そうな笑みを浮かべた。
「先代フィリヌ侯爵が口を出したらしい。慰謝料など請求してディンデール家と争っている暇があれば、さっさと離婚をしろと息子、つまり現侯爵に命じたんだ」
「えぇぇえ? 一刻も早くリザリアを一族から追い出したいからってこと!?」
「それはそうなんだが、ミレーユくんが思っている理由とは違うよ」
憤慨する叔母様を宥めるようにお父様が仰る。
「先代殿は『こんな孫とは早く縁を切って、リザリア嬢には早く平穏な日々を取り戻してほしい』と言ったそうだ」
「ええと、お父様? フィリヌ侯爵夫人の実家は離婚に反対していて、逆に先代侯爵様は離婚に賛成しているけれど、それは私のため……ということでしょうか?」
「そういうことになるね。私も頭がごちゃごちゃしてきたよ……」
そう仰りながらお父様は、一枚の書類を取り出した。
離婚の申請書で、トール様の欄には既にサインが記入済み。
あとは私が書いて、役所に持って行くだけの状態になっているわね。
「先代殿が役所に話を通しているようでね。提出すれば即日で受理される。……後は君次第だ、リザリア」
「もちろん、この機会を逃すわけにはいきません」
先代フィリヌ侯爵のご厚意に預かろうと思う。
あと少しで『精霊の隠れ家』がオープンするというのに、こんな個人的な悩みをいつまでも抱えているわけにはいかない。
お父様から申請書を受け取って、自分のサインを記入する。
「……よし。後は私が役所に持って行くよ」
「お父様、私も共に行かせてください」
「いや、リザリアは店のことがあるだろう? こんなことで時間を使わせられないよ」
「そんなことはありません。……これは私の問題なのですから」
こんなことだからこそ、甘えては駄目だ。
「ということで、少し外しますね叔母様」
「うん。いってらっしゃい。美味しいお昼ごはん作って待ってるからね」
「オブシディアさん、叔母様と店のことお願いします」
「人間って大変だな。そんな紙を出さないと嫌いな人間と別れることができないなんて」
叔母様には元気よく見送られて、オブシディアさんには同情の眼差しを向けられた。
そう、人間は大変なことが多いのだ。だけど、そういうものから逃げるわけにはいかない。
役所に行って受付に離婚申請書を提出すると、職員からは「大変でしたね」と生暖かい視線と共に小声で告げられた。
この人はある程度事情を知っているようだ
これで離婚成立。
怒りも悲しみもなく、むしろ解放感があった。
ただ、お父様が泣いている。なんて綺麗な涙を流すのだろう。
何かあったらすぐに役所に相談してほしいと、職員からも優しい言葉をかけてもらい、お父様を泣き止ませながら役所を後にする。
それから寄り道をせずにすぐ店に戻ることに。
お父様は仕事があるからと仰って、私を店まで送るとすぐに帰ってしまった。
今度お礼をしなければ……。
「……あら?」
黒いコートを着た青年が店の屋根の上で膝を抱えている。
工芸品作りに飽きてしまったのかも。
声をかけようとすると、オブシディアさんは「静かに」と言うように口の前に人差し指を立てた。
それを見て咄嗟に口を閉ざした直後、店内から甲高い怒鳴り声が聞こえてきた。
フィリヌ侯爵夫妻が止めたとは思えないのだけれど。
私が思考を巡らせていると、叔母様が「何で? 自分で自分の間違いに気づけるような一家じゃないでしょ?」とお父様に尋ねた。
するとお父様は、複雑そうな笑みを浮かべた。
「先代フィリヌ侯爵が口を出したらしい。慰謝料など請求してディンデール家と争っている暇があれば、さっさと離婚をしろと息子、つまり現侯爵に命じたんだ」
「えぇぇえ? 一刻も早くリザリアを一族から追い出したいからってこと!?」
「それはそうなんだが、ミレーユくんが思っている理由とは違うよ」
憤慨する叔母様を宥めるようにお父様が仰る。
「先代殿は『こんな孫とは早く縁を切って、リザリア嬢には早く平穏な日々を取り戻してほしい』と言ったそうだ」
「ええと、お父様? フィリヌ侯爵夫人の実家は離婚に反対していて、逆に先代侯爵様は離婚に賛成しているけれど、それは私のため……ということでしょうか?」
「そういうことになるね。私も頭がごちゃごちゃしてきたよ……」
そう仰りながらお父様は、一枚の書類を取り出した。
離婚の申請書で、トール様の欄には既にサインが記入済み。
あとは私が書いて、役所に持って行くだけの状態になっているわね。
「先代殿が役所に話を通しているようでね。提出すれば即日で受理される。……後は君次第だ、リザリア」
「もちろん、この機会を逃すわけにはいきません」
先代フィリヌ侯爵のご厚意に預かろうと思う。
あと少しで『精霊の隠れ家』がオープンするというのに、こんな個人的な悩みをいつまでも抱えているわけにはいかない。
お父様から申請書を受け取って、自分のサインを記入する。
「……よし。後は私が役所に持って行くよ」
「お父様、私も共に行かせてください」
「いや、リザリアは店のことがあるだろう? こんなことで時間を使わせられないよ」
「そんなことはありません。……これは私の問題なのですから」
こんなことだからこそ、甘えては駄目だ。
「ということで、少し外しますね叔母様」
「うん。いってらっしゃい。美味しいお昼ごはん作って待ってるからね」
「オブシディアさん、叔母様と店のことお願いします」
「人間って大変だな。そんな紙を出さないと嫌いな人間と別れることができないなんて」
叔母様には元気よく見送られて、オブシディアさんには同情の眼差しを向けられた。
そう、人間は大変なことが多いのだ。だけど、そういうものから逃げるわけにはいかない。
役所に行って受付に離婚申請書を提出すると、職員からは「大変でしたね」と生暖かい視線と共に小声で告げられた。
この人はある程度事情を知っているようだ
これで離婚成立。
怒りも悲しみもなく、むしろ解放感があった。
ただ、お父様が泣いている。なんて綺麗な涙を流すのだろう。
何かあったらすぐに役所に相談してほしいと、職員からも優しい言葉をかけてもらい、お父様を泣き止ませながら役所を後にする。
それから寄り道をせずにすぐ店に戻ることに。
お父様は仕事があるからと仰って、私を店まで送るとすぐに帰ってしまった。
今度お礼をしなければ……。
「……あら?」
黒いコートを着た青年が店の屋根の上で膝を抱えている。
工芸品作りに飽きてしまったのかも。
声をかけようとすると、オブシディアさんは「静かに」と言うように口の前に人差し指を立てた。
それを見て咄嗟に口を閉ざした直後、店内から甲高い怒鳴り声が聞こえてきた。
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