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22.片付け
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トール様と話し合いを終えた翌日、『精霊の隠れ家』に向かうと店の外からでも泣き声が聞こえてきた。
この声は……叔母様?
「助けてぇぇぇぇ! ヒュンヒュン飛んでて怖いぃぃぃぃ!」
店内では大量の木箱が宙を飛び交っており、叔母様を怯えさせている。
私も一瞬、ポルターガイストでは身構えたものの、すぐにその原因を発見した。
「……オブシディアさんおはようございます」
「おはよう、リザ」
オブシディアさんが天井付近でふわふわと浮遊しながら、屈託のない表情で私に挨拶を返す。
昨日はトール様たちが帰った後に食事はどうかとお父様が声をかけていたのだけれど、どこかに消えてしまったのよね。
「……この木箱を動かしているのはオブシディアさんですよね? 叔母様が怖がっているのですけれど……」
「ミレーユが整理整頓が大変ってぼやいていたから、俺がこうやって片付けてやってんだよ」
「なるほど。ですが、その本人は何が起こっているのか、分かっていないようですよ」
「俺、ちゃんとミレーユに言ったんだけどな」
オブシディアさんは首を傾げた。
一度彼と長時間離れてしまうと、また存在を認識できなくなってしまうようだ。
とりあえずオブシディアさんには木箱を全部床に下ろしてもらう。
ゴトン、ガタンと音を立てて着地するそれらに、叔母様は「お、収まった……?」と涙目になって周囲を見回した。
「おはようございます、叔母様」
「あ、おはようリザリア……あのね大変だったのよ! 木箱が突然ふわーって浮き上がって、ビューンって飛び回って! きっとハーライトの嫌がらせよ!!」
「そうではなくて、こちらにいるオブシディアさんが片付けようとしていたみたいですよ」
いまだ空中に浮いているオブシディアさんを見上げつつ説明すると、叔母様はビクッと体を震わせた。
「な、何だ、オブシディアくんいたのね。それならそう言ってよ~……」
「いや、ずっとここにいたぞ」
不服そうにオブシディアさんが頬を膨らませる。
どんな原理かは分からないけれど、私を介せば他の人にも気づいてもらえるらしい。
本人にとっても周囲の人間にとっても大変な体質だ。
三人揃ったところで、材料の仕分けを本格的に始める。
まず精霊石は種類問わず、全部一ヵ所に纏めておく。
色も形もバラバラだけれど、属性ごとにはっきり区別することができる。
火の精霊石は触ると、人肌よりも少し高めの温度を有している。
水の精霊石は触ると、グニャリとゼリーのような触感がある。
風の精霊石は触ると、涼しい風が纏わりつくような感覚がする。
そして土の精霊石は触ると、内側から強く叩くような振動が起きる。
とまあ、このような具合だ。
……だけど叔母様に精霊石を売りつけた業者は、その判別方法を知っているのだろうか。
土の精霊石が入っているはずの木箱に、火の精霊石がいくつか混じっていた。
精霊石同士の間違いなら問題ないけれど、ただの石が混入している箱まである……。
この声は……叔母様?
「助けてぇぇぇぇ! ヒュンヒュン飛んでて怖いぃぃぃぃ!」
店内では大量の木箱が宙を飛び交っており、叔母様を怯えさせている。
私も一瞬、ポルターガイストでは身構えたものの、すぐにその原因を発見した。
「……オブシディアさんおはようございます」
「おはよう、リザ」
オブシディアさんが天井付近でふわふわと浮遊しながら、屈託のない表情で私に挨拶を返す。
昨日はトール様たちが帰った後に食事はどうかとお父様が声をかけていたのだけれど、どこかに消えてしまったのよね。
「……この木箱を動かしているのはオブシディアさんですよね? 叔母様が怖がっているのですけれど……」
「ミレーユが整理整頓が大変ってぼやいていたから、俺がこうやって片付けてやってんだよ」
「なるほど。ですが、その本人は何が起こっているのか、分かっていないようですよ」
「俺、ちゃんとミレーユに言ったんだけどな」
オブシディアさんは首を傾げた。
一度彼と長時間離れてしまうと、また存在を認識できなくなってしまうようだ。
とりあえずオブシディアさんには木箱を全部床に下ろしてもらう。
ゴトン、ガタンと音を立てて着地するそれらに、叔母様は「お、収まった……?」と涙目になって周囲を見回した。
「おはようございます、叔母様」
「あ、おはようリザリア……あのね大変だったのよ! 木箱が突然ふわーって浮き上がって、ビューンって飛び回って! きっとハーライトの嫌がらせよ!!」
「そうではなくて、こちらにいるオブシディアさんが片付けようとしていたみたいですよ」
いまだ空中に浮いているオブシディアさんを見上げつつ説明すると、叔母様はビクッと体を震わせた。
「な、何だ、オブシディアくんいたのね。それならそう言ってよ~……」
「いや、ずっとここにいたぞ」
不服そうにオブシディアさんが頬を膨らませる。
どんな原理かは分からないけれど、私を介せば他の人にも気づいてもらえるらしい。
本人にとっても周囲の人間にとっても大変な体質だ。
三人揃ったところで、材料の仕分けを本格的に始める。
まず精霊石は種類問わず、全部一ヵ所に纏めておく。
色も形もバラバラだけれど、属性ごとにはっきり区別することができる。
火の精霊石は触ると、人肌よりも少し高めの温度を有している。
水の精霊石は触ると、グニャリとゼリーのような触感がある。
風の精霊石は触ると、涼しい風が纏わりつくような感覚がする。
そして土の精霊石は触ると、内側から強く叩くような振動が起きる。
とまあ、このような具合だ。
……だけど叔母様に精霊石を売りつけた業者は、その判別方法を知っているのだろうか。
土の精霊石が入っているはずの木箱に、火の精霊石がいくつか混じっていた。
精霊石同士の間違いなら問題ないけれど、ただの石が混入している箱まである……。
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