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5.魔導工芸品
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精霊石。
この世界に漂う、魔素という魔法を使うための元素が結晶したもので、属性ごとに種類が分かれている。
現在発見されているのは火、水、風、土の四種類。
見た目は宝石のように綺麗で、色も様々。火の精霊石だからって赤色だけということでもなく、青かったり透明な色もある。
逆に水属性なのに、燃えるように真っ赤な精霊石も存在する。
精霊石はそのままだと何にも使えない、ただの綺麗な石。
だけど魔法の力を使って加工すると、その内に秘められた力を発揮することができる。
半永久的に炎が消えることのない蝋燭。
縁を擦るだけで中に水が溜まるグラス。
汚れた空気を吸い取る代わりに、新鮮な空気を出してくれるオブジェ。
庭に置いておくだけで防腐と防虫効果があって、植物を守ってくれる陶器の像。
これらを総称したものが魔導工芸品。
フィリヌ侯爵の店『フィリヌ魔導店』はその専門店で、私が勤め始めた頃はまだまだ小さな店だったけれど、五年間で急成長した。
今では王家や他国からも注文が入るくらい。
魔導工芸品を扱っている他の店に比べて、質がいいって褒められていた。
それは職人たちのおかげ。
魔法が使えない私は工芸品を作れないので、せめて他のことで店に貢献したいと思って事務に就いていた。
ディンデール家の庭園の植物が綺麗なのも、温室の中が常に綺麗な空気で満たされているのも、フィリヌ魔導店の商品のおかげ。
なのだけれど……。
「今日限りでうちの工芸品全部捨てちゃいましょう!」
「落ち着いてください、お母様」
お母様がそんなことを言い出したので、急いで止めた。
トール様の浮気で一番怒っているのはお母様。
本当だったら、今すぐにでもフィリヌ家に殴り込みに行きたいとも仰っている。
「私の娘が酷い目に遭ったということもあるけれど、息子の不貞を肯定するなんて親として最低よ。顔を思いっきり平手打ちしたいくらい」
「ありがとうございます、お母様。ですが私としては、もうあの方々と関わることがなければ、それでいいと思っていますので……」
「もう……リザリアは甘すぎるわ」
お母様は深く溜め息をついて、温かな紅茶に口を付けた。
お母様とこうして温室で、二人きりのお茶会をするのはこれで二回目。
最初の時は緊張してお菓子の味が全然分からず、紅茶を一気に飲んで舌を火傷して、お母様を困らせてしまっていた。
「でもリザリアがうちに帰ってきてくれて嬉しいわ! 私とお出かけたくさんできるし、一緒にお菓子作りも……」
「お、お母様、そのことですが」
何だか夢を壊してしまうようだけれど、これははっきり告げた方がいい。
「私、トール様と離婚した際はすぐにどこかで働くことになっていたのです」
この世界に漂う、魔素という魔法を使うための元素が結晶したもので、属性ごとに種類が分かれている。
現在発見されているのは火、水、風、土の四種類。
見た目は宝石のように綺麗で、色も様々。火の精霊石だからって赤色だけということでもなく、青かったり透明な色もある。
逆に水属性なのに、燃えるように真っ赤な精霊石も存在する。
精霊石はそのままだと何にも使えない、ただの綺麗な石。
だけど魔法の力を使って加工すると、その内に秘められた力を発揮することができる。
半永久的に炎が消えることのない蝋燭。
縁を擦るだけで中に水が溜まるグラス。
汚れた空気を吸い取る代わりに、新鮮な空気を出してくれるオブジェ。
庭に置いておくだけで防腐と防虫効果があって、植物を守ってくれる陶器の像。
これらを総称したものが魔導工芸品。
フィリヌ侯爵の店『フィリヌ魔導店』はその専門店で、私が勤め始めた頃はまだまだ小さな店だったけれど、五年間で急成長した。
今では王家や他国からも注文が入るくらい。
魔導工芸品を扱っている他の店に比べて、質がいいって褒められていた。
それは職人たちのおかげ。
魔法が使えない私は工芸品を作れないので、せめて他のことで店に貢献したいと思って事務に就いていた。
ディンデール家の庭園の植物が綺麗なのも、温室の中が常に綺麗な空気で満たされているのも、フィリヌ魔導店の商品のおかげ。
なのだけれど……。
「今日限りでうちの工芸品全部捨てちゃいましょう!」
「落ち着いてください、お母様」
お母様がそんなことを言い出したので、急いで止めた。
トール様の浮気で一番怒っているのはお母様。
本当だったら、今すぐにでもフィリヌ家に殴り込みに行きたいとも仰っている。
「私の娘が酷い目に遭ったということもあるけれど、息子の不貞を肯定するなんて親として最低よ。顔を思いっきり平手打ちしたいくらい」
「ありがとうございます、お母様。ですが私としては、もうあの方々と関わることがなければ、それでいいと思っていますので……」
「もう……リザリアは甘すぎるわ」
お母様は深く溜め息をついて、温かな紅茶に口を付けた。
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最初の時は緊張してお菓子の味が全然分からず、紅茶を一気に飲んで舌を火傷して、お母様を困らせてしまっていた。
「でもリザリアがうちに帰ってきてくれて嬉しいわ! 私とお出かけたくさんできるし、一緒にお菓子作りも……」
「お、お母様、そのことですが」
何だか夢を壊してしまうようだけれど、これははっきり告げた方がいい。
「私、トール様と離婚した際はすぐにどこかで働くことになっていたのです」
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