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11.セレスタン②
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アンリエッタが買い物に出て行ったきり、帰ってきていない。母さんにそう告げられ、俺の頭の中は真っ白になった。……が、すぐに我に返り、母さんの肩を掴む。
「それはいつの話だ!?」
「一週間前よ……すぐにあなたに教えようか迷ったのだけれど、神官としての役目を果たしているあなたにこんなこと伝えられないと思って……」
確かに儀式の合間にそんなことを教えられていたら、俺は職務を放棄していただろう。
だが、アンリエッタは何故行方を晦ませた? 何故俺に何も言わずに屋敷を出て行った?
「ねぇ、セレスタン。あまりこういうことは考えたくないけれど……もしかしたら誘拐されたのかも」
「誘拐!?」
「アンリエッタはとっても可愛くて優しい子よ。だから無理矢理奪い取ろうって考える人間はいくらでもいると思うの」
「もしそうだったら、すぐに探しに行かなければ……!」
怒りと焦りに突き動かされ、屋敷から出ようとすると母さんに止められた。
「お、落ち着きなさい、セレスタン! 今は夜中よ。それに捜索隊にはとっくに要請しているわ!」
「そんな連中だけに任せられるか! 俺がアンリエッタを探し出す!」
「……お前の気持ちはよく分かる。だがせめて明日にするんだ。今は法力を消耗して疲れた体を休ませることに専念しろ」
騒ぎを聞きつけてやってきた父さんにそう諭され、俺は唇を噛み締めた。
今こうしている間もアンリエッタは苦しんでいるだろうに、俺だけが休息を取るなど……。ただこの状態で街を駆け回れる自信はない。
悔しいが、まずは体を休ませなければ。いざという時に倒れたら、アンリエッタを救えなくなる。
しかし瞼を閉じても、アンリエッタの泣き腫らした顔ばかりを思い浮かべてしまい全く眠れない。そこで母さんが常時している睡眠薬を数粒分けてもらった。
すると抗いがたい睡魔に襲われ、俺はようやく眠ることができた。
それから俺はアンリエッタの行方を探すため、毎日街を駆け回った。だが有力な手がかりを見つけることはできず、肩を落として屋敷に帰るばかりだ。
可能性は低いが、誘拐ではなくアンリエッタが自発的に姿を消したのだとしたら、彼女が行く場所は限られている。
その内の一つである花の神の神殿にも行ってみたが、来ていないの一点張り。
アンリエッタの両親がなくなっているのが悔やまれる。
もし二人とも存命だったらアンリエッタは真っ先に実家に駆け込んでいて、見つけるのも容易だったろう。両親がいなくなったことで、俺の両親との絆も深まると思っていたのだが。
「あとは……」
心当たりが一つある。俺は縋るような気持ちで『あの店』に向かった。
「アンリエッタ? 知らないよ。二週間くらい前に会ってからそれきり」
エレナは突き放すような物言いでそう答えた。
その答えに俺は唇を噛み締める。アンリエッタが以前働いていた店。彼女の親友であるエレナもいる。だからここを頼るかもしれないと期待していたのだが、無駄足に終わったようだ。
アンリエッタ……本当にどこへ行ってしまったんだ。ふらつきながら店を出る。
太陽の眩しさが目に沁みる。忌々しい光が逃れるように俯いた時だった。
「……ん?」
石畳の溝に何か光るものが挟まっている。
『それ』の正体を確かめようと目を凝らし、息を呑んだ。
どうして俺がアンリエッタに贈ったネックレスがこんなところに落ちているんだ!?
俺は激怒しながら再び店の戸を開いた。
「それはいつの話だ!?」
「一週間前よ……すぐにあなたに教えようか迷ったのだけれど、神官としての役目を果たしているあなたにこんなこと伝えられないと思って……」
確かに儀式の合間にそんなことを教えられていたら、俺は職務を放棄していただろう。
だが、アンリエッタは何故行方を晦ませた? 何故俺に何も言わずに屋敷を出て行った?
「ねぇ、セレスタン。あまりこういうことは考えたくないけれど……もしかしたら誘拐されたのかも」
「誘拐!?」
「アンリエッタはとっても可愛くて優しい子よ。だから無理矢理奪い取ろうって考える人間はいくらでもいると思うの」
「もしそうだったら、すぐに探しに行かなければ……!」
怒りと焦りに突き動かされ、屋敷から出ようとすると母さんに止められた。
「お、落ち着きなさい、セレスタン! 今は夜中よ。それに捜索隊にはとっくに要請しているわ!」
「そんな連中だけに任せられるか! 俺がアンリエッタを探し出す!」
「……お前の気持ちはよく分かる。だがせめて明日にするんだ。今は法力を消耗して疲れた体を休ませることに専念しろ」
騒ぎを聞きつけてやってきた父さんにそう諭され、俺は唇を噛み締めた。
今こうしている間もアンリエッタは苦しんでいるだろうに、俺だけが休息を取るなど……。ただこの状態で街を駆け回れる自信はない。
悔しいが、まずは体を休ませなければ。いざという時に倒れたら、アンリエッタを救えなくなる。
しかし瞼を閉じても、アンリエッタの泣き腫らした顔ばかりを思い浮かべてしまい全く眠れない。そこで母さんが常時している睡眠薬を数粒分けてもらった。
すると抗いがたい睡魔に襲われ、俺はようやく眠ることができた。
それから俺はアンリエッタの行方を探すため、毎日街を駆け回った。だが有力な手がかりを見つけることはできず、肩を落として屋敷に帰るばかりだ。
可能性は低いが、誘拐ではなくアンリエッタが自発的に姿を消したのだとしたら、彼女が行く場所は限られている。
その内の一つである花の神の神殿にも行ってみたが、来ていないの一点張り。
アンリエッタの両親がなくなっているのが悔やまれる。
もし二人とも存命だったらアンリエッタは真っ先に実家に駆け込んでいて、見つけるのも容易だったろう。両親がいなくなったことで、俺の両親との絆も深まると思っていたのだが。
「あとは……」
心当たりが一つある。俺は縋るような気持ちで『あの店』に向かった。
「アンリエッタ? 知らないよ。二週間くらい前に会ってからそれきり」
エレナは突き放すような物言いでそう答えた。
その答えに俺は唇を噛み締める。アンリエッタが以前働いていた店。彼女の親友であるエレナもいる。だからここを頼るかもしれないと期待していたのだが、無駄足に終わったようだ。
アンリエッタ……本当にどこへ行ってしまったんだ。ふらつきながら店を出る。
太陽の眩しさが目に沁みる。忌々しい光が逃れるように俯いた時だった。
「……ん?」
石畳の溝に何か光るものが挟まっている。
『それ』の正体を確かめようと目を凝らし、息を呑んだ。
どうして俺がアンリエッタに贈ったネックレスがこんなところに落ちているんだ!?
俺は激怒しながら再び店の戸を開いた。
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