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94.恩赦
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ナヴィア修道院は全焼してしまい、再建にはかなりの時間を要する。
いつまでもグライン公爵のご厄介になるわけにもいかないし、暫くの間は他の修道院で過ごすことになるのかなと思いきや。
公爵からまさかの通告が。
「君たちには特例で恩赦が与えられる。科せられていた刑が免除され、外の世界に戻ることができるぞ」
えっ、全員シャバの空気が吸えるようになるの?
「『彼女たちは更生し、信心深い清らかな人間になった。社会復帰しても問題はない』とレイスが国王陛下に奏上してな。陛下もそれを快く聞き入れたというわけだ」
レイスも王様も随分と太っ腹なことを……
突然の恩赦宣言に、修道女の反応は様々なものだった。
大喜びする子、呆然とする子、冗談かと疑う子……
「やったー! これでまたドレスをいっぱい作れるようになる~!」
クラリスは満面の笑みでぴょんぴょん飛び跳ねていた。
「そうか……外に出られるのか。こんな私でも……」
メロディはまだ実感が湧かないようで、戸惑っているご様子。けれどその目尻には光るものが浮かんでいた。
「公爵様、このまま修道女で居続けることも可能でしょうか?」
グライン公爵にそう尋ねたのはアントワネットだった。
「ああ。それは構わないが……いいのか?」
「はい。私には修道院での暮らしが性に合っているようですので」
どうやらアントワネットと同じように、修道女を続けていきたい子も一定数いるらしい。
まあ結構楽しかったからね。
問題は私だ。
リーゼとブランシェというヤバい女の二大巨頭がいなくなった今、この国から逃げ出す必要も完全になくなった。
このまま修道女ルートでもよし、新しい人生をスタートさせるのでもよし。
……レイスにでも相談してみるか。
「……あれ?」
屋敷中、どこを捜してもレイスが見当たらない。
どこかに行ってるのか?
廊下のど真ん中で立ち止まって首を傾げていると、「シスターリグレット」と声をかけられた。
テオドールだ。やけに固い表情をしている。
「君には話しておきたいことがある。レイスについてだ」
「レイス様に何かあったんですか?」
「……その反応を見るに、やはり別れも告げずに出て行ったのか」
別れ? 出て行った?
不穏なワードが二つも飛び出したんだが……
「レイスはもうグライン家の人間ではない。あれとは二度と会うこともないだろう」
いつまでもグライン公爵のご厄介になるわけにもいかないし、暫くの間は他の修道院で過ごすことになるのかなと思いきや。
公爵からまさかの通告が。
「君たちには特例で恩赦が与えられる。科せられていた刑が免除され、外の世界に戻ることができるぞ」
えっ、全員シャバの空気が吸えるようになるの?
「『彼女たちは更生し、信心深い清らかな人間になった。社会復帰しても問題はない』とレイスが国王陛下に奏上してな。陛下もそれを快く聞き入れたというわけだ」
レイスも王様も随分と太っ腹なことを……
突然の恩赦宣言に、修道女の反応は様々なものだった。
大喜びする子、呆然とする子、冗談かと疑う子……
「やったー! これでまたドレスをいっぱい作れるようになる~!」
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「そうか……外に出られるのか。こんな私でも……」
メロディはまだ実感が湧かないようで、戸惑っているご様子。けれどその目尻には光るものが浮かんでいた。
「公爵様、このまま修道女で居続けることも可能でしょうか?」
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「ああ。それは構わないが……いいのか?」
「はい。私には修道院での暮らしが性に合っているようですので」
どうやらアントワネットと同じように、修道女を続けていきたい子も一定数いるらしい。
まあ結構楽しかったからね。
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……レイスにでも相談してみるか。
「……あれ?」
屋敷中、どこを捜してもレイスが見当たらない。
どこかに行ってるのか?
廊下のど真ん中で立ち止まって首を傾げていると、「シスターリグレット」と声をかけられた。
テオドールだ。やけに固い表情をしている。
「君には話しておきたいことがある。レイスについてだ」
「レイス様に何かあったんですか?」
「……その反応を見るに、やはり別れも告げずに出て行ったのか」
別れ? 出て行った?
不穏なワードが二つも飛び出したんだが……
「レイスはもうグライン家の人間ではない。あれとは二度と会うこともないだろう」
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