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81.久しぶりの

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 このままイレネーが帰るまで引き籠もる天岩戸作戦を試みた私だったけれど、あんまりにもドアを連打されて、「頼むリグレット! ここを開けてくれ!」とやかましいし、アントワネットたちの手を焼かせたくなかったので結局部屋から出ることにした。
 するとイレネーに滅茶苦茶いい笑顔を披露されたけれど、私は表情筋一つ動かすことなく「私に何かご用でしたら面会室で話を聞きます」と冷たい声で言った。別にお前に慈悲をくれてやったわけではないんじゃ。

 レイスが来た時はこんなに腹立たしい気分にならないのにな。そう思いながら面会室に入る。その直前にアントワネットが「私たちも立ち会います」と言ってくれたけれど、丁重にお断りさせてもらった。こんな奴のためにみんなの時間を使わせたくなかったので。

「せ、聖鐘祭以来だな、リグレット」

 お互い椅子に座ると、イレネーからの第一声はそれだった。

「ええ。そうですね。ブランシェ様とは仲良くされていらっしゃいますか?」
「それは……嫌味のつもりか?」

 ご名答。当てたんだからハワイ旅行にご招待してやろうか。
 ブランシェが自作自演で私を陥れたことは、新聞でも取り上げられていた。で、そのついでにイレネーもしこたま叩かれている。
 ブランシェと婚約したいがために、奴と協力して私に濡れ衣を着せたとか。それでその計画が公になったせいで両家は大変なことに。現在は仲違いして顔を合わせることもなくなったと、面白おかしく綴られていた。
 貴重な光属性魔法の使い手は逮捕されるし、美男美女カップルは破局寸前だしスキャンダルだらけだな、この国……。東スボも、週刊プランタンオビュ(週一で発売されている雑誌。プランタン=春、オビュ=砲弾)もネタに困らなさそうだ。

「ブランシェとの婚約は解消するつもりだ。あの女に騙されていたと気づくことができたからな」
「騙された? 随分と被害者ぶった言い方をなさいますね」
「実際そうじゃないか。俺たちはブランシェの罠にはめられたんだ」
「ええ。確かに私はあなたの罠にはまってしまいました。ですけれど、恨んではいませんよ。イレネー様との縁を切ることができましたし」

 私がはっきりとした口調で告げると、イレネーはぐっと息を詰まらせた。被害者ポジションにしがみついてはいるものの、色々とやらかした自覚はあるようだ。
 これで誠心誠意をもってリグレットに謝ったのなら、もう少し対応を柔らかくしてやるんだけどな。そう思っていると、

「……すまなかった、リグレット。俺は君を見捨ててブランシェを選んだ。謝っても謝り足りない」

 何だこいつ、読心術でも持っているのか……。
 急にしおらしくなったイレネーに動揺していると、次の瞬間奴の口から爆弾発言が飛び出した。

「その罪を償うためにも、俺はナヴィア修道院の監督役を務めようと考えているんだ!」

 寝言は寝てから言え!!


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